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上海黄金交易所(SGE)の新たな値決めについて

新たな上海黄金交易所(SGE)のオークション方式は、ロンドンの指標価格の方式を基本としている。

中国の上海黄金交易所(SGE)は、先週新たな金の指標価格の発表を始めた。これは、世界一の金産出国で、なおかつ輸入国でもある中国が、市場価格を価格を見極めるためことが目的だ。これは、ロンドンで発表されている世界の金指標のLBMA金価格を補完するものか、競合するものなのか、それとも取り変わるものなのかを、ローンチした日に、市場関係者、トレーダー、そしてアナリストがコメントをしている。

この新たな上海黄金交易所(SGE)の金の指標は、需要と供給を集中させた、毎営業日2回のオークションで、売買が最も成立する一つの価格を見つけるものである。

「tâtonnement(手探り)」、もしくは「Walrasianオークション」と呼ばれるその方式は、100年を超える歴史を持つ、ロンドンの金・銀指標と同様の価格決定の方法。かつては「値決め」と呼ばれていた、船が海に出る中で方角を決めるように、地金のポジションの中で価格を見つける方法だ。

「SHAU」というコードで表示され、上海の新たな「指標価格は、需要と供給を完全に映すものだ。」とSGEは、30ページに及ぶホワイトペーパで「(この価格は)中国の金市場を表している。」とも述べている。

「上海の金の値決めとロンドンの金の値決め(LBMA金価格)は、互いを補完するものだ。」と、人民日報は、「中国が世界の金価格への影響力を高める」という見出しで伝えている。

「(中国)市場は120億人と、無視できない規模である。」と、新たな中国の値決めメンバーで、スイスを拠点とする精錬会社MKSの代表Marwan Shakarchi氏は、先週火曜日に行われたトムソン・ロイターの金のフォーラムで述べている。

そして、「将来は中国の価格がロンドン価格のプレミアムを持つかなどを述べることはなくなるだろう。」と続けている。

国際価格は、通常世界の金取引の中心のロンドン受渡しでは価格が多少安く設定されている。それは、ロンドンが、中国やインドと比べ、長い歴史を持ち、所有権が確率していること、そして時間帯も世界の中心であり、地金專門保管場所が設置されて、法律上自由な取引が許されている環境などであることからだ。

この価格の差が、ロンドンで購入して、ムンバイや上海で売却するという、世界でも主な消費国への金の流れを作る。

しかし、北京はデリ同様に、金の輸出を禁止している。そのため、ディーラーは、これらのアジアの重要な市場で需要に対し供給過多であった場合、禁止されていない精錬過程の原石を輸出するといったことをしない限り、ロンドンとのプレミアムを利用したり、取引によってこの価格差を消すことができない。

そのため、(共産党が率いる中国の政治局が金を「戦略的」金属と見なし)輸出禁止が続く限りは、世界の主要金融機関は、上海の新たな金の値決めは、中国国内の市場の備蓄された金の売買に利用されるのみで、他の国の市場へ売却したり、世界市場の取引ポジションのバランスを取るためには利用できないだろう。

中国の金の値決めは、「2014年に上海黄金交易所(SGE)のInternational Boardをローンチして以来の、国際化への更なる一歩となるイベントだ。」と先週水曜日に、中国の国営通信社の新華社が伝えている。

上海黄金交易所のInternational Board(SGEI)での取引は、国内と国外のディーラーが、上海自由貿易区で、人民元建てのオフショア口座で、金のコントラクトを売買するために設置され、2014年の9月のローンチ以降は取引量が一時急増し、2015年3月には国内取引の金のコントラクトAu(T+D)を超えていた。

しかし、International Boardの取引量は下落し、7月から9月の間に少なくとも4回は全く取引が行われず、2016年は、昨年春のピークの5%程へと落ち着いている。

それに対し、国内の金コントラクトAu(T+D)は、取引量において新記録を更新し続けている。

ロンドンにおける金の指標である、新たなLBMA金価格のオークション時の平均的な取引量は、ロンドン金値決めの時期から、過去5ヶ月で倍増している。そして、このオークションに参加するメンバーは、かつての値決めのメンバーが5社であったのに対し、既に世界で最大規模の銀行となった中国銀行や中国工商銀行(ICBC)を含む13社となっている。

それでは、ここで新たな上海の値決めの仕組みを説明してみよう。

まず、ロンドンのLBMA金価格のように、その時点での取引価格を反映した価格の提案で始められる。

ロンドンにおいては、この開始価格はChairpersonと呼ばれる人によって提案されるが、上海の値決め価格(SHAU)は、その時点までの5分間に取引された平均価格が提案価格とされる。

マーケットメーカーは、それぞれその価格でそれぞれの顧客から売買注文を取り、その需給のバランスを報告する。そして、上海黄金交易所(SGE)は全てのメンバーのポジションをまとめて、売買注文にバランスが取れるまで、必要に応じて価格を上下させて、購入サイドと売却サイドのバランスを取れるように新たな価格を提案する。

それぞれのオークションの回は、ロンドンと上海共に30秒間で行われ、完璧に合致するために必要とする時間を短縮させるために、多少のインバランス(完璧な合致でない)ことは許されている。それは、ロンドンにおいては1万オンス(約311キロ)、そして、上海においては400キロ。また、ロンドン同様に、もし更なる買い注文や売り注文が必要な場合は、マーケットメーカー間で均一に分担される。上海においては、マーケットメーカーは中国銀行と中国工商銀行を含む12社。

ロンドンと上海は共に、オークションから2営業日に現物のデリバリーが行わなければならない。しかし、LBMA金価格はLBMAで認定されている99.5%以上の純度の400トロイオンスの金地金を決済するが、上海黄金交易所においては、昨年7月にLBMAにコンサルテーションを受けた標準の1キロバー(99.99%の純度)を決済する。

ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュ、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。

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