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ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の年次会議のまとめ

フロリダ州マイアミ・ハリウッドで今週開催されたロンドン貴金属協会(LBMA)2024貴金属年次会議に参加したブリオンボールトのリサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのレポートを基に、この会議で話し合われた内容、そして価格予想についてまとめてみましょう。
 
この年次会議は毎年10月に3日間行われ、貴金属協会関係者が一堂に集まり、ネットワーキングで親交やビジネス機会を見つけると共に、貴金属業界の様々な分野についてその専門家を招きパネルディスカッションが行われます。
 
今年のテーマとしては、「激動の時代の貴金属」、「プラチナグループの今後」「「世界の鉱山業界の問題と今後の可能性」、中央銀行高官による「安定性、リターン、流動性 - 中央銀行にとって金が依然として重要な理由」、「鉱山業界の問題と可能性」、「銀の今後」、「貴金属へのアジア効果」、「サステナビリティと責任ある調達のフォーラム」等となっていました。
 
そして、この年次会議の最終日には、1年後の年次会議時のそれぞれの貴金属価格の参加者の予想平均が発表されていますので、今年の予想と昨年の結果について下記にまとめてみましょう。
 
来年10月の年次会議時の金の価格は今年最終日から11%上昇すると予想されていましたが、最も市場関係者が強気であったのは銀価格で44%上昇が予想されていました。
 
貴金属

2024年予想価格

(ドル)

2024年年次会議時価格(ドル)

前年予想との差(%)

今年の2025年予想価格

(ドル)

上昇率(%)
1989.30 2654.90 33% 2941.10 11%
26.80 31.25 17% 45.10 44%
プラチナ 1151.90 982.00 -15% 1138.00 16%
パラジウム 1219.10 1039.00 -15% 1065.00 3%
 
エィドリアンが参加した年次会議で銀について議論するテーブルにおいては、銀が未だ金と比べて、 金銀比価で見られているように割安であることが、銀の強気の背景とのこと。
 
銀は1980年1月にトロイオンスあたり50ドルと史上最高値をつけており、これをインフレを考慮し現在の価格にすると200ドル相当であるものの、2011年4月に50ドルを割る水準に上昇したものの、現在は31ドルを超える水準に留まっています。
 
それに対し金価格は既にドル建てで今年は30%弱の上昇率となっており、これは、2010年以来の年間の上昇率では最も大きいものであり、金価格が変動制となった1968年以降では7番目と強い動きとなっています。
 
ドル建て金価格の年間のパフォーマンスと年末ドル建て金価格 出典元 ブリオンボールト
 
そこで、2025年の年次会議時の上げ幅は今週の会議最終日から11%と比較的現実的な水準となっています。
 
鉱山業界のワールド・ゴールド・カウンシルのジョン・リード氏は、LBMAの年次会議の投資セッションの議長を務め、「金価格は今年35回の金価格の史上最高値を更新した」と述べた上で、「私のキャリアの中で、2700ドル近くを見ることになるとは思ってもみなかった。」と述べていたとのこと。
 
あるパネルメンバーは、今年の急騰と高水準によって、金が「小売市場の一部を失っていることを意味している。しかし、金はボラティリティが高くなったとはいえ、バイ・アンド・ホールドの投資であり、価格の分布はより広くなっている中で多くの人はまだ投資不足です。」とコメントしていました。
 
人々は金価格の上昇を説明するのに苦労しています。「しかし、金はポートフォリオ資産として再定義されつつあり、金は非常に効果的な分散投資です。中央銀行はこのことに気づき、この高値で金を積み増しています。欧米のウェルス・マネージャーも、再びゴールドを使い始めています。」と述べていたとのこと。
 
今回はモンゴリアとチェコ共和国とメキシコの中央銀行の政策関係者がパネリストとして招待され、外貨準備の総額の価値と、それらの準備のうち金準備の割合の両方が増加し続けると予想されることに同意していました。
 
その理由として挙げたのは、第一にポートフォリオに有利であること、そして第二に、ニュースで見られるように世界の政治は混乱に陥っていることでした。11月の米国の選挙は、少なくとも世界の支配的な大国の方向性(今日のLBMA年次会議の最初のセッションの地政学的議論によれば、トランプ氏が勝利した場合、すべてが悪い方向に向かうとは限らないとのこと)が明確になるかもしれませんが、この混乱を解決することはできないとしていました。
 
中央銀行の金需要は、価格上昇とLBMA会員が自分たちのビジネスで顧客需要として見ているものとのギャップを埋め続けていることは確かだとエィドリアンは述べています。
 
 
それに対し、中央銀行の需要が無く、工業用途が6割を超えるプラチナや8割を超えるパラジウムにおいては、前年度の予想と比較してそれぞれ15%を下回る価格で今年は年次会議を迎え、来年度の上げ幅はそれぞれ16%と3%と今年の下落分を考慮すると上げ幅が抑えられています。
 
結論として、エィドリアンのコメントを紹介しましょう。
 
金は緊急の為替介入に備えて流動性ポートフォリオに保有されているのではありません。その代わり、ポートフォリオを安定させるために長期的に保有しているのです。なぜなら、中央銀行内のリサーチ部門による度重なる分析で、金がいかに幅広い資産のリスクリワードプロファイルを高めるのに役立っているかを示しているからです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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