金市場ニュース

バークレイズ銀行が金フィキシングの価格操作で45億円の制裁金を科される

英国規制当局は、金のフィキシングを支持したものの、バークレイズ銀行が顧客との利益相反の管理を怠ったとして制裁金を科しました。

金のロンドンフィキシング(値決め)は、少なくとも一度は、顧客の不利益よりも自分個人の業績を高めることを求めたトレーダーによって不正操作されたことが明らかとなりました。ここで、今回の経緯をブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが解説しています。

このニュースは、日経新聞の社説でも今週扱われていましたので、皆さんご存知のことでしょう。私もニュースが報道された際に即座に記事を書くべきでしたが、この日はブルームバーグの貴金属フォーラムにパネリストとして参加していたために同日夜まで記事を発信することができませんでした。

それでは、ここで明らかとなったことは何でしょうか。英国の規制当局である金融行為監督機構(FCA)が金曜日に発表した声明では、バークレイズ銀行が内部管理を怠ったとして制裁金を科したとしています。その対象となった行為とは、2012年6月28日に、バークレイズ銀行のシニアトレーダーが、この世界の指標である金のフィキシング価格を下げるために、偽の注文を入れたことであり、これを許した管理体制が問題となったのです。

しかも、ここで驚くことは、この不正行為は、バークレイズ銀行が、トレーダーによるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の操作で2億9000万ポンド(現在の為替レートで約497億円)を科された翌日に行われたのです。

これは、トレーダーによる恥じるべき行為といえるでしょう。

この偽りの注文が出された日も、金のフィキシングは、市場の買い注文と売り注文を反映したものであり、金融行為監督機構(FCA)の詳細レポートも認めているように、正しく機能していたのでした。しかし、ここでの過ちは、バークレイズ銀行の内部管理の不備から、顧客の利益に反して取引をしたシニアトレーダーのダニエル・ジェームズ・プランケット氏が偽の注文を出すことを許したことです。この不正行為で、プランケット氏は、金のフィキシングがある一定の価格(トロイオンスあたり1558.96ドル)を超えることで発生する、顧客への390万ドル(約4億円)の支払いを免れ、プランケット氏自身のトレーディング勘定で175万ドル(約3億円)の利益を得たのです。

しかし、この価格の不自然な動きに疑いを持った顧客が、調査を求め、即座に調査が行われました。プランケット氏は調査当初から上司や規制当局へも偽証を重ねていましたが、結局プランケット氏はこの取引の利益を受領すること無く職を失いました。そして、顧客は正当な利益を受領したのでした。そして最終的には、プランケット氏は、規制当局によって95,600ポンド(約1600万円)の制裁金を科され、英国の金融業界から追放されました。

ここで明らかとなったことはどのようなことでしょうか。犯罪を犯す人は、どのようなシステムや手続きにおいてもそれを悪用しようとします。そのために、銀行の管理者は、このような行為ができないように、内部管理を整えるべきであるのです。そして、規制当局は、この内部管理が確実に行われているかを検査しなければなりません。今回のケースは、バークレイズ銀行を含む全ての関係者にとっては、学ばなければならないレッスンでした。

「バークレイズ銀行は、十分なリスク管理のシステムで、業務を責任をもって効果的に管理することに注意を怠らないという、(英国の規制当局による)原則3に違反しました。」

「(この銀行は)また、自社と顧客の利益相反を十分に管理する必要があるという原則8にも違反たのです。」

しかし、英金融行為監督機構(FCA)は、この声明の中で、金のフィキシングの仕組みが問題であるとは述べていません。個人の意図的な不正行為や会社の管理体制の不備は、フィキシングの仕組の価値と正当性を失わせるものではありません。金のフィキシングは100年以上継続しており、英金融行為監督機構(FCA)の報告書全文は、バークレイズ銀行は、プランケット氏のようなケースが再び起こらないように、その内部管理を整えたと明記しています。

今回のニュースは、スポット価格と平行して取り決められる、金フィキシング価格での市場の高い流動性の恩恵を取り除くものでもありません。しかし、私同様に参加していた金曜日のブルームバーグ主催の貴金属フォーラムのパネリストやスピーカは、フィキシングに何らかの変化が起こることを予測していました。それは、もし代替案が見つからなければ、8月14日の銀のフィキシングの終焉で始まります。

その場合、世界の市場で既に締結されている(8月14日以降も続いている)長期に渡る銀取引契約の「不可抗力の条項」が適用されることになるリスクを持ち合わせています。不正行為が行われた2012年6月28日にも正しく機能していた、金のフィキシングの仕組みは、多くの商業上、工業上、投資上の取引で利用されています。今回の貴金属フォーラムで会った業界の友人達は、もし、今後11周間で何の代替案も決定されなければ、市場は混乱することになるだろうと話していました。

この一人のトレーダーによる不正行為によって、フィキシングの仕組みが公正なものではないという誤った認識を人々に与えてしまったのだとしたら、本当に残念極まりないことです。そのため、英金融行為監督機構の金のフィキシングに関わるコメントをここで引用します。

「金のフィキシングは、単一の決定された価格で、金を売買できる機会を市場のユーザーに与える重要な価格決定メカニズムである。」

このコメントからも、英国の規制当局は、フィキシングを支持していると言えるでしょう。そのため、市場関係者は、この価格決定メカニズムをどのように運営するかを多くの人々の懸念に答える形で見出していかなければなりません。そして、銀行は顧客との利益相反を内部で十分に管理し、トレーダーが同様な行為を行わないようにしなければなりません。これは、全ての金融取引において行われなければならないことです。金と金のフィキシングは、バークレイズ銀行の制裁金支払いの原因ではありません。そして、もちろん、プランケット氏が英国金融業界から追放された原因ではないのです。

 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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