ニュースレター(9月9日)1330.85ドル 弱い米経済指標で上昇後、ドルが強含み下げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1330.85と前週同価格から0.5%上昇しています。
週明け月曜日は、米国がレイバー・デーの祝日である中、狭いレンジでの取引となりました。
火曜日金相場は、FRBによる9月の利上げ観測が後退する中、ドルが弱含み3週間ぶりの高水準へと上昇することとなりました。これは、同日発表のISM非製造業景況指数が、予想55.0と前回55.5を下回り51.4となり、労働市場情勢指数も -0.7と前回修正値1.0と予想0.0も下回ったことからでした。
これにより、FEDWatchの9月利上げ予想は前日の21%から18%へと下げることとなりました。
水曜日金相場は、米地区連銀経済報告(ベージュブック)の発表を控え、緩やかに前日の上げを多少ながら失うこととなりました。ベージュブックでは、労働市場は力強いとしながらも、インフレ率の低さに注目するものでもあり、大きな影響を市場には与えませんでした。
木曜日発表の欧州中央銀行の政策金利発表では、主要政策金利を0.00%に据え置き、中銀預金金利もマイナス0.40%に据え置き、資産買い入れプログラムも月額800億ユーロで維持しました。これらはほぼ市場予想と変わらなかったのですが、資産買い入れプログラムは、延長されることが予想されていたことから、発表後ユーロが強含み、ユーロ建て金相場は下落することとなりました。
その後、ロンドン時間午後に発表されたEIA石油在庫統計では、22.5万バレル増の予想に反し1451.3万バレル減となったことから原油が大幅に上昇し、米長期金利が上昇することでドルが上げ、金は押し下げられることとなりました。
本日金曜日は、昨日の下げ基調を受け継ぎ、緩やかに下落しています。
これは、本日マサチューセッツで講演した、従来ハト派として知られているボストン連銀総裁 ローゼングレン氏が、金融政策を引き締めることを遅らせることによる長期に渡るリスクとして、利上げのスピードを後になって早めなければならなくなる可能性に言及したことなどが要因でもある模様です。
このようなことからも、FEDWachの9月の利上げの可能性は前日18%から27%へと上昇しています。
その他の市場のニュース
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火曜日金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、14.2トン増加し、今年7月5日の増加量に次ぐ大幅なものとなったこと。これにより、残高総量は953トン。
ブリオンボールトニュース
今週はブリオンボールトが毎月まとめている金投資家インデックスが発表され、多くの主要メディアで取り上げられました。この詳細は、弊社市場分析ページの記事「BREXIT後に金投資需要が2012年の高水準へと上昇」でもご覧いただけます。
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日本語で金情報を発信するゴールドニュースサイト「[金投資家インデックス]金投資需要が4年ぶりの高水準へ」 -
英主要日刊紙タイムズ「リスクを避ける投資家が金へ向かう」 -
英主要日刊紙テレグラフ「金需要が4年ぶりの高さへ。しかし米利上げが価格下落リスクを上昇させる」 -
英主要経済紙City AM「BREXITによる将来の不透明感からも8月に金需要が4年ぶりの高さへ」
また、英主要日刊紙のオブザーバーでは、金関連ファンドが昨年来100%のリターンを得ていることを紹介した上で、「今金は買い時か売り時か?」という記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントを取り上げました。
ここで、エィドリアンは11月の米大統領選が投資家の懸念を高めており、金需要は高まっているとコメントしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では、メイ首相が公立の中学校で学力による選抜すること可能とする規則を緩和することを提案したことが広く伝えられ、議論となっています。
英国ではかつて、グラマースクールという高い学力を持つ学生に高度な教育を教えるのための学校、セカンダリーモダンという実践的な教育を教える学校、セカンダリーテクニカルスクールという科学者やエンジニアや技術者を育てる学校から形成される3分岐型の教育制度が、1940年代なかばから1960年代後半までイングランドとウェールズで行われていました。しかし、1960年台から1970年代に非選択型の総合教育に移行しこのシステムが廃止され、多くのグラマースクールが私立の学校へと移行、もしくは総合教育を形成する他の学校と合併したのでした。
先の3分岐型の教育制度は、全ての生徒に能力や適正に応じた教育を提供することが狙いでしたが、結局は成績のみに応じたシステムで、家庭教師などを付けて選抜試験の準備ができる中流階級に利点があり、階級制度を更に進めるものという批判もあり、しかも11歳で将来のコースが決まってしまう早期選抜の弊害も見られてきたことから、この制度が廃止されることとなったとされています。
英国では、先のような教育制度とは別に、古くから上流階級や経済的に裕福な家庭を対象としたパブリックスクール(私立高)のシステムがあり、これらから多くの学生がオックスフォード大学とケンブリッジ大学という世界でもトップクラスの大学「オックスブリッジ」へと進学します。
それに対し、グラマースクールは公立であることからも、経済的に裕福でない全ての学力優秀な学生にも高度な教育を受ける機会を与え、オックスブリッジへの進学を可能としていたことも確かでした。
父親が英国国教会の牧師であるメイ首相もまた、グラマースクールに入学していましたが、その学校はメイ首相が在学中に総合学校になったとのこと。
既に労働党はもちろんのこと、保守党内からもメイ首相の提案への反対意見が出ており、その強さから新規グラマースクールの許可を20程度と地域と数を限定して実施することになるようです。
全ての学校が、学力のある学生に高度な教育を受けられる環境であるべきという反対意見の主旨は理解できますが、現実的には異なる学力の学生を同じスピードで同じクラスで教えることは不可能なものがあります。そうであれば、少なくとも学力優秀な生徒が経済負担なく学べる場所であるグラマースクールの拡張は、選択肢を増やすという意味でも、個人的には必要とも思いますが、今後の成り行きに注目したいと思います。