ニュースレター(9月12日)1231ドル 来週のFOMCとスコットランド独立の是非を問う住民投票を前にドル高が金を押し下げる
週間市場ウォッチ
先週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1231ドルと、前週同価格から2.7%下げています。
週明け月曜日は、ドル高が進む中、金価格は過去3ヶ月で最も低い水準のトロイオンスあたり1253ドルまで下げることとなりました。
ドル高の要因は、下記のようなものが上げられています。
- サンフランシスコ連銀のエコノミストによるレポートで、「市場が利上げペースの早さを過小評価している」と明記したことが明らかになり、来週行われるFOMCで利上げに関するタカ派的コメントがでるのではないかという観測が広がったため。
- 今月18日に行われるスコットランドの独立を問う住民投票を前に行われた世論調査で、独立賛成が始めて反対を上回ったため、ポンドが対ドル大きく下げたことから。
- EUがロシアへの更なる制裁を決定したことから、ユーロも対ドル下げたため。
そして、先週金曜日の非農業部門雇用者数は、予想から大きく外れたことから、季節的な一過性のものという判断となり、他の好調な米経済指標へ注目が移り、ドル高を進めた模様です。
火曜日は、前日の流れを受けてドル高が進む中、ウクライナ情勢も沈静化しつつあり、ロンドン時間終わりにトロイオンスあたり1250ドルまで下げたものの、数時間でその下げを戻すこととなりました。
水曜日もまた、ドル高が進む中、金価格はその低値を過去3ヶ月で再低値に近いトロイオンスあたり1245ドルまで切り下げることとなりました。なお、主要通貨に対するドルインデックスは84を越え、昨年7月以来の高水準となりました。
木曜日は、金価格が今年6月の最低値のトロイオンスあたり1241ドルを割り1238ドルと、今年1月以来の水準へと下げることとなりました。これは、前日のようにドル高が要因ですが、ウクライナ東部のロシア軍が7割撤退したという、ウクライナのポロシェンコ大統領の見方が伝えられことも要因の一つとなったようです。なお、銀価格は、金価格の下落と共に大きく下げ、トロイオンスあたり18.47ドルと、過去18ヶ月で最も低い水準へと下げることとなりました。
金曜日は、市場注目の米国小売売上高が発表され、0.6%と予想の0.3%を上回ったことからも、週初めのサンフランシスコ連銀のレポート以来広がっている、翌週のFOMCでのタカ派的コメントへの観測が広まり、ドル高が進み、金価格は緩やかに下げ続け、ロンドン時間16:30の段階で1229ドルと1月以来の最低値を更新しています。
また、EUは対露追加制裁を発動したことも、欧州経済への懸念からドル高を進めることともなっているようです。
他の市場のニュース
- 上海黄金交易所(SEG)が、上海の自由貿易区で金国際ボードを29日に設立することを発表したこと。ここでは、人民建て100グラム、1キロ、グッドデリバリーのコントラクトが提供されるとのこと。また、CMEが新たな金の先物コントラクトを今年末までに香港でローンチすると伝えられたこと。この詳細は、「中国が金価格への影響力を強める」をご覧ください。
- 銀ETFの残高が、今年で最も高いレベルへと増加したこと。
ブリオンボールトニュース
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
- ブリオンボールトリサーチ部門の「中国が金価格への影響力を強める」、「金銀比価(金銀レシオ)が2014年末までに下げる3つの理由」
今週の主要経済指標の結果は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国では、来週18日に控えたスコットランド独立の賛否を問う住民投票に関するニュースが日々トップニュースとして伝えられています。
まず、月曜日に、先週末7日に行われた世論調査で「賛成」が急伸し「独立反対」を始めて上回ったことから、ポンドが対主要通貨を下げ、英株価が下げるなど衝撃が広がりました。
その後、与野党が結束して英連合王国分裂を阻止すべく、火曜日に予定されていた議会での党首討論も中止され、キャメロン首相、クレッグ副首相、ミリバン労働党党首が、スコットランド入りし、独立反対運動に参加することとなりました。
また、スコットランドの独立反対運動を率いている、スコットランド出身のブラウン元首相は、スコットランドが独立が否定された場合、英政府が自治権を拡大するとしていた工程表を明らかにし、独立支持派の拡大阻止に必死となっています。
昨日は、スコットランドに本社を置く主要金融機関が軒並み、独立が支持された場合は、英国へ本社機能を移すと発表しています。これは、独立後の通貨や税制、消費者保護法がどのようになるかがはっきりしないことなどが理由とされています。
こうして、経済等への影響などを論理的に考えると独立に反対すべきでも、感情的には賛成したいという人々は多いようで、残り6日となった住民投票までに、両陣営の活発なキャンペーンが続くことになりそうです。
なお、生活の様々なことに賭けをすることが好きな英国人は、今回のスコットランド独立を問う住民投票の結果にも賭けをしているようです。そして、賭けを取りまとめるブックメーカーによると、独立反対が勝つことに賭ける額が、明らかに賛成を上回っているとのこと。そして、この「反対」という一つの結果に賭けている額は、過去の総選挙やワールドカップなどのイベントの賭けの中でも最も高いものであるとのことです。これからも、英国の人々のスコットランド独立の是非を問う住民投票への興味の高さが伺えるようです。