ニュースレター(7月8日)1354.25ドル BREXIT懸念やBOEの更なる利下げ観測が、良好な米雇用統計後も金相場を押し上げる。
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1354.25ドルと前週同価格から1%上げています。
週明け月曜日は、米国が独立記念日の祝日の中、前週金曜日の上げ基調を受け継いで、アジア時間に金・銀が上昇することとなりました。
銀はトロイオンスあたり21ドルにタッチするなど、2年ぶりの高水準と大幅なものとなり、金銀レシオは今年1月の7年ぶりの高い水準から大きく下げることとなりました。
火曜日は、英中銀の追加緩和で、ポンドが対ドルでBREXIT直後の30年来の水準を超えて大きく下げ、ポンド建て金相場が2013年4月の水準まで急騰することとなりました。この追加緩和とは、市中銀行に対し好況時に自己資本の積み増しを義務付ける「カウンターシクリカル(景気循環の影響を抑える)資本バッファー(CCB)」の比率を0.5%からゼロに引き下げたことですが、その効果として、最大1500億ポンドの追加融資が可能になると見込まれています。
水曜日金相場は、ポンドがアジア時間に対ドル$1.28へと下げ、日本では円高株安、次いで欧州も株安が進む中、ポンド建てにおいてトロイオンスあたり£1069を付けるなど、急伸することとなりました。
これは、イングランド銀行の前日の追加緩和、そして今年夏に行われるであろう金利引下げ観測、そして前日のスタンダードライフに続き、取引中止となったアビバの不動産ファンドなどから、商業用不動産価格下落への懸念などが広まっていたことが要因とされています。
こうして、市場はリスクオフ傾向が強まり、主要国債の利回りがマイナスを含め、米国10年物は1.35%と記録的な低い水準となりました。
ドル建て金相場も同日上げていましたが、本日発表のISM非製造業景況指数が予想を上回る数値であったことからも、株価が戻す中、多少下落することとなりました。
木曜日金相場は、翌日の米雇用統計を待つ中、緩やかに下げることとなりました。
同日は、雇用統計の先行指標とも見られているADP全国雇用者数が発表され、その結果は予想を上回り、新規失業保険申請件数も予想を下回るなど、良好な経済指標も金相場下げの要因であった模様です。なお、銀相場は金以上に下げ、今週の7%近い上昇分を失うこととなりました。
金曜日発表された米雇用統計は予想を大幅に上回る結果となり、金相場は大きく下げたものの、1時間ほどでその下げを取り戻すこととなりました。
米雇用統計の結果は、非農業部門雇用者数が28.7万人(予想18万人、前回3.8万人)。前回数値は過去6年間で最低となっていましたが、同日1.1万人にさらに下方修正されました。米失業率は6月に4.9%となり、予想の4.8%と前回4.7%から悪化していたことが明らかとなっています。
金相場が今回の良好な米雇用統計にもかかわらず、2014年3月以来の高い水準の週の終値となったのは、FRB等の中銀の金利引下げは今年無いという観測が広がっている中、BREXITによりイングランド銀行の来週の政策金利発表での金利引下げと8月までにマイナス金利を導入するという観測が広がっている事なども要因とされています。
その他の市場のニュース
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スイス国債が50年物を含めてマイナス利回りとなっていることをFTが伝えていたこと。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアは、先週金曜日に年初から増加を続けて先週金曜日の段階で35%増で、311トン増となっていたこと。そして、機関投資家の比率も29.5%から33.4%へと上昇していたこと。 -
中国中央銀行は金準備を先月16トン増加させ、1823トンとしたことも伝えられています。
ブリオンボールトニュース
ブルームバーグ日本が、弊社における日本の顧客の金投資の傾向とその背景について「金をスイスで保管、日本からの資産逃避じわり-英ブリオンボールト」とまとめ、私のコメントとともに金曜日に配信しています。この記事は、英文でも配信され、タイペイ・タイムズやヒューストン・クロニクルや多くのサイトで取り上げられました。
また、今週初めに銀相場が2年ぶりの高水準へと急伸したことを伝える、米主要経済サイトMarketWatchの記事で、弊社リサーチ主任のエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
ここで、エィドリアンは「カーニー英中銀総裁の追加緩和示唆によって、市場が中銀によるインフレの可能性を嗅ぎ取り、銀は爆発的に上昇した。金はインフレヘッジとしてしばしば使われている。」とコメントしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
英国では、国民投票後辞任したキャメロン首相に次いで、英国のEU離脱を率いることとなる次期英国首相となる保守党党首選が始まり、トップニュースとして伝えられていました。
この保守党党首選は、今週は火曜日と木曜日に保守党議員による投票が行われ、候補者を2人に絞り込みました。そしてこの2人の候補者の中から、9月9日の全国の保守党員による決選投票で党首が選出されます。
まず火曜日には、離脱派のリアム・フォックス元国防相が最下位で振り落とされ、残留派のスティーブン・クラブ雇用・年金相は4位となったことから立候補を取り下げました。そして、木曜日の再投票でマイケル・ゴーブ司法相が最下位で振り落とされ、残留派のテレサ・メイ内相と離脱派アンドレア・レッドソム・エネルギー閣外相の一騎打ちとなることが決まりました。
なお、離脱派として国民投票前に活発にキャンペーンを推し進めていた欧州議会議員のナイジェル・ファラージ氏は、国民投票に勝ったことで目的は達したと、月曜日に「イギリス独立党」の党首を辞任すると表明しています。
そこで離脱への道のりは、 離脱派の中心であったジョンソン前ロンドン市長やゴーブ司法相やファラージ前イギリス独立党党首が一線から消え、保守党党首としてはテレサ・メイ内相が確実視されていることからも、 残留派を中心に進められることとなりそうです。
なお、今週はかつて財務相も務めたケニス・クラーク氏が、スカイニュースでの保守党党首選関連の解説の際に、オンエアーでない際に録画された、それぞれの保守党党首立候補者について、歯に衣を着せない批評をしているビデオが公開されています。
ここでは、「ゴーブ司法相は3つの国と同時に戦争をしかねない」、「メイ内相は良いが、頑固だ。しかし、私たちは(頑固で気むずかし家の)サッチャー首相の下でも務めたのだからね。」などと、保守党で要職を務め、候補者を長く見てきている中での彼自身の評価を、見事なまでにざっくばらんに語っています。
このビデオはこのリンクでご覧いただけます。