ニュースレター(7月21日)1248.55ドル:ECBの金引き締め観測、トランプ政権の経済政策実現性への懸念からドルが弱含み金が2週連続で上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1248.55ドルと前週同価格から1.5%上昇し、2週連続の週間の上げとなっています。
週明け月曜日金相場は、先週金曜日の米国消費者物価指数が予想を下回り、金相場が上昇した基調を受け継ぐこととなりました。この背景には、イエレンFRB議長が先週の議会証言でインフレ率が上昇しないことを懸念していたことからも、年内の利上げ観測が後退したことで、ドルが弱含んでいたことからでした。
翌火曜日金相場は、前日の上げ基調を受け継ぎ、3営業日連続の上昇でトロイオンスあたり1240ドルを越えることとなりました。
これは、同日医療保険制度改革法(オバマケア)代替法案の採決を断念したことが伝えられたことから、ドルが弱含んだことが要因となりました。そして、米長期金利も米株価と共に同日下げることとなりました。
また、先週火曜日のコメックス金先物・オプションのショートポジションがかなり積み増されていたことからも、価格が上昇した際にストップロスの発動でショートポジションの巻き戻しも起きていた模様です。
水曜日金相場は、翌日の欧州中銀と日銀の金融政策発表を待つ中、狭いレンジでの取引となっていました。
木曜日は、今週注目の欧州中銀の金融政策が発表され、金利は予想通り据え置きとなりましたが、その後のドラギ総裁の記者会見のコメントがタカ派的と解釈されたことで、ユーロが23ヶ月ぶりの高さに上昇し、ユーロ建て金相場が下落することとなりました。そのコメントは「政策委員会は秋に決定を下す」で、金融引き締めが秋に始まる可能性があるとして、タカ派的と解釈された模様です。
また、同日はモラー特別検察官がトランプ氏のビジネスに捜査範囲を拡大することが伝えられ、ドルインデックスが11ヶ月ぶりの低さ近くまで弱含んだことから、ドル建て金相場はトロイオンスあたり1245ドルを越えて3週間ぶりの高さへと上昇することとなりました。
なお、同日行われた日銀政策決定会合では金融政策は維持され、新たな物価見通しを2%の物価目標達成時期を2018年度頃から2019年度頃と先延ばしたことから、日本円が2週間ぶりの低さへと弱含むこととなりましたが、先のトランプ大統領のニュースを受けて円高へと一転していました。
本日金曜日金相場は、ドルが昨日の11ヶ月ぶりの低い水準へと下げる中、トロイオンスあたり1250ドルを一時超えるなど上昇することとなりました。
ドルが弱含んだのは、昨日のドラギ欧州中央銀行総裁のコメントで金融引締め観測が広がりユーロが対ドル上げていること、また、トランプ大統領への捜査がトランプ政権の経済政策実現を妨げるのではないかという懸念が要因となっている模様です。
その他の市場のニュース
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先週末発表された先週火曜日のコメックスの金先物・オプションの資産運用業者のネットロングポジションは、前週比28%減で5週連続で減少していることからも、2016年1月以来の低い水準となっていたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のポジションは、2015年12月以来初めてショートポジションがロングポジションを上回り、ネットショートとなっていたこと。 -
今週金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が16.3トン減と1週間の減少量としては最大の記録を更新したこと。
ブリオンボールトニュース
今月ブリオンボートにおいて、月初から2週間で金相場が下げている際に記録的な金が購入され、顧客が保有する金の量が史上最高値の38トンとなった事を伝えるプレスリリースが、金(ゴールド)の情報をまとめているゴールドニュースサイトで取り上げられました。
月曜日金価格がトロイオンスあたり1230ドルを越えたことを解説している主要経済サイトのMarketWatchで、ブリオンボールトリサーチ・ダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここでエィドリアンは、「ゼロ金利(もしくはゼロ金利に近い低い利率)が続けば続くほど、中央銀行の動向が市場のセンチメントに重要となる。そこで、中央銀行が利上げをすべきかどうかを決めかねていればいるほど、金相場を動かすこととなる」とコメントしています。
また、モーニングスターの投資家の見方の記事で「なぜ私がベトナムと金とSRIを買ったのか」の記事で、金投資ではブリオンボールトを利用していると取り上げられていました。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
月曜日からロンドンへ戻ってまいりました。そこで、今週からロンドン便りをお届けします。
今週は英国とEUの英国離脱の第2回の交渉が行われていました。そのような中、モルガン・スタンレーが英国のEU離脱後はフランクフルトに「欧州ブローカーディラー業務」の拠点を移すことを発表しています。
既に、スタンダードチャータード銀行、野村證券、大和証券が同様にフランクフルトに一部業務のEU拠点を移すことを発表しており、バークレー銀行はダブリンの規制当局と話し合いを進めていることが先週伝えられており、HSBCは、状況に応じてはパリへ1000人のスタッフを移す可能性に言及しているとのこと。
また、シティグループは、近い将来にEUの拠点をフランクフルトに移すことを発表するとも伝えられています。
これは、現在ロンドンの金融機関が保有する「Passporting rights(規制当局の追加許可なくEU内で運営する権利)」が失われた際に備えるためですが、全世界の外国為替取引の41%、店頭金融派生商品取引で49%のシェアを持つ世界の金融の拠点であるロンドンが、その影響力を失う事となるのか、懸念は広がりつつあるようです。
今週行われたEUとの交渉では、離脱の未払い分担金(手切れ金)、そして離脱後のEU市民の権利保障等で難航したことで、お互いの主張内容を確認することに留まったとのこと。そして、次回は8月28日の週の交渉となるようですが、今秋までに少なくとも手切れ金の額の算定方法で合意を目指すとのことです。
ハードブレグジッター(強硬離脱派)の国際貿易担当相のリアム・フォックス氏はEUとの自由貿易協定に同意される必要はないとまで昨日述べていいたようですが、先々を見通して投資を行なっていかなければならない市場にとっては、このように最悪のケースを想定してバックアッププランは必要であるのでしょう。
ちなみに、英国の金融サービス業の英国全体のGDPに占める割合は8%で、雇用数は3%ですが、これに金融関連サービスも含めるとGDP の12%で雇用は6%で、税収は全体の約1割を占めるとのこと。(2016年11月三井住友アセットマネジメントのレポートより)
それゆえに、今後の金融機関の動きには敏感にならざるを得ないようですが、これまでの市場アナリストの予想では、英国からEUへの金融機関の移転は限定的となり、英国は欧州の金融センターとしての地位を維持するとはされているようです。