ニュースレター(7月18日)1307ドル イエレンFRB議長の議会証言で急落したものの地政学リスクが金価格を押し上げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1307ドルと前週同価格から2%下げています。
週明け月曜日に金価格は大きくトロイオンスあたり30ドル強下げることとなりました。これは、一日の下げとしては2.1%で昨年12月末以来の大幅なものとなります。
これは、先週持ち上がったポルトガル大手銀行の財務不安が落ち着く中、先週の上げの調整が入り、またCOMEXで1328ドルで7000ロットのストップ売りがあり、それがヒットするとともに急落し、さらなるストップ売りが膨らんだ模様です。また、当日ゴールドマン・サックスが、昨今の上げにもかかわらず、金価格の先行きを引き続き弱気としたことが伝えられたことも、投資家心理に多少影響を与えたようです。
火曜日は、定例のイエレンFRB議長の議会証言が行われ、その内容はタカ派とハト派的コメントを含むもので、目新しい物はなかったものの、金価格は更に下げ、トロイオンスあたり1300ドルを下回ることとなりました。
ハト派的発言とは、事実上のゼロ金利政策については、「量的緩和後も相当な期間、維持するのが適切」としたことや、「ゼロ金利解除に関しては、インフレ率が安定して2%を超える必要がある」と強調したことなどですが、タカ派的発言とは、FOMCの見通しを上回って経済が順調に回復すれば、「利上げ時期が早まり、現行の予想より(金利水準は)早く上がる」とも語ったことなどからです。
水曜日は、今週に入って下げ続けた金価格の反発も見られたものの、1300ドルを回復した程度と、上げ幅は限られたものとなりました。なお、イエレン議長の下院での議会証言が前日の上院どうようにありましたが、前日の内容を繰り返すものであり、市場の反応は限られたものとなりました。
木曜日は、地政学的リスクが高まり、金価格は上昇することとなりました。この地政学的リスクとは、ウクライナ上空を飛行中のマレーシア航空の旅客機が撃墜されたと報道されたことから、ウクライナ情勢への懸念が高まったことからです。また、同日ロンドン午前中にイスラエルがガザに対する地上軍派遣の意向を示したこともあり、既に金価格は押し上げられている中でもありました。
これにより、一時金価格はトロイオンスあたり20ドル近く上げ、ダウ工業株30種は160円強下げ、米10年債利回りは2.45%へと急落し、リスクオフが進むこととなりました。
金曜日は、市場が前日のニュースを消化する中、緩やかにトロイオンスあたり10ドルほど下げています。
他の市場のニュース
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今週月曜日に、CMEとトムソン・ロイターの提案が銀値決めに採択されましたが、同様に提案をしていたAutillaのシステムの稼働が開始されることが火曜日に発表されたこと。 -
水曜日に、London Gold Market Fixing Limitedが、金値決めの過程を責任をもって管理する会社、もしくは取引所を任命することを発表したこと。そして、この改革案をロンドン貴金属市場協会と共に取りまとめるとし、その前準備として、法律事務所のSlaughter and Mayの力を借りて、金値決めの仕組みと運営の全てに関しても既に見直しが行われたと伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
今週水曜日にスカイニュースがスクープした、金値決めの改革案が近い将来に発表されることを伝えるブルームバーグの記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここで、エィドリアンは「(金値決めの仕組みではなく)金値決めの印象が傷つけられた」とし、「銀値決めの新方式が8月15日から始まることからも、金値決めの仕組みを見直すという結論に至るのは時間の問題だ」とコメントしています。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「ロンドン金値決めについて」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週の英国メディアが広く伝えていたのは、キャメロン首相による内閣改造でした。来年に総選挙を控えての改造でしたが、主要ポストを大幅に入れ替え、女性の起用も意識して行われたことからニュース性が高く、報道にも力が入っていました。
主要ポストの入れ替えでは、ヘイグ外相とゴーブ教育相が退くこととなりました。ヘイグ氏は、影の内閣の首相を務めたこともある重鎮ですが、来年の総選挙では立候補せず政界を引退し、外相として力を注いできた紛争化の性暴力廃絶の運動などに取り組むとのことです。
また、ゴーブ教育相は英国の教育改革に力を注いだものの、その改革のスピードややり方が教育界から批判されていることもあり、女性担当大臣であるモーガン氏が兼任することとなります。
この新内閣の特徴は、ユーロ懐疑派であるハモンド氏が新たに外相につくなど、反ユーロがかなり明らかであること。また、キャメロン氏が信頼を置くゴーブ氏を選挙対策全般を行うポジションに起用し、女性閣僚を増やしたことなどからも、総選挙を戦うための内閣であるということです。
この内閣改造に関連した軽い話題としては、新たな女性閣僚の写真を一面に掲載して、その洋服センスの批評をするなど、閣僚としての資質よりも見た目を重視したという非難がメディアに対し上がったことです。
先日東京都議会やじ問題でも明らかとなった、日本の政界における女性議員の扱いに比べると、可愛いものだと思うとともに、このようなことにも批判が上がる社会であることに、改めて英国の性差別への感度の高さを認識させられました。
なお、昨日以来英国メディアでもマレーシア航空旅客機撃墜はトップニュースとなっています。原因究明には時間がまだ時間がかかりそうですが、犠牲者の方々の冥福を心よりお祈りいたします。