ニュースレター(6月9日)1266.55ドル:スーパーサーズデーを終え金反落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1266.55ドルと、前週同価格から0.7%下げています。
週明け月曜日金相場は狭いレンジでの取引ではあるものの、過去6週間で最高値のトロイオンスあたり1280ドル前後を推移することとなりました。
同日はサウジアラビアを含むアラブ諸国5カ国が、イスラム組織への支援等を理由にカタールと国交を断絶する事が伝えられ、先週土曜日の英国ロンドンのテロ事件などもあり、地政学リスクが意識されたものの、株式及び為替も狭いレンジでの動きとなっていました。
また、今週は木曜日8日(スーパーサーズデー)に欧州中央銀行の金融政策発表、英国の総選挙、コミー前FBR長官の議会証言も行われることから、これらのイベントを前に市場は様子見でもあったようです。
翌火曜日金相場は、株価が下げ、ドルが弱含む中、7週間ぶりの最高値のトロイオンスあたり1294ドルを付けていました。
これは、先週末のロンドンでのテロ、前日のサウジアラビアを含む中郷5カ国がカタールと断交したことに加え、木曜日の欧州中央銀行金融政策発表、英国総選挙、コミー前FBI議長の議会証言などが懸念材料となり、米国債、日本円とともに金が安全資産として買われていたことからです。
水曜日金相場は、前日の7週間ぶりの高値の1295ドルから下げたものの、ロンドン時間は1290ドルを挟んで狭いレンジで推移し4営業日ぶりに下落することとなりました。
これはドルと長期金利が下げ止まったことからでした。この要因は、翌日のECBの金融政策で「インフレ見通しを下方修正する公算」と伝えられたこと、また、コミー前FBI長官の証言内容が、上院のウェブサイトで公開され、その内容にサプライズがないことも確認されたことからのようです。
なお、同日は石油在庫統計が増加していたことからWTI原油価格が4.5%下げていました。
同日はロシアゲートでトランプ大統領との関係が悪化したことから米司法長官の辞任観測が伝わっており、またイラン国会が襲撃され12人の死者が出ている事件も「イスラム国」が犯行声明を表明したことも伝えられていますが、それに対する市場の反応は限定的でした。
木曜日金相場はドルインデックスが上昇する中、一時トロイオンスあたり1274ドルまで下落することとなりました。
同日は市場注目のECBの金融政策が発表され、政策金利は予想通り据え置かれ、金利引き下げ示唆するガイダンスを削除したものの、ドラギ総裁の「基調的なインフレ圧力、引き続き低調」、「9月のテーパリングめぐり討議せず」などとハト派的ととらえられるコメントからユーロが弱含みドルが強含むこととなりました。
また、コミー前FBI長官の議会証言は前日に公開された証言内容と大きく異ならなかったことからも、市場は神経質に動いていたもののその影響は限定的となりました。
英国総選挙の投票は同日英国時間午後10時(日本時間9日午前6時)に締め切られ、主要メディアが出口調査の結果を伝え、「ハングパーラメント」との予想が出たことから、英国ポンドが対主要通貨で全面安と、ドル建てでは8週間ぶりの低さの2.5%下げたことから、英国建て金価格が7週間ぶりの高さへ上昇することとなりました。
本日金曜日金相場は、昨日の下げ幅を広げ、ロンドン時間午後3時半にトロイオンスあたり1267ドルへと下げており、5週間ぶりの週間の下げとなる方向で動いています。
これは、スーパーサーズディ(重要な木曜日)とも呼ばれていた政治イベントが重なった昨日の結果、英国総選挙はハングパーラメントとサプライズはあったものの、材料が出尽くしたことから、ドルや株価へ資金が戻ってきており、その結果金が押し下げられている模様です。
その他の市場のニュース
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CMEトムソン・ロイターが撤退することを表明しているLBMAの銀価格の運営に、関係者の話として現在LBMA金価格を運営しているICEとプラチナとパラジウムLBMA価格を運営しているロンドン金属取引所(LME)が候補としてあがっていることが伝えられていたこと。 -
NFEx Marketという今年3月に設立された新会社が、ロンドン金属取引所(LME)に競合する市場のプラットフォームを来年第一四半期に設立することが伝えられていたこと。 -
インドの物品・サービス税(GST)の金への率が3%と政府が決定したことを今週月曜日に多くのメディアが伝えていたこと。これは、予想されていた5%を下回り、今後は金へ一律13%(10%の関税と3%のGST)と、これまでの12.5%(10%の関税と1%の売上税と0.5%のサービス税)より増加するものの、この税金を今までのように別々に支払う必要がなく一括で払えることからも、今回のニュースは良いものとして、インドの主要宝飾品関連企業の株価が上昇していたこと。 -
先週末に発表された、先週火曜日のコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、金相場が上昇する前に12%増と2週連続で増加していたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも、42%増と2週連続で増加し、ショートポジションは26%減と昨年11月以来の早いペースで減少していたこと。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が今週は16トン増加していたこと。
ブリオンボールトニュース
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CityAM「ハングパーラメントの選挙結果でポンド建て金急騰」
英国の総選挙結果を受けてポンドが弱含んだことから、ポンド建て金価格が上昇したことを伝える記事で、ブリオンボールトのデータとリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここで、エィドリアンは「政治イベントが金価格を動かすことは稀だが、今回はポンドが下落したことでポンド建て金価格を押し上げた。」と述べ、ブリオンボールトの取引量が出口調査が発表された昨夜午後10時から今朝9時までに通常の4倍となっていたことも伝えられています。
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テレグラム「金取引量が急増ーしかし売却が購入を上回る?」
英国総選挙後の出口調査が発表された昨夜から今朝9時までのブリオンボールトでの取引量が4倍となったこと、しかしその取引は売却が多かったことが伝えられていました。
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ブルームバーグ「新たなゴールドラッシュは保管場所」
金保管場所の需要が高まり、欧州で金保管場所の設立が進んでいることを伝える記事で、ブリオンボールトのデータが取り上げられました。
ここでは、ブリオンボールトを現物取引において最大のオンラインプラットフォームを運営すると紹介し、5月までの過去1年間に3トンの金が保管され、総量38トンが保管されているとし、その保管料が年間で0.12%であることもETFの0.4%と共に取り上げています。
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ゴールドニュース「[金投資家インデックス] 新規顧客の伸びは弱気市場の低い水準へ」
先月のブリオンボールトがまとめる金投資家インデックスのプレスリリースが、日本語で金の情報を網羅するゴールドニュースサイトで掲載されました。
先月は、フランス大統領選が終わり政治リスクへの懸念が後退したこと、米株価が史上最高値を更新していたことなどからも金への関心が薄れ金価格が下落した際に、ブリオンボールトの既存の顧客は購入を進めていたことが、金投資家インデックスが昨年12月以来の高い水準へ上昇していたことからも明らかとなったと伝えられています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
本日は主要メディアは一斉に総選挙の結果、どの政党も過半数を取ることができなかったハングパーラメントとなったことを伝えています。そして、そのほとんどの記事の見出しは「May's gamble backfires(メイ首相の賭けが裏目にでる)」となっています。
総選挙に出る前に与党保守党は330議席と過半数の326議席を上回っていました。しかし、EU離脱のEUとの交渉を前に、政権基盤を強化するために、野党労働党のコービン党首が党内をまとめられずに支持率を下げているうちに、メイ首相は2020年の総選挙を前倒しに行いより多くの議席を確保するという計画でしたが、結果は318議席と12議席減。
その要因は、先週お伝えしたように選挙戦中に保守党が発表したマニフェストの社会保障の変更が、保守党の支持層の反発も招き流れが一変し、これまで堅実と評価されていたメイ首相のイメージが頑固と変わり、長年閣僚経験があったことがプラスと考えられていたことが、英国内のテロが続く中、メイ首相が過去に内務大臣として警察官の数を減らしてきたことなどが取り上げられなど、マイナスのイメージがついていったのでした。
そして、野党労働党のマニフェストの一つが年々値上げされていた大学授業料を無料化するというもので、またEU離脱を穏健に行う(ソフトブレグジット)という点も、EU残留を望んでいた多くの若者の支持を受けたのでした。そして、これらの人々は多くのメイ首相を批判するミュージックビデオをSNSで流すなど効果的な選挙活動を行っていったことも30議席増の261議席を獲得した要因のようでした。
投票率は1997年以来の高さで69%とのこと。これは、若い人々の投票率が上昇したことからでした。そして、18歳から24歳の労働党への投票率が大きく伸びたとのこと。
メイ首相は北アイルランドの地域政党(10議席)の協力を得て続投することが伝えられていますが、総選挙に絡み保守党内でも責任が追求される可能性は高く、今後の政局、そして19日から開始されるEUとの本格的な交渉についても懸念が出ています。
この選挙は、ブレグジットの交渉のために政権基盤を強める目的だったはずでしたが、ブレグジットを選択した人々と望まざるしてブレグジットを受け入れなければならない人々の亀裂がより鮮明となってしまい、メイ首相がこの亀裂を埋め、EUとの交渉をまとめていけるのか、不安が残る結果となってしまいました。