ニュースレター(6月3日)1240.50ドル 米雇用統計の予想外の数字に金相場急騰
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1240.50ドルと前週同価格から2%上げています。
英国の祝日明け火曜日の金相場は、前日トロイオンスあたり1200ドルを割る水準まで下げたものの、即座に切り返したことからも9営業日ぶりに上昇することとなりました。
また、今週後半の米国雇用統計を市場が待つ中、同日発表されたシカゴ購買景気指数は、予想と前回を下回り、経済の拡大と縮小の境目の50を割り、49.3となっていました。また、米消費者信頼感指数も予想と前回を下げることとなったことも、上昇の要因であった模様です。
なお、同日は英国のEU離脱に関する世論調査で離脱支持が残留支持を上回ったことが伝えられ、ポンド安となり、英国のEU離脱による混乱の懸念が金相場を支えたという分析も見られていました。
水曜日金相場は、ロンドン午前中にトロイオンスあたり1220ドルを試したものの超えなかったことからも、その後下落をすることなりました。
ロンドン午前中の上げは、同日発表された中国の製造業PMIが予想と前回を下回ったことからとも分析されていましたが、その後、ロンドン時間午後に米主要経済指標のISM製造業景況指数が発表され、予想と前回を上回る良好なものであったことからも金相場の下げを進めたようでした。
木曜日金相場は、翌日の米雇用統計を待つ中、ロンドン午前中は狭いレンジでの取引となりましたがその後下落することとなりました。
この要因は、ロンドン昼過ぎに発表された米雇用統計の先行指標とも見られているADP全国雇用者数が、前回の15.6万人と予想17.3万人に対し結果は17.3万人となり、前回数値は16.6万人に上方修正されたことからも、今月の利上げ観測が広がったことからでした。
ちなみに、同日行われた欧州中央銀行の政策金利発表では政策金利は0.00%、中銀預金金利は-0.40%に据え置かれました。
本日金曜日は市場注目の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は、予想の16万人と前回の16万人を大きく下回り3.8万人となり、前回の数値も12.3万人へと下方修正され、金相場は即座に2%急上昇することとなりました。ちなみに失業率は、予想の4.9%と前回の5.0%を下回る4.7%となりました。
このような非農業部門雇用者数の低い数値は、6年ぶりとなります。この低い水準は、ベライゾン・コミュニケーションズのストの影響ともいわれていますが、その3万5千人を加えても7万人強となり、低水準であることに変わりないともロイター通信も伝えています。
なお、これによってFED Watchの6月の利上げの可能性は、5分の1の確率から25分の1へと下げています。
日本円もこのニュースを受けて107円台へと強含んだことから、円建て金相場においては、少ない上げとなっています。
その他の市場ニュース
-
先週末に発表されたコメックスの金先物とオプションの大口投機玉のネットロングポジションが、先週火曜日に前週から22%減となっていたこと。しかし、このネットロングポジションは、記録的水準からは下げたものの、引き続き高水準で、過去20年間の平均の3倍となってたこと。 -
金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアは、昨日も残高を4.5トン増加させ、875トンとなったこと。
ブリオンボールトニュース
米主要経済サイトのMarketWatchの「5月に金が6%下げ、今年初の月間の下げとなる」の記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
ここでは、コメルツ銀行のアナリストが先物オプションのネットロングポジションが5月24日の段階で大幅に減少したことに注目し、同様にFEDのタカ派的 コメントが昨年11月にネットロングポジションの大幅な減少のきっかけとなったと述べたことを紹介した上で、FEDの利上げを金価格の下落要因とするこ とは簡単だがとし、エィドリアンの「2016年の価格の上昇からも利益確定時期と見たことから、また強気市場が多少疲れを見せたことも要因だろう」という コメントを取り上げています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り(BREXITウォッチ)
今週も英国ではEU離脱に関するニュースがトップを飾っています。BREXIT(英国EU離脱)への懸念は、英国内に留まらず、世界の金融市場や金市場にも影響を与える可能性が高いので、23日の国民投票までは、ロンドン便りは「BREXITウォッチ」とさせていただき、毎週EU離脱関係のニュースに触れることとします。
今週の関連の大きなニュースは、英主要日刊紙ガーディアンとICMが行なった世論調査で離脱支持が残留支持を上回ったことでした。オンラインでの調査では、EU離脱派が52%残留派が48%、電話での調査では、EU離脱派が45%で残留派が42%と共に上回っていました。
そして、昨日はスカイニュースの特別番組にキャメロン首相が出演し、インタビュー後に観衆の質問に答えことから、その模様が本日のニュースのトップを飾っていました。
ここでキャメロン首相は、経済的理由からも残留を訴えましたが、移民問題や離脱派の人々を不安に陥れるネガティブキャンペーンについて問われ苦しい応答をすることとなったと伝えられています。
そして、人文学を学ぶ大学生の女性に、「私は人文学部の学生であるために、人が言い逃れ(Waffling)している時は分かる。そしてあなた(キャメロン首相)は質問に答えていない。」と述べた時のビデオクリップが紹介されていました。
本日は離脱派のマイケル・ゴーブ司法相がスカイニュースの特別番組に出演するとのことです。このゴーブ司法相は、現政府の主要閣僚で論客としても知られています。
キャメロン首相の一連のEU残留のキャンペーンについては、保守党内からの批判も聞こえており、23日の結果で例え残留派が勝利したとしても、キャメロン首相が保守党内の亀裂を融和することができるのか、またキャメロン首相が退陣に追い込まれる可能性もあると関係者は警鐘を鳴らしていることも伝えられています。