ニュースレター(6月27日)1317.50ドル 緊張が続くイラク情勢の中、レンジ内での取引となる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1317.50ドルと前週同価格から0.4%上げています。
週明け月曜日金価格は、前週の上げを保ち、狭いレンジでの取引となりました。
翌火曜日は、イラク情勢の悪化からロンドン午前中金価格は上昇しました。また、同日発表されたドイツのIFO景況感指数が悪化し、ユーロ圏の牽引役のドイツの経済停滞の懸念から、そして、マーク・カーニー英中央銀行総裁が金利引き上げが長引くことを示唆したことなども、価格を押し上げる要因となった模様です。
しかし、ロンドン時間午後に発表された米国新築住宅販売件数が50万4000戸と予想を上回り、上げ幅は1992年1月以来の大幅なものとなったために、価格を戻すこととなりました。
水曜日は、アジア時間に利益確定の売りで価格を下げたものの、同日ロンドン時間午後に発表された米GDP 第一四半期が予想の-1.6%から-2.9%と下げたこと、また、耐久財受注も-1.0%と予想と前回を下回ったことからも、金価格はトロイオンスあたり1324ドルまで10ドル強上げることとなりました。
木曜日、金価格は午前中に下げたものの、午後にはその下げを取り戻すこととなりました。これは、午前中は前日の上げの反発と、中国の審計署(会計検査院に相当)が、偽装された金取引が944億元の担保となっていることを明らかにしたことから、中国政府によるこのような取引の規制が進み、金が売られることが懸念されて価格を下げた模様です。この詳細は、「150億ドルの偽装金取引が伝えられる中、中国の金輸入量が減少」でご覧いただけます。
しかし、ロンドン時間午後には、米国5月個人支出と週間新規失業保険申請件数が経済の回復を確認できない内容であったことから、その下げを戻すこととなりました。
本日は、大きなニュースがこれといって無い中、狭いレンジの取引となりました。
来週は金曜日に米国雇用統計が発表されますので、市場はこの結果に注目することとなります。
他の市場のニュース
- 先週金曜日に行われたロンドン貴金属市場協会の銀のフィキシングに関わるセミナーで発表された提案のスライドが、ロンドン貴金属市場協会のサイトで公表されたこと。今週ブリオンボールトを含む関連企業へアンケートが配布され、この結果で最終案が決定する方向ですので、来週アップデートをお届けします。
- シンガポールで今年9月に金現物取引がスタートし、上海金取引所で第3四半期に人民元建ての金取引の開始を計画していることが発表されたこと。この詳細は、「金取引のアジアの拠点を目指すシンガポールと上海」をご覧ください。
- 5月の香港から中国への金の輸出が52トンと、3ヶ月連続で減少し、20%減の過去16ヶ月で最も低い水準となったこと。
ブリオンボールトニュース
ブリオンボールトのリサーチ主任アィドリアン・アッシュが、ブルームバーグのインタビューで、昨今の銀価格の上げの背景を解説し、その先行きについて答えています。
ここでは、銀の工業用需要と投資需要を説明し、経済の回復とともに工業用需要が伸びていることに注目したものの、先週の上げは派生商品のショートカバーであることを解説し、今後投資をする場合金と銀のどちらを選ぶべきかという質問に対しては、金と銀は75%ほぼ同じ動きをするものの、金と比較して銀のボラティリティの高さを説明した上で、短期で大きく動くのは銀であることを利用した投資の可能性はあるとしています。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
- ブリオンボールトリサーチ部門の「金取引のアジアの拠点を目指すシンガポールと上海」、「150億ドルの偽装金取引が伝えられる中、中国の金輸入量が減少」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国のメディアは、英国で生まれ育った英国人がシリアのアサド政権と戦う反体制派に共感し、シリアへ向かうイスラム教徒の若者が後を立たないことを伝えています。これらの報道によると、こうしてシリアに入国した英国人の若者が200から300人に上るとのこと。
また、これらのイラクやシリアで戦う欧州出身者たちが帰国することは、イギリスの安全保障にとって最大の脅威だとキャメロン英首相も語っています。
今年4月には、英国在住のイスラム過激派が英中部バーミンガム市内の学校を支配しようとしていたことも問題となり、同市議会が調査に着手した結果、5校がイスラム過激派の影響を受けているという判断が下されています。
英国は長年移民を大量に受け入れ、人種的多様性を許容し、マイノリティ共同体の組織や文化を支援する多文化主義を実践してきました。そのため、公共機関などにおいては、あらゆる活動において差別の廃絶、機会均等と良好な人種関係の促進を念頭に置くことが定められ、公衆向け必要情報(ごみ収集のような)翻訳サービスも盛んに行われています。
しかし、2001年夏の北イングランドの暴動事件や2005年7月のロンドン同時多発テロ事件以降、多文化主義による相互の異質性が強調された社会の弊害が指摘されるようになってきています。そのため、2006年に政府は統合及び結合委員会を設置し、移民の英語能力を向上させることや共有されるべき価値観を確立するための様々な施策を導入してきました。
しかし、それ以降もイスラム過激派に洗脳される若者が後を絶たないことが今回明らかとなったことからも、今後英国政府は英国内の多文化、特にイスラム文化を持つ人々が英国に「統合及び結合」をする方法を英国イスラム社会と共に緊急に模索していかなければならなくなったと言えるでしょう。
多文化であることの恩恵を受けている私などは、多文化を認める寛容なイギリス社会が、成熟することはあっても排他的傾向に逆流することがないことを祈るばかりです。