金取引のアジアの拠点を目指すシンガポールと上海
シンガポール取引所と上海金取引所が、金現物取引を開始することを今週発表した。
シンガポール取引所と、金市場開発団体のワールド・ゴールド・カウンシル、シンガポール政府の担当当局、シンガポール地金市場協会が業界会議で発表した文書によると、シンガポールでの金現物取引は9月にスタートする見込み。これは、99.99%の純度の25キロバーのコントラクトとなる。
また、上海金取引所の許羅徳理事長も、同業界会議で、第3四半期に人民建ての金取引の開始を計画していることを明らかにした。
アジアの取引所は、世界の金の生産・精錬、そして消費がアジアに集中する中、地金関連商品を開発している。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、金製宝飾品や金の延べ棒、金貨の需要のうちアジアは63%を占め、2010年時点の57%から増加している。
昨年の価格の急落で急増した需要から、昨年中国はインドを抜き、世界最大金消費国となっている。金価格はドル建てで昨年年間で27%下落している。
シンガポール政府は、シンガポールを貴金属市場の中心とすべく、投資品質の金と銀とプラチナの商品サービス税を2012年10月に撤廃している。これにより、シンガポールの金取引は、2013年に前年比94%増加し280億ドルとなった。
上海もまた、この地域の取引の中心となることを目指し、海外企業を引き寄せるために世界で最大の金現物市場へのアクセスと1500トンの貴金属保管場所を準備した。上海の自由貿易試験区での取引プラットフォームをスタートする全ての取引所のシステムの準備ができていると、許羅徳理事長はコメントしている。
Metalor Technologies SAは、シンガポールでのロンドン金市場受渡適合品(グッドデリバリー)の地金精錬の認可をロンドン貴金属市場協会から受ける最終過程であることを、Scott Morrison会長は明らかにした。Metalorは、シンガポールでの金と銀の精錬を、世界第一と第二の金消費国である中国とインドの中間に位置していることから決定したとのこと。
また、Metalorは、新たな上海金取引所の設立メンバーとして参加することを今週発表している。
ロンドン銀行間平均貸し手金利(LIBOR)のスキャンダル以来、世界の金融指標が規制当局によって調査されている。イギリス金融行為監督機構は、今年5月にバークレイズ銀行のトレーダーが2012年に金フィキシングに関して不正操作をしたことから制裁金を科している。
今年8月14日で終了する銀の値決めの代替案について、現在ロンドン貴金属市場協会が、会員や市場関係者にコンサルテーションを行い8月15日からの利用へ向けて最終案に絞り込んでいる。また、金の値決めについても、7月7日にワールド・ゴールド・カウンシルが主催で、ロンドンにおいて銀行、精錬所、取引所、ETF、等の金業界関係社、そして鉱山会社などに加え規制当局である金融行為監督機構(FCA)もオブザーバーとして出席して、値決めの仕組みの改革について議論する予定となっている。
この改革とは、指標価格をIOSCO (The International Organization of Securities commissions)の原則に沿ったものにし、その価格は実際の取引の価格をベースとしたものでただの出し値や参考値ではな く、実際に取引できる価格であることを条件とし、データは透明性が高く、毎日発表される、監査可能であるものではならないとしている。
そのため、シンガポールの通商産業大臣のLim氏は、「世界の金融指標に透明性が求められている中、(シンガポールが金現物取引を開始することは)タイムリーであると言えるであろう。」とロンドン貴金属市場協会のシンガポールでの会議で述べ、「地金業界が必要なのは、アジアにおける活発な強健な市場である。シンガポールは、(この観点からも)地金業界をサポートするために良い位置にあると信じている。」と続けている。