ニュースレター(6月20日)1312.50ドル イエレン議長のコメント、地政学的リスク、ショートカバーで価格急騰
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1312.50ドルと前週同価格から3%上げています。
週明け月曜日は、イラク情勢が緊迫化したこと、ロシアがウクライナへ供給しているガスの支払い方法の交渉が決裂した ことから、その供給を止めることが発表されるなど、地政学リスクが高まり、アジア時間で価格を上げたものの、翌日始まるFOMCを控えてジリジリとその 上げを失いました。
翌火曜日も前日の流れを受け継いでいましたが、午後に入り下げの反発で戻すこととなりました。
水曜日は、市場注目のFOMC後の声明が発表され、予想通り量的緩和規模が450億ドルから350億ドルへと縮小されたことが明らかになりました。内容は、国債購入が250億ドルから200億ドルへ、MBS買い入れが200億ドルから150億ドルへと縮小となっています。
これは想定内でしたが、FOMC後の記者会見でのイエレン議長のコメントで、低金利政策が長期的に続くという見通しが示され、トロイオンスあたり10ドルほど上昇しました。
木曜日は、前日の流れを受けて更に上昇を続け、トロイオンスあたり1320ドルを超えることとなりました。この一日の上げ幅は3.2%と、2013年9月13日以来の大きさとなりました。
これは、前日のイエレン議長の記者会見のコメントで低金利継続の見通しが示され、全般にハト派的コメントが注目されたためですが、そのためにテクニカル分析上の50日移動平均線や100日移動平均線を超えることで、ポジションの整理が入り、買いが膨らんだためです。
また、同日Natoがロシアが再びウクライナ国境地域に軍隊を配置したことを伝え、悪化するイラク情勢に関してオバマ大統領がロンドン時間夕方に声明を出すことが伝えられたことからも、地政学リスクの高まりで押し上げられました。
オバマ大統領の声明は、大方予想通りの「米軍が戦闘のためにイラクに戻ることはない。」としたものの「標的を絞った軍事行動に備える。」というもので、情勢の緊迫化を止めるものではないという認識であった模様です。
本日金曜日は、前日の上げを緩やかに戻したものの、ロンドン時間18時の段階で1315ドルあたりを推移しています。
他の市場のニュース
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金の業界団体のワールド・ゴールド・カウンシルが、7月7日に金のフィキシングの「Reform(改善)」に関して、金融行為規制機構(FCA)、銀行、精錬業者、中央銀行とミーティングを行うことを発表したこと。 -
本日20日にロンドン貴金属市場協会が銀のフィキシングの代替案として提出されている7つのプレゼンテーションがロンドンで行われたこと。(私も弊社リサーチ主任のエィドリアン・アッシュとこのセミナーに参加してきました。詳細は来週お知らせしますが、要約は下記のロンドン便りをご覧ください。)
ブリオンボールトニュース
今週発行された、ロンドン貴金属市場協会が四半期ごとに発行するAlchemist誌に、ブリオンボールトのリサーチ主任、エィドリアンの分析記事(After the Gold Crash:金市場の急落後)が掲載されました。この記事では、昨年春の金価格の急落の背景とその後の市場の変化が解説されています。
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
本日、銀フィキシングの代替案のプレゼンテーションが行われたロンドン貴金属市場協会のセミナーへ出席してきました。
ここでは、7社のプレゼンテーションが行われ、現行のフィキシングの仕組みをIT技術を駆使して透明性を持たせ、より参加者が入りやすい市場環境をつくり上げる方法が提案されました。
7社の全てが8月14日に終了する銀のフィキシングに代わるシステムを準備し8月15日までに提供できるとのこと。その方法は現行のオークション式と取引所形式が提案されています。このどちらの方法においても、新たな銀のフィキシングは、取引ができる価格であることが条件となっているために、市場へ流動性を与えるマーケットメーカーがどの方式を希望するかが鍵となってきます。
今後の予定としては、来週再度ロンドン貴金属市場協会からアンケートが会員やユーザーへ送られ、今回提案された内容に対して答え、来月中には何らかの代替案の試験的な利用が始まるとのことです。
本日会場には100人近い人々が参加し、今後のフィキシングの行方の議論が行われました。銀のフィキシングの代替案は、大方の予想では、金のフィキシングの代替案ともなるであろうとのことですので、代替案を提案する企業の多くは、経営のトップがプレゼンテーションを行うなど、その意気込みが強く感じられるものでした。
この詳細に関しては、来週詳しくお伝えします。