金市場ニュース

ニュースレター(6月2日)1274.95ドル:米雇用統計悪化で5週間ぶりの高さへ上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1274.95ドルと前週同価格から0.8%上昇しています。

週明け月曜日は、米国と英国と中国が祝日であったことからも、狭いレンジでの取引となりました。

火曜日金相場は、米国と英国が3連休から市場に戻る中、アジア時間では前週の基調を受け継ぎ上昇したものの、8営業日上昇し続けた株価が下げると共に利益確定の売りが進み下落することとなりました。

今週は米雇用統計を含む重要指標が発表されることからも、先週後半に上昇した金相場の調整が起きていたようです。

ちなみに、同日発表されたFRBが金融政策の目安とする個人消費支出(PCE )物価指数は、前年比で+1.7%と市場予想と一致していましたが、FRBの目標としている2%は下回っていました。

水曜日金相場は前日の下げを取り戻し、一時は1月ぶりの高さのトロイオンスあたり1273ドルを付けるなど上昇することとなりました。


これは、米長期金利の低下基調が続いていることからもJPモーガン等の金融株に売りが先行し、原油価格が下げ幅を広げエネルギー関連株も下げ、IT関連株は上げているものの米株式市場が月末の調整もあり下げる中、ドルが弱含んだことからでした。


なお、英国ポンドは来週の総選挙を前に、世論調査で与党保守党と野党労働党の差が狭まっていることが伝えられ、先行き不透明感から本日下げるなど、ギリシャやイタリア関連の政治リスクもあり、これらが金相場を支えている模様です。

木曜日金相場は、翌日の米雇用統計の先行指標と見られているADP全国雇用者数が予想18.5万人を上回る25.3万人と大きく上回ったことから、発表直後ドルが強含み、ナスダック総合株価指数とダウ工業株30種平均とS&P500種が全て史上最高値を付ける中下落しましたが、その後戻しすなど底堅さも見せることとなりました。

なお、同日トランプ米大統領は「米国はパリ協定を脱退する」と述べ、コミー前FBI長官が英国総選挙の6月8日に上院情報委員会で証言することが伝えられるなど、トランプ政権の政治リスクが再浮上することとなり、これらも金相場へのサポートした模様です。

本日は市場注目の米雇用統計が発表されました。これは、非農業部門雇用者数が予想の18.5万人を大きく下回る13.8万人となり、前回数値も21.1万人から17.4万人に下方修正されていたことから、金相場はトロイオンスあたり1275ドルを超えて5週間ぶりの高水準へ上昇することとなりました。

なお、米失業率は、前回と予想の4.4%から更に下げ、4.3%となっていましたが、労働参加率が62.9%から先月62.7%へと下げていたことからとも解説されています。また、平均時給が前年比2.5%とと予想の2.6%より下げていました。そして、同時に発表されていた米貿易赤字も-476億ドルと予想の-461億ドルよりも赤字幅を広げていたことからも、これらの発表を受けて、ドルインデックスは米大統領選時以来の低い水準へと下げています。

その他の市場のニュース


  • この数年福岡での金関連の事件が続いていますが、佐賀沖で金塊と思われるものを積んでいた漁船が見つかったとのこと。これが金塊の場合は10億円相当とのこと。

  • 先週末発表の先週火曜日のコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、3週間連続の減少から一転して先週は68%と大幅に増加し、過去10年間の平均水準へ戻していたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも、5週連続の下げから前週比62%増加となっていたこと。これにより、4月の史上最高値からの大幅な下げから14%程戻し、過去10年間の平均を23%上回る水準へと戻していたこと。

  • 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高は今週全く変化ありませんでした。そのため、6営業日連続増減なしとなります。

ブリオンボールトニュース

英国主要日刊紙テレグラフが、「(安全資産として)金を購入した場合、(緊急時に)どこで売却できるのか」という記事の中で、ブリオンボールトのデータとサービスが紹介されました。

この記事では、BREXITや米国大統領選挙結果が出た際などの主要政治イベント時の取引量がブリオンボールトにおいて大幅に増加(BREXIT時1401%、米大統領選時467%等)したことを取り上げ、購入した金のタイプによっては、緊急時に必ずしも売却が簡単ではないこと、そしてスプレッド(買値と売値の差)が大きい場合があることを説明し、売買が簡単にできるとして、オンラインサービスとしてブリオンボールトを金ETFや金のファンドとともに紹介しています。

今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週英国は、総選挙を来週8日木曜日に控え、選挙戦を伝えるニュース一色となっています。

英国では、先週お伝えした22日に発生したマンチェスターの自爆テロ後に、全ての政党が選挙活動を26日金曜日まで自粛していました。そのようなことからも、先週末から今週にかけて選挙活動は集中的に行われており、主要党首のラジオやテレビのインタビュー、テレビでの議論会、主要党首が全国を巡る選挙活動の様子がメディアで軒並み伝えられています。

4月18日にメイ首相が下院の解散と総選挙実施の方針を発表した直後は、各種世論調査で与党保守党が労働党を20ポイント近くリードしていたことから、保守党の「地滑り的大勝」との予想がされていました。

しかし、メイ首相が総選挙向けにまとめた与党保守党のマニフェスト(政権公約)の一つの高齢者福祉改革が「Dimentia Tax(認知症患者への税金)」と受け取られ、発表以来数週間で大きく支持を失っています。

この改革とは、高齢化が進み介護費用の公的負担が増大していることから、介護サービスを受ける高齢者の生涯自己負担額を、現在の自宅を除く資産23,250ポンド以上保有している高齢者は、自らの介護費用を負担するというものを、その上限を10万ポンド(約1,400万円)へと引き上げたものの、資産査定の対象に自宅を含んだことから、介護サービスを必要とする認知症患者への税と大きな批判を呼ぶこととなったのでした。

つまり、これまでは介護サービスや老人ホームの支払いをしても、自宅を失うことはなかったのですが、この案では、例えば夫が認知症等を発症し老人ホームを利用した場合、その妻は、夫の介護費用を支払うために、共同資産の住まいである自宅を失う可能性が出ることとなります。

この変更は保守党の支持層である富裕層や高齢者にとっては許しがたいもので猛反発を受け、メイ首相はこの変更を見直すことを約束せざるを得なくなりました。しかし、その見直しの詳細を公表しないため、またこのような案を導入しようとした事自体が、メイ首相への信頼を無くすものとなり、保守党への支持が減り、労働党が今週は3ポイント差まで巻き返しています。

そこで、例え保守党が勝利したとしても過半数を取れなかった場合は、メイ首相は政権基盤が弱まることから、今後のBREXIT関連のEUとの交渉にも悪影響を与えることとなり、その懸念からも英国ポンドが弱含んでいます。

BREXITをよりスムーズに行うために、労働党が党首の度重なる失態で支持率を失い続けていたことからも、急遽解散・総選挙を表明したメイ首相でしたが、自ら招いた失態で自分自身も失脚する可能性もでてきたようで、来週木曜日の総選挙まで、今後どのような動きが出るのか等目が離せないものとなってきました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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