ニュースレター(6月17日)1290.70ドル ハト派的FOMCの内容と英国EU離脱の懸念が金相場を押し上げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1290.70ドルと、前週同価格から1.2%の上げとなっています。
週明け月曜日は、英国EU離脱関連の世論調査が発表され離脱派が更にリードしていることが伝わり懸念が広がる中、米国の乱射テロのニュースなどからも、安全資産としての金が買われ、ポンドが下げる中、ポンド建てが2013年9月の水準、ドル建て金相場は4週間ぶりの水準へ上昇することとなりました。
翌火曜日金相場は、英国のEU離脱懸念の広がりから、ポンドが下げ、ポンド建てで過去3年間で最高値を付けることとなりました。同日は、英国のEU離脱関連のニュースとしては、英国で最も高い購読者数を誇るタブロイド紙のSunが離脱支持を表明したこと、またTNSによるオンライン調査で、EU離脱支持が47%、残留支持40%リードを広げたことでした。
水曜日は、FOMCの結果を待つ中狭いレンジで動いていた金相場ですが、FOMCで追加利上げが全会一致で見送られたことが発表され、トロイオンスあたり1290ドルを超え上昇することとなりました。
木曜日金相場は、前日のFOMCで予想通り利上げが見送られ、年1回だけの利上げを予想する当局者が前回3月の1人から6人に増えるなど、ハト派的内容であったことが伝えられ、ドル建てで22ヶ月ぶりの水準へ高騰し、日本円建てを除く他の主要通貨でも上昇した後、利益確定の売りが進み、ほぼその上昇分を失うこととなりました。
なお、円建て金相場は、同日行われた日銀金融政策決定会合でも追加緩和が見送られ、英国のEU離脱懸念からも、1ドル103円台を付け、1年10ヶ月ぶりの水準まで高騰したことから、ドル建て価格の上昇時にも上昇すること無く、終値ベースでは大きく下落することとなりました。
また、同日イングランド銀行も金融政策を据え置いたことからも、英国のEU離脱懸念が広がる中、ポンド安も10週間ぶりの水準へと進み、ポンド建て価格は2013年8月以来の高さへと一時急騰後、利益確定の売却で上昇分を失うこととなりました。
本日は、前日の英下院議員のジョー・コックス氏の事件からも英国のEU離脱の可能性が後退する中(詳しくは下記のロンドン便りをご覧ください)、金相場は緩やかに上昇することとなりました。
その他の市場ニュース
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ドイツ国債10年物の利回りが史上初マイナスとなったことをブルームバーグが伝えたこと。 -
今週恐怖指数(VIX)が、英国のEU離脱懸念から、3ヶ月ぶりに20を超えたことが伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
ファイナンシャルタイムズのFT Adviserサイトの「EUリファレンダムの前に金投資への動きが進む」の記事で、英国金融オンライン取引サービス最大手のIGの分析と共にブリオンボールトの分析が取り上げられました。
ここでは、EU離脱の是非を問う国民投票を前に、両社のデータから、金投資が進んでいるとし、エィドリアン・アッシュのコメント、「金投資が見直されてい るのは、英国のEU離脱した際に資産におよぼすショックを懸念していることも要因の一つだ。」とし、「英国関連資産に限らず、EU全般のユーロ圏の資産も 影響はおよぶだろう。」いうコメントを紹介しています。
そして、ブリオンボールトのリサーチによる過去5つの歴史的経済危機の際に、金価格が全般的に上昇しているというデータを紹介しています。
昨日、金相場が17ヶ月ぶりの高値を付けた後にトロイオンスあたり1300ドルへと下げたことを解説する、米主要経済サイトのMarketWatchの記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
この記事では、英国のEU離脱懸念が金相場を押し上げていたものの、昨日の残留派の英下院議員の殺害が、残留派の追い風になるのではと予想する筋もあると した上で、エィドリアンの「国民投票の結果がどちらとなったとしても、今回のボラティリティが、11月の米国大統領選においてもありうるということを証明 した。」というコメントを紹介しています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り(BREXITウォッチ)
昨日で、英国のEU離脱の是非を問う国民投票まで1週間となりました。今週もBREXIT関連のニュースが続いていますが、昨日の英下院議員のジョー・コックス氏が殺害されたニュースは英国全体を揺るがすものとなりました。
ジョー・コックス議員は、英国の下院議員が定期的に行なっている有権者との対話集会に向かう途中の会場の外で襲われました。今回逮捕された男は、「英国第一」と数回叫んでコックス議員を襲ったことが伝えられており、国粋主義者の可能性があるとされています。
コックス議員は、複数の慈善団体での人道活動を経て、昨年の総選挙で初当選をしましたが、女性問題やシリア問題に力を注ぎ、EU残留を支持していました。今週15日には、離脱派と残留派がテムズ川に舌戦の舞台を移し、船上で激しい応酬を行なったこともニュースになっていましたが、この活動にもコックス議員は参加し、その模様をツィッターで投稿していました。
このような背景からも、昨日コックス議員が襲われたというニュースが伝わった際にに、両陣営は国民投票に向けての運動を共に中断し、本日も自粛したことが伝えられています。
すでに、市場では今回の事件が残留派の追い風になるのではないかという思惑も広がりつつあり、国民投票の結果にも影響をおよぼす事件となる可能性もあるようです。
ケリー米国務長官は、今回の事件後に「民主主義を大事に思い、民主主義を信じる全ての人への攻撃」ともコメントをしています。
世 界の人々に注目をされているこの国民投票の際には、英国の主権を、そして民主主義を取り戻すことを希望し離脱を支持する人々、そして、EUの中の一員とし ての英国の将来を思い描き残留を支持する人々、そして未だ結論を出していない人々を含めた全ての英国の人々が、英国の将来を左右することとなる重要な決定 を、冷静に感情に流されること無く行うことを希望してやみません。