ニュースレター(5月30日)1250.50ドル 株高とドル高が金価格を押し下げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1250.50ドルと前週同価格から3%の下げとなっています。そして、月間下げ幅も3%と昨年12月以来の大きいものとなりました。
週明け月曜日は、米国と英国が祝日であったことからも、狭いレンジの取引となりました。
翌火曜日、金価格はトロイオンスあたり30ドルほどと大幅に下げ、1263ドルと今年2月以来の低水準となりました。これは、世界の株価が上昇したこと、米主要経済指標が予想を上回ったこと、COMEXの6月オプションの満期日であったこと、そして、同日発表された中国への香港からの金輸入量が65.4トンと、前月の80.6トンと前年の75.9トンを下回ったことが要因となりました。
また、今週行われている欧州中央銀行のフォーラムでドラギECB総裁が、デフレ対策として、6月の金融政策会合で何らかの政策発表を行うことを示唆したことからも、ユーロ安ドル高が起こり、金価格を押し下げた模様です。
水曜日の金価格は、狭いレンジで動き、多少ながらも下げることとなりました。この要因は、前日同様に株高が続いていること、ユーロ安とドル高でドル資産の金が押し下げられていたためでした。
木曜日は、市場注目の米国第1四半期GDPが発表され、予想を下回る-1%となり、株価は上昇しました。これは、この間の米国に大寒波が訪れていたことが要因と判断し、悪いニュースは量的緩和縮小ペースを緩めることにもなるからです。また、同日発表された米新規失業保険申請件数が、30万件と予想と前週を下回り、2007年秋の水準へと下げてきたことも、株価を押し上げ、金価格を多少押し下げる要因となりました。
本日金曜日は、ロンドン午後の時間に金価格は押し下げられています。これは、今週の低値の1250ドルを割ったことなどから、更なる売りが膨らんでいる模様です。
なお、来週は金曜日に米雇用統計が発表され、木曜日は何らかの非伝統的金融政策が発表されると予想されている、ECBの政策金利発表が行われ、市場はこれらに注目することとなります。
他の市場のニュース
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金ETFの代表銘柄SPDRゴールドシェアは、火曜日に8トン残高を増加し、2012年10月以来の増加量となったこと。 -
米国債10年物の金利が木曜日2.41%まで急落したこと。 -
ロンドン金属取引所(LME)とシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が、8月14日に終了する銀のフィキシング(値決め)に代わる指標価格を、電子的に提供する方向でロンドン貴金属市場協会(LBMA)と話を進めていると答えたことを、ロイターが伝えたこと。
ブリオンボールトニュース
今週、共同通信社の記事「ロンドン銀市場変革へ」で、ブリオンボールトのリサーチ主任エイドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。これは、今月14日に銀値決め価格が3ヶ月後に終了することが発表されたことを伝える記事で、その背景を解説する中、エィドリアン・アッシュの「基準価格の廃止は取引量の減少をもたらし、価格上昇を招く恐れがある」というコメントを取り上げ、「基準価格が終了する8月までに、新たな指標を作ることが欠かせないと訴える」という言葉で記事を終えています。
今週の4ヶ月来の低水準となった金価格の下げに関するロイターの記事で、株価の上げとドル高(特に 対ユーロ)を要因とし、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「来週のECBによる動きへの期待によるドル高を無視すべきではない」と いうコメントが取り上げられています。
また、金融派生商品取引で有数のIG UKが、今週の過去6ヶ月で最も大きい下げ幅を見せた金価格について、ブリオンボールトのリサーチ主任へ電話インタビューしビデオで解説しています。このビデオでは、エィドリアンはテクニカル分析も重要として昨今の金価格のレンジをチャートで示し、その流れでレンジを抜けたと解説した上で、この安値を買い時としてブリオンボールトの顧客の買い注文が増えていることもコメントしています。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「バークレーズ銀行が金フィキシングの価格操作で45億円の制裁金を科される」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国では、先週末の欧州議会選挙の結果で、英国主要2党の保守党と労働党を破り、UKIP(英国独立党)が第一党となったことを伝えるとともに、保守党と連立政権を組んでいる自由民主党が大敗したことから起こっている自由民主党内の内紛が日々伝えられていました。
そして、昨夜は、英国で最も著名な時事問題を議論するBBCの番組「Question Time」に、パネリストとして出演したサッカー選手のJoey Barton氏が放った発言が問題とされたことが、本日は広く伝えられています。
その発言とは、UKIPの勝利をUKIP党を含む主要4党を「4人の醜い女性」と例え、「その中では最もましであるから」と表現したことから、UKIP党の女性議員のLuise Bours氏に、「サッカー選手の頭脳が足にあることが証明された」と反論され、後に公式に謝罪を入れることとなりました。
Barton氏の趣旨は、UKIP党の勝利は抗議票の結果であって、UKIP党を必ずしも支持しているものではないというものですが、本人もこの例えはまずかったと認めています。
金融危機、そしてユーロ危機を経験し、緊縮財政で英国を立て直そうとしている連立政権は、その緊縮財政による痛みを感じ、そしてEUに留まることの恩恵を感じられない人々が示した今回の選挙結果に、今後どのように答えていくか興味深いものがあります。
最後に、先日お伝えした癌のチャリティー団体へ2百万ポンドを超える寄付を募った、スティーブン・サトン君のその後についてお知らせします。
残念ながら、スティーブン君は今月14日に19歳の若さで亡くなりました。そして、本日は彼の葬儀の日となっています。彼の生き様に励まされ共感した多くの人々のために、親族のみの葬儀の前に、一般の人々も参列できるお別れの会も今日行われることになっており、昨夜から開かれているお別れの会の会場の教会とその街は、彼の家族の望んだように、彼の人生を祝うために、喪服ではなく黄色もしくは明るい色の洋服を着た人々の波が絶えない模様が伝えられています。
今日までに4百万ポンド(約6億8千万円)以上がこの癌のチャリティー団体へ寄付されています。彼の死後も、迫る死をものともしない前向きな生き様に共感した人々によって、このポジティブなエネルギーが波動のように受け継がれていくことになるのでしょう。