ニュースレター(5月20日)1254.20ドル FOMC議事録で6月利上げ観測が広がり下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1254.20ドルと、前週同価格から0.9%下げています。
月曜日金相場はトロイオンスあたり1285ドルと上昇することとなりました。これは、先週土曜日に発表された中国の鉱工業生産と小売売上高が、多少予想を下回ったことが、中国経済への懸念を高めたことからでした。
また、同日発表の米NY連銀製造業景気指数が予想を下回ったことも、上昇を支えるものとなりました。しかし、ニューヨーク時間に大きな売りが出されて下げることとなりました。
翌火曜日は、主要指標の米消費者物価指数、住宅着工件数、鉱工業生産は、ほぼ全て予想を上回る良い数字となり、ウィリアムス・サンフランシスコ連銀、ロックハート・アトランタ連銀のタカ派的コメントも伝えられる中、金相場は堅調な動きとなりました。
水曜日の金相場は、前日の米主要経済指標が良好であったことと、FRB関係者のタカ派的コメントが伝えられたことから、6月利上げ観測が広がり、緩やかに下げることとなりました。
そして、同日ロンドン時間午後7時にFOMCの議事録が発表されたところで、その内容がタカ派的であったことから、大きくトロイオンスあたり20ドルほど下げることとなりました。
その、FOMC議事録のタカ派的内容とは、「17人の参加者の大半が、雇用や物価の改善が続けば、(次回)6月会合での利上げが適当になるだろうとの見方を示していた。」という点でした。
なお、FOMC議事録発表後、CMEフェドウォッチでは、6月の米利上げ予想確率は、前日の15%から34%に上昇したことが伝えられていました。
木曜日の金相場は、前日議事録発表後大きく下げた基調を受け継ぎ、更に下落することとなりました。
なお、同日発表された米主要経済指標では、新規失業保険申請件数は多少ながらも予想を上回り、フィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナス数値と、経済の悪化を示す結果となりました。
本日金相場は、狭いレンジで推移していましたが、ロンドン午後に発表された米中古住宅販売件数が予想と前回を上回る良好であったことからも下落することとなりました。
その他の市場ニュース
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金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が今週15トン増加し、860トンを超えたこと。 -
米ミシガン大が金・銅鉱山を買収するファンドへ投資することがブルームバーグで取り上げられたこと。 -
著名ヘッジファンド運用者のジョン・ポールソン氏が、今年第1四半期金ETPの持ち分を削減していたことが明らかになったこと。それに対し、やはり著名ヘッジファンド運用者のジョージ・ソロス氏や他のファンドが同四半期に金ETPをほぼ同量増加させていたことも伝えられたこと。 -
ICBCスタンダードバンクがバークレイズのロンドンの貴金属保管場所を購入したことが伝えられたこと。詳細は、下記のブリオンボールトニュースでご覧いただけます。
ブリオンボールトニュース
今週ICBCスタンダードバンクがバークレイズのロンドンの貴金属保管場所を購入したことが伝えられ、このニュースの多くでブリオンボールトのリサーチ主任のエィドリアン・アッシュの背景の解説とコメントが取り上げられています。
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ウォール・ストリート・ジャーナル「中国の銀行がロンドンの巨大な金の保管場所を購入」
この記事では、エィドリアン・アッシュの「金取引の主要企業でありたければ、ロンドンにかかわるのは当然のことだ。」というコメントも紹介されています。
このレポートでエィドリアン・アッシュは、イングランド銀行で英国政府が実際に保有している金の量が310トンと少なく、大部分は商業用であることを説明し、ロンド ンが金現物取引の中心であることからロンドンに貴金属の保管場所が数多く置かれていること等、今回のICBCスタンダードバンクのバークレイズ保管場所の 購入の背景などを説明しています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週も英国では、英国のEU離脱(BREXT)の是非を問う国民選挙を前に、離脱賛成と反対派両陣営のキャンペーンの模様が広く伝えられています。
今週は、離脱賛成派のボリス・ジョンソン前ロンドン市長が、英紙のインタビューで「EUの目的は全欧州を一つの権威の下に束ねようとすることからも、ヒトラーと同じだ」と述べたことが伝えられ、第2次世界大戦中にナチス・ドイツに占領されたポーランド出身のトゥスクEU大統領が猛反発したこと、そして、保守党の重鎮のマイケル・ヘゼルタイン上院議員も、このコメントが「(ボリス・ジョンソン氏の)首相となる可能性を傷つけた」と述べたことが伝えられています。
本日は、英国の著名俳優や歌手や作家など250名が、芸術産業のためにもEU残留を支持する声明を主要紙に寄せたことが伝えられるなど、ほぼ毎日のように両陣営が新たな動きを見せ、その関連のニュースが伝えられています。
昨日のFOMCの議事録でも英国のEU離脱への懸念について触れられていますが、先週12日には、マーク・カーニーイングランド銀行総裁も、EUからの離脱がポンド安と失業者の増加を引き起こすことを警告しており、国際通貨基金(IMF)のラガルド総裁の「(EU離脱は)悪いか、かなり悪い結果をもたらす。」というコメントも伝えられています。
しかし、このように離脱反対派に圧倒されるように見えるにもかかわらず、世論調査によっては離脱賛成派が反対派を上回っているものもあるようで、引き続き健闘しているようです。
これからの1ヶ月でこの動きに変化が見られるのか、また折を見てご報告しましょう。