ニュースレター(5月19日)1252ドル:トランプ大統領のロシアゲートでリスクオフとなり株大幅安の中金上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1252ドルと前週同価格から1.7%上げています。
週明け月曜日は先週金曜日の流れを受け継ぎ緩やかに上昇することとなりました。
同日はサウジアラビアとロシアの減産延長合意が伝えられる中、原油が上昇し、ドルインデックスが下げる中、金を含むコモディティーが上昇することとなりました。
これは、先週金曜日に発表された米小売売上高と消費者物価指数が予想に至らない結果となったこと、また同日発表のニューヨーク連銀製造業景気指数が予想と前回を下回るマイナス数値となったことからも、米経済への懸念が広がったことからでした。
また、同日は北朝鮮で新型中距離弾道ミサイルを発射したことが伝えられ、これも金価格を支えることとなりました。
翌火曜日金相場はドルインデックスが、トランプ大統領就任以来の低い水準へと下げる中、4営業日連続で上昇し、5月4日以来の高値のトロイオンスあたり1238ドルを一時つけることとなりました。
これはトランプ大統領がロシア外相へIS(イスラム国)関連の機密漏洩をしたというニュースや、同日発表の米住宅着工件数が予想と前回を下回ったことなどから、ドルが弱含んだこと等が要因となりました。
水曜日金相場は、前日のトランプ大統領のロシアとの不透明な関係を巡る疑惑が一気に深刻化したことから、リスクオフの動きが強まり、ダウ工業株30種平均が市場開始とともに前日比290ドル一時下げるなど欧米株価が急落し、米国債が買われ、ボラティリティーインデックスも上昇する中、トロイオンスあたり1264ドルへと2週間ぶりの高い水準へと5営業日連続で上昇することとなりました。
このトランプ政権によるロシア関与疑惑は、ニクソン大統領が弾劾された「ウォターゲート」事件を思い起こす「ロシアゲート」とも呼ばれており、コミー前FBI長官解任に絡み内部情報が次々とメディアにリークされる中、同日グリーン米下院議員が「トランプ大統領弾劾を呼びかける」と述べたことをブルームバーグが伝えてるなど、トランプ大統領の弾劾が意識される事となりました。
木曜日金相場は、前日の年初来の大幅な下げを見せた株式市場が戻し、ドルが若干強含む中、一時トロイオンスあたり1264ドル付けた後、1250ドルを割り込む水準まで下げる事となりました。
金相場の前日までの上昇は、トランプ大統領のロシアゲートに絡み、トランプ政権の政策実行性への懸念が高まっていることが要因となりましたが、同日発表のウォールマート等が良好な決算を発表したことや、新規失業保険申請件数が予想を下回り、フィラデルフィア連銀製造業景況指数も予想を上回る好調なものであったことは、株価とドルを支え、金を押し下げる要因となりました。
なお、恐怖指数とも呼ばれている米株価のボラティリティーを表す指数(VIX)は、昨年11月のトランプ大統領就任直前以来の高水準へ今週に入り急騰していましたが、同日は一服することとなりました。
本日金曜日の金相場は、アジア株価に次いで欧米株価が緩やかながら上昇しているものの、ドルインデックスが下げる中、緩やかに上昇しています。
株価の上昇は、今週の下げの自律的調整であることと、農業機械・建設機械メーカーDeereやCAD等のソフトウェア開発企業Autodeskなどの企業決算が好調であったことなどが要因の模様です。
なお、原油は在庫が6週連続で減少していることからも、OPEC減産効果との期待感から50ドルを超えて上昇していることも、株価を支えているようです。
また、本日トランプ大統領のロシアゲート関連では、政権交代前にフリン前大統領補佐官がトルコ政府から不正に金銭を受け取り、同国政府のために働いていた疑いで捜査を受けていた事をトランプ政権移行チームへ説明していたことが伝えられるなど新たな動きもでています。そのために、政治リスクからも金相場を支えている模様です。
その他の市場のニュース
- 本日インド政府は金へのGST(物品・サービス税)率について、来月3日のミーティングまで決定を引き伸ばしたことが伝えられていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高が、7営業日全く変化がなかったものの、昨日1.2トン減少していたこと。
- 先週末発表された、フランス大統領選後リスクオン傾向の強まった先週火曜日のコメックス先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週比32%減と2週続けて減少していたこと。この一週間の減少量は3月半ば以来の大きなものであったこと。
- コメックス銀先物・オプションの先週火曜日の資金運用業者のネットロングポジションは39%減で4週間連続で下げ続けていたこと。これにより、ネットロングポジションは昨年2月2日以来の水準まで下落していたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のポジションが2週連続でネットショートであったこと。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週はプラチナウィークがロンドンで行われていました。これは、年に一度世界のプラチナに関連する企業がロンドンに会し、その市場について意見交換、そしてネットワークを広げるための一週間で、関連企業が主催する様々なイベントが行われます。
私は昨年同様にそのイベントの幾つかに参加し、TOCOMのブレックファーストレセプションにも参加して来ましたので、その様子を今週はお伝えしましょう。
TOCOMのブレックファーストレセプションはその形がキュウリに似ていることから、「ガーキン」と呼ばれている金融街の著名ビル30 St Mary Axeビルのトップフロアで3年前から毎年行われています。
このレセプションでは、TOCOMの濱田隆道社長、ロンドン・プラチナ及びパラジウム・マーケット(LPPM)のChairmanでJohnson Matthey のトレーディング部門のジャネラルマネージャーのTim Pearce氏、そしてICBCスタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏がスピーチをし、TOCOMの関国際室長からTOCOM商品の詳しい説明がありました。
ここで、池水氏のプラチナ価格の見通しが興味深いものでしたので、簡単に下記にまとめてみました。
- NYMEXのプラチナのロングポジションが大きく減少していることからも売り圧力は軽減さており、これ以上の大きな下げはないであろう。
- 金とプラチナの価格差が300ドルとなっていることからも、これ以上の幅は出るとは考えづらく、逆転をしないまでもその差は狭まる。
- プラチナとパラジウムの価格差からもプラチナのこれ以上の下げはないのではないか。
- しかし、あくまでも見通しであり、昨年底値と予想したことを考えると、先が全く外れる場合もありうる。
プラチナの需給については、今年のプラチナウィークでは初めて業界内でのデータに食い違いがあることが話題になっていましたので、既に発表されている貴金属コンサルティング会社のレポートを「2016年プラチナ需給と2017年の需給見通し」でまとめていますのでよろしければご覧ください。
それでは最後に、同日ロンドンは残念ながら雨模様でしたが、空の上で行われているような会場の写真を下記に添付します。