金市場ニュース

ニュースレター(5月12日)1231.25ドル:フランス大統領選が終わり政治リスクが後退したものの、FBI長官解任で再燃

週間市場ウォッチ

今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1231.25ドルと前週金曜日の同価格から0.3%上げています。

週明け月曜日金相場は前日のフランス大統領選で中道系独立候補のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相が勝利し、これは既に価格に織り込み済みであったことから上昇して始まりましたが、その後ドルインデックスが上昇したことなどからも、その上げ幅を失うこととなりました。

なお、米FRBによる利上げ予想は、CMEのFEDWatchツールでは、一月前の67.1%、金曜日の78.5%からも上昇し、同日は83.1%となっていました。

火曜日金相場は、ドルインデックスが強含み、米株式市場でテクノロジー株が牽引してナスダックが史上最高値へと上昇する中、緩やかに下落し、2ヶ月ぶりの低い水準となりました。

これは、フランス大統領選も終え、政治リスクも後退し、同日ジョージ・カンザスシティー連銀総裁の「緩やかな政策引き締めを支持」、「バランスシート、年内の縮小開始をあらためて支持」 というコメントも伝わる中、利上げ観測が広がっていたことからです。

なお、米国の株式と債券のボラティリティーを示す米国ボラティリティーインデックスは1993年以来の低さとなっていました。

水曜日金相場は、北朝鮮のチェ・イル駐英大使が英スカイニュースのインタビューで6回目の核実験に近く踏み切るのかとの問いに、金正恩朝鮮労働党委員長の決定により実施されると言明したことが伝えられ、更にトランプ大統領によるコミーFRB長官の解任のニュースが伝えられたことから、トロイオンスあたり10ドル程上昇し、トロイオンスあたり1220ドルの水準で推移することとなりました。

木曜日金相場は、欧米株価が下げ、ドルが弱含む中、トロイオンス1225ドルまで上昇することとなりました。

この要因は、前日のトランプ大統領によるコミーFRB長官解任がトランプ政権懸念へと繋がったこと、また同日発表された米生産者物価指数は予想を上回り、新規失業保険申請件数は改善していたものの、 Macy’s Inc. やKohl’s Corp.等の小売大手の業績思わしくなかったことで株価が下げたことからも、これまでの下げの調整が入ったことからでした。

なお、米国株価は原油が在庫減少と産油国の減産が行われていることがデータで明らかとなり上昇したことで多少その下げ幅を取り戻すこととなりました。

また、同日発表されたイングランド銀行の政策金利は据え置かれ、資産購入プログラムも維持され、イングランド銀行が今年の英国の経済成長率を2.0%から1.9%へ下げたことも伝えられて、ポンドが弱含みポンド建て金価格は1週間ぶりの高値へと上昇することとなりました。

本日金曜日は、市場注目の米小売売上高と消費者物価指数が発表され、消費者物価指数は予想通り前月比0.2%と前回の-0.3%が一時的なものであったことを示唆するものとなり、小売売上高も0.4%と前回の-0.2%を上回ましたが、予想の0.6%を下回ったことが懸念材料と取られた模様で、金相場はこの発表後トロイオンスあたり4ドル程上昇し、緩やかに上げ幅を広げることとなりました。

また、本日も昨日のトランプ大統領のコミーFBI長官解任について、トランプ大統領のNBCニュースのインタビューが取り上げられており、これまでの経緯と辻褄が合わない点も指摘されており、この件の懸念も広がりつつある模様です。

その他の市場のニュース

  • ロンドン貴金属市場協会(LBMA)がロンドン保管場所の金と銀の貯蔵量を今年の夏から公表することが伝えられていたこと。なお、プラチナとパラジウムも後日これに続き、将来的には取引量等も公表するとのこと。これは、市場の透明性を高める目的から。
  • 先週末に発表された、先週火曜日のコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週までの6週連続の増加から一転し、10%減少していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、32%減と週間の下げ幅としては、2015年12月以来の大きなものとなっていたこと。
  • 3月にLBMA銀価格の運営からCMEグループとトムソンロイターが撤退することを表明したことに対し、LMEがこの運営を引き継ぐことに手を上げた事が伝えられたこと。なお、LMEは既にプラチナとパラジウムのLBMA価格を既に運営。

ブリオンボールトニュース

先月の金投資家インデックスが先週発表され、そのプレスリリースが、日本語で金の情報を網羅するゴールドニュースサイトに「[金投資家インデックス]新規顧客数は2015年12月以来の低い水準へ」と掲載されました。

先月は、政治リスクで金価格が上昇する中、利益確定が進んで現物投資傾向は下落していました。これは、米国造幣局やパースミントでも同様な傾向が見られていました。

この詳細は、弊社市場分析ページ「価格要因が政治的リスク要因を上回り金投資傾向が減少」においてもご覧いただけます。

今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

しばらく日本の家族の都合でロンドンオフィスを留守にしていましたので、お休みをさせていただきましたロンドン便りを今週からお届けします。

先週までは、この英国もフランス大統領選がトップニュースとなり、BBC等の主要メディアは日曜日投票日にはニュースの拠点をフランスに移して伝えていました。結果はご存知のように中道系独立候補のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相が勝利したことから、Frexit(フランスのEU離脱)の懸念も後退し、英国での注目は来月8日の総選挙へと移っています。

そのような中、今週は労働党のマニフェストが公式発表前にメディアにリークされたことが広く伝えられていました。

ご存知のようにコービン労働党党首は、労働組合や労働党員からは強い支持を得ているものの、世論調査(5月9日付)では、労働党30%に対し与党保守党(47%)と与党保守党に大きくリードを許しています。

このリークされた労働党のマニフェストでは、民営化されたエネルギー、鉄道、郵便局を公営企業へと戻すことも含まれており、多くのメディアが1970年代への回帰(一部は1940年代への回帰)などと伝えています。また、最低賃金を上げ、年金支払開始年齢を下げ、大学の学費を無料にするなども含まれていることから、中道左派のガーディアン紙ですらも、このマニフェストは、かつてない政府による経済への介入というIFS(英国の財政問題研究会)のコメントを見出しで使っています。

労働党内もコービン労働党党首の下まとまりをなくしており、このリークが起きたのではないかとの憶測も伝えられており、労働党の選挙戦の出だしは苦しいものとなっているようです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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