ニュースレター(3月3日)1226.50ドル:FOMCメンバーの相次ぐ利上げコメントで大幅に下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1226.50ドルと前週同価格から2.2%下げています。
週明け月曜日金相場はドルが弱含む中、トランプ大統領就任以来の高値のトロイオンスあたり1263ドルまで上昇した後に、ドルが再び強含み同日の上げ幅を失うこととなりました。
市場は直近では翌日行われるトランプ大統領の上下両院合同本会議での演説に注目していることからトランポノミクスの不透明感からドルは下げていましたが、同日発表された米耐久財受注が予想と前回を上回り3ヶ月ぶりのプラス数値であったこと、カプラン・ダラス連銀総裁の「政策金利は早めに引き上げるべきだ」というコメント等が伝えられる中、トランプ大統領の軍事費6兆円増、巨額インフラ投資も伝えられたことが要因となり下落することとなりました。
なお、来月のFOMCでの利上げがFedWatchでは33.2%まで上昇しつつありました。
火曜日金相場は、ロンドン時間はトランプ大統領の議会演説を待つ中、狭いレンジでの取引となっていましたが、ニューヨーク時間終盤に、FOMCメンバー数人のコメントで利上げ観測が広がりトロイオンスあたり10ドルを越えて大きく下げることとなりました。
このコメントは、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の「今年は3回の利上げが適切」、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁の「3月利上げを真剣に協議」、ダドリー・NY連銀総裁の「利上げの主張はより説得力あるものに」というものでした。
なお、市場注目のトランプ大統領の議会演説は、インフラ投資や減税に関する明確な説明がほとんどないものの、サプライズもない無難な内容であったことから、この時点での市場への影響は最小限に留まることとなりました。
水曜日金相場は、前日のトランプ大統領の議会演説が無難であったことが好感され、インフラ投資期待などからも株式市場が上昇する中下げていましたが、米国経済指標の個人支出が予想を下回ったものの、個人所得と個人消費支出(PCE)価格指数が前回を上回る結果となり、特にPCEの数値が2012年10月以来の高さということでドルが強含み、米ISM製造業景況指数も前回と予想を上回っていたことも下げの要因となりました。
そして、同日夜遅くのハト派で知られるブレイナードFRB理事のハーバード大学での講演の「利上げはすぐに適切になりそうだ」というコメントで金は再び押し下げられました。
木曜日は、発表された米国新規失業保険申請件数が1973年以来の低い数値となったことで金相場は下落し、前日比トロイオンス15ドル程大きく下げることとなりました。
同日はパウエルFRB理事の「3月利上げは協議の対象」というコメントも伝えられていました。
なお、同日のFEDWatchでは3月利上げは79.7%まで上昇していました。
本日金曜日は、ロンドン時間夕方のイエレンFRB議長等多くのFOMCメンバーのスピーチを待つ中、昨日の下げ基調を受け継いで緩やかに下げていましたが、その後買い戻しが起こり本日の下げ幅を戻しています。
なお、FOMCメンバーの講演では、シカゴ連銀エバンス総裁は「低いインフレを目標水準に上げるには緩和が必要」 としたものの、フィッシャーFRB副議長の「FOMCメンバーの見解を強く支持」、イエレンFRB議長の「経済が予想通り展開すれば、3月利上げは適切」と「3月」と言及したことからも、FEDWatchでは3月利上げ予想が81.9%まで上昇しています。
なお、本日以降は、FOMCの前のブラックアウト期間となり、FOMCメンバーの講演は行われません。
その他の市場のニュース
-
台湾からの日本への金の密輸が増加していることがThe China Postで伝えられていたこと。 -
フランクフルトで上場されている金のETF(Xetra-Gold)に9.06億ドルの欧州投資家の資金が今月流入しており、2007年以来の高い水準とブルームバーグが伝えていたこと。 -
インドの金融庁が、地金現物取引プラットフォームが今年中にローンチできる方向で動いているとインドの主要経済誌Economic Timesが伝えていたこと。 -
金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は先週金曜日も増減がなく、先週は一週間全く変化なく終え、今週は木曜日に2.4トン増加したこと。 -
先週末発表された先週火曜日のコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週日21%増で昨年12月6日以来の高い水準となっていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、8週連続で増加し、昨年の史上最高ネットロングポジションの78%まで上昇していたこと。
ブリオンボールトニュース
CNBCのビットコインの価格が1オンスの金価格を上回ったことを伝える記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
ここでエィドリアンはこの価格の動きは重要ではないとし「ビットコイン価格が金のオンスあたりの価格を上回ったことは、あまり意味のないことだ。ここで重要なのは、ビットコインが史上最高値を付けていること。つまりは、従来の資産ではないビットコインのような資産への需要が高まっていること、そしてビットコインが新たな、特に不用心な購入者を惹きつけているということだ。」とコメントしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
本日は少し趣を変えて、私が午後参加してきましたファイナンシャル・タイムズ(FT)と日経新聞の共同セミナー「BREXIT、いかに備えるべきか」についてお届けしましょう。
このセミナーは、日経新聞が昨年からNikkei Asian Reviewのプロモーションも兼ねて行っているものです。
第一回は昨年10月に行われ、今回も第一回同様に、ファイナンシャル・タイムズのエグゼクティブ・エディターのMichael Stott氏が一部のスピーカーとして登壇し、二部のスピーカーは、場所を提供しているアーンスト・アンド・ヤング(EY)のMats Persson氏が登壇しました。
このPersson氏は、前キャメロン政権のEUとのネゴシエーターとして活躍した方とのこと。
この経歴の異なる二人のBREXITの先行きに対する意見の違いは興味深いものがありました。
FTのStott氏はBREXITのありうるシナリオは下記の4つであろうとのことでした。
-
英国とEUがBREXITの基本について合意し、詳細の貿易等のルールの取り決め期間中の暫定措置についても2019年3月までに合意。 -
英国とEUがBREXITの基本について合意したものの、暫定措置については合意なく、2019年3月からはWTOルールが適応。 -
英国とEUの話し合いが合意に至らず、WTOのルールが適応され、多くのケースが裁判にもちこまれる。 -
英国とEUの話し合いが混迷し、2017年から2018年までに経済損失が膨大となり、議会がメイ政権のBREXIT案を否決し、2度目の国民投票がおこなわれる。
Stott氏は明らかにBREXIT、メイ政権に批判的であり、EUは他のEU諸国が離脱を望まないように、英国がEU離脱後成功することを望んでいないことから、BREXITの話し合いは困難なものになると主張していますが、Persson氏は、EUもBREXITによる経済的損失は最小限に抑えることを望むはずだという意見から、BREXITの話し合いへはかなり前向きな意見を持っていました。
Persson氏は実際に英国政府のEUとのネゴシエーターとしての経歴の持ち主であることからも、彼の意見に近い結果となることを信じたいですが、かなり異なる意見を聞くことができた今回のセミナーからは学ぶものも多かったように思います。