ニュースレター(3月24日)1247.50ドル:トランプラリーの巻き戻しで金上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1247.50ドルと前週同価格から1.4%上昇しています。
週明け月曜日金相場は、狭いレンジでの取引でありながらも、ドルが多少弱含む中、トロイオンスあたり1235ドルを一時付け、3月初旬以来の高水準と、4営業日連続の上昇となりました。
そのような中、週末18日に閉幕されたG20では、トランプ米政権に押し切られる形で共同声明に「反保護主義」を含まなかったこと、英国のEUからの離脱宣告が来週29日に行われること、FBI長官の議会証言で「トランプ陣営の対ロ接触の捜査を認める」等の政治的イベントが注目されることとなりました。
火曜日金相場は、ドルインデックスが0.3%下げ、米S&Pが1.2%下げるなど、昨年9月以来の下げとなる中、前日を上回るトロイオンスあたり1245ドルまで上昇することとなりました。
これは、早ければ23日にもオバマケア改廃案を下院の審議に持ち込みたいトランプ政権ですが、共和党内の意見がまとまっていないことなどからも議会承認が危うくなっていることが伝えられる中、トランプ大統領の議会運営への懸念からも、大幅な減税とインフラ投資の期待で上昇していた株等のリスク資産が、巻き戻しの売りで今週大きく下げる中、金同様に安全資産と見られる日本円や国債も買われるなどリスクオフの買いが進んだことからでした。
水曜日金相場は、世界の株価が全般下げ、ドルインデックスが6営業日続けて下げる中、トロイオンスあたり1250ドルへと更に上昇することとなりました。
なお、同日発生した英国ロンドンの国会議事堂近くのテロ事件では、犯人1人と警察官1人を含めて4人が死亡(後日更に1人が死亡)したことが確認され、20人が負傷すると伝えられていましたが、市場への影響はありませんでした。
木曜日金相場はトロイオンスあたり1253ドルを付けた後に10ドルほど下げることとなりました。
同日はロンドン時間にオバマケア代替法案の行方を見守る中、米国株価は前日の8週間ぶりの低い水準から上昇するなど、世界株価は全般上昇をすることとなり、また同日ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁の「2017年に3回かそれ以上の利上げを予想」というコメントが伝わる中、長期金利が上昇していたことが下げの要因となりました。
また、同日発表された米新築住宅販売件数が59.2万件と、予想の56.4万件と前回修正値の55.8万件を上回るものとなり、これも金相場を押し下げる要因ともなっていました。
なお、オバマケア代替法案採決延期は木曜日遅くに伝えられ、米株価は6営業日連続の下落となり、金も多少戻すこととなりました。、
本日金曜日は、トランプ大統領がオバマケア代替法案採決を本日行うことを求めたことが伝えられる中、狭いレンジでの取引となっています。
そのような中銀相場は一時トロイオンスあたり17.75ドルを付けるなど、今年3月初旬の高さまで前週比2%程と大きく上昇しています。
その他の市場のニュース
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先週末発表された、FOMCでの利上げ発表後の先週火曜日のコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週から47.92%減少し、2016年1月12日以来の早いペースでの減少となっていたこと。 -
コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも、2週連続で減少し今年2月7日以来の低い水準となっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週一週間でネットで8.9トン増加していたものの、木曜日と金曜日はその残高を減少させ、今週は昨日まででネットで0.3トンの増加となっていること。 -
中国南西で川底から伝説ともなっていた沈められた1万個もの金・銀の略奪品が発見されたとのこと。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では、水曜日にロンドンの中心部の国会議事堂近くで起きたテロ事件に関して大きくメディアは伝えています。
射殺された犯人は、英国生まれの52歳の男性ハリド・マスードとのこと。彼は白人の母親と黒人の父親の間に生まれ、人種問題で口論となり相手をナイフで切りつけるなどの傷害罪で2度服役し、その間にイスラム過激思想に染まったとも伝えられています。
2005年7月7日のロンドン同時爆破事件も英国生まれの英国人によって実行されましたが、やはり今回も英国人であったことからも、そのショックは大きく、弊社でも仕事中に刻々と伝わる詳細に、私も含み同僚達はショックを受けていました。
今週は実はもう一つ大きく伝えられていたニュースをお伝えする予定でした。
それは、北アイルランドの自治政府のマーティン・マクギネス前副首相が亡くなったことでした。彼は、北アイルランド紛争が深刻化していた1960年から70年代にカトリック系過激組織のアイルランド共和軍(IRA)に参加し、司令官として武力闘争を率いていました。しかしその後政治家に転身し、IRAの政治組織のシン・フェイン党の幹部として1998年の北アイルランドの和平合意成立に多大な貢献をしたのでした。
その後は、2007年には宿敵であったプロテスタント系政党(DUP)と連立を組み、DUP党首イアン・ペーズリー首相を副首相として支え、和平の定着に尽力しました。
ほとんど不可能と見られていた北アイルランド紛争を和平に導くことができたのは、いろいろな要因があるものの、武力に訴えてもあくまでも北アイルランドのアイルランドへの併合を望む過激派組織を説得できたのはマーティン・マクギネス氏が過激組織から信頼を得ていたからとのこと。
長い年月を経て和平が定着しつつある北アイルランドのように、ISのようなイスラム過激派組織との和平もいつの日か可能となることを、今回の事件で犠牲となった人々のご冥福と共に心から祈るばかりです。