金市場ニュース

ニュースレター(3月14日)1385ドル ウクライナ、中国リスクで昨年9月以来の高水準へ

先週は休暇をいただいていたために、ニュースレターの掲載が遅れましたことをお詫びいたします。

週間市場ウォッチ

今週金曜日のPM Fix価格は、トロイオンスあたり1385ドルと、前週銅価格から3.6%の上げとなりました。

週明け月曜日は、中国貿易収支が予想を大きく下回ったためにアジア株が下げる中、アジア時間で大きな売りが出たために10ドルほど下げたものの、ロンドン時間でウクライナ情勢への懸念などから戻すこととなりました。

翌火曜日は、ウクライナ情勢において、ロシアがあらゆる話し合いを拒絶したことが伝えられたことから緊張が高まり、金価格を押し上げることとなりました。また、週末に発表された中国の貿易収支の大幅な悪化と、中国企業の社債のデフォルトも、金への安全逃避を進めた模様です。

水曜日は、ウクライナリスク、中国リスクで「有事の金」へ資金が集まる中、上げが上げを呼ぶ形で、トロイオンスあたり1360ドルを超え、1370ドルを試すこととなりました。

木曜日もまた、ウクライナリスク、中国リスクが高まった上に、ユーロリスクが再燃することになりました。ウクライナ情勢においては、ケリー米国務長官が同日クリミア自治共和国においてロシア編入を問う住民投票が実施されれば、欧米が「重大な措置を取る」と指摘したことが、地政学リスクを高めることとなりました。中国リスクは、同日発表された2月鉱工業生産などの主要経済指標が軒並み予想を下回ったことから経済への懸念が高まったことからです。そして、ユーロリスクとは、ドラギ欧州中央銀行総裁が講演で、「ユーロ高が物価での重石となる中、ECBはユーロ圏にデフレが根付かないようにするための追加政策手段を用意している」というコメントが、ユーロ圏経済への懸念を高めることとなったことからです。

こうして、安全資産の位置づけである金価格はトロイオンスあたり1370ドルを超えることとなりました。

金曜日も、前日の流れを受け継ぎ、トロイオンスあたり1385ドルまで上昇し、昨年9月以来の高水準となりました。ウクライナのクリミア自治共和国の住民投票が16日に行われる予定で、米露の話し合いが遅々と進まないことなどから、金価格を押し上げることとなりました。そして、中国リスクの経済成長の下振れや理財商品や社債破綻への懸念も広がった模様です。

また、同日発表された米国2月生産者物価指数や3月ミシガン大消費者信頼感指数も予想を下回ったことが、量的緩和縮小ペース見直し観測も広がったようです。

 

他の市場のニュース


  • 金ETF「SPDRゴールド・シェア」の残高が、火曜日に7.5トン増加したこと。

ブリオンボールトニュース

今週水曜日に、ウォール・ストリート・ジャーナルの経済サイトであるMarket Watchで、ブリオンボールトのリサーチ主任、エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。

ここでは、コメックス先物市場の金価格が昨年9月以来の水準に上昇したことに対し、エィドリアンは、「新たな資金が金市場に流入している。それらは、強気ポジションをとっている。その規模は年初から3倍となっている。」とコメントしています。

今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。

ロンドン便り

今週英国では、社会主義を信じ、より平等な世界を夢見てきた二人の社会主義者が亡くなったことが広くメディアで取り上げられていました。

一人は、トニー・ベン労働党議員。50年間国会議員を努め、ウィルソンとカラガン政権で内閣の要職を務めた労働党の顔とも言われた人でした。また、彼の率直な人柄と歯に衣を着せぬ物言いから、世論調査で英国政治家の中でも最も人気のある人に選ばれた人でもありました。

そして、もう一人は労働組合の活動に一生を捧げた、交通労組代表のボブ・クロウ委員長。交通労組の権利の確保などを目的として、ロンドン地下鉄のストライキをこれまで何度も先導してきた同委員長を英国主要日刊紙の「ガーディアン」紙は「挑戦的なリーダー」であったと紹介もしています。

しかし、二人が近代の社会主義を唱える代表的存在であったことは確かのようです。そのために、英国主要日刊紙のテレグラフでは、「Tony Benn, Bob Crow and the sad death of British Socialism(トニーベン、ボブ・クロウと社会主義の悲しき死」として、記事を掲載しています。

トニー・ベン氏が大臣を務めていた際に労働党が行った、福祉の充実と基幹産業国営化は、国家財政を逼迫させ経済の悪化をもたらしたことから、英国病とも呼ばれていました。そして、当時、優遇された労組の度重なるストライキで英国は麻痺状態にも陥りました。テレグラフの記事は、そのような時代と思想に生きた二人が亡くなることは、過去にこのような悪影響も及ぼした英国における社会主義の死も意味するのではないかという内容でした。

結果的に彼らが夢するものは現実的ではなく、過去には英国経済を悪化させたかもしれませんが、英国社会主義を頑なに信じた、高いカリスマ性を備えた二人の生きざまを人々は今後も懐かしく思い起こすことになるのでしょう。

最後になりましたが、今週3月11日は東日本大震災の3周年でした。この日を挟んで、ロンドンでも様々な追悼イベントが行われています。3月11日には、ロンドン日本人会が主催の追悼式が朝5時半から行われました。これは、東日本大震災が起きたその時間に、世界各地で同時に追悼式を行うということからでした。

日本国外でも、多くの日本人が東日本大震災の被災者を思い生活しています。この思いが、そして、募金を通じた実質的なサポートが被災者の方々に届くことを祈っています。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ