ニュースレター(2026年8月21日)米国債務40兆ドル突破、国債バイバックでドル下落、金・銀急騰
週間市場ウォッチ
今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格を比較した一週間の変動率は以下の通りです。
*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。
**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。
- 金:ドル建て価格は、3週連続の週間の上昇で、金曜日価格で5月8日以来の高値。
- 銀:3週連続の週間の上昇で、6月5日以来の高値。
- プラチナ:週間の上昇で、5月29日以来の高値。
- パラジウム:週間の上昇で、8月7日以来の高値。
貴金属市場の動向(週間)
今週の貴金属市場は、大きく上昇することとなりました。背景には、米国の長期金利が高水準へ上昇する中、米財務省が長期国債の買い戻し(バイバック)を拡充し、長期借入コストの上昇を抑える姿勢を示したことがありました。こうした動きは、米国債市場への政策介入が強まっているとの見方を広げるとともに、今週、米政府債務総額が40兆ドルを超えたことで、増大する政府債務や財政の持続可能性への懸念も改めて意識されました。その結果、ドルが約3カ月ぶりの安値圏へ下落したことも、貴金属相場を押し上げました。
中東紛争による原油高がインフレ圧力への懸念や米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測を高め、貴金属価格は6月半ば以降押し下げられていました。しかし、ここに来て米国の財政や政府債務への懸念が強まる中、ドル資産を保有するリスクが改めて意識され、実物資産である貴金属への需要を高めている模様です。
下記のチャートでは、米国政府債務(赤線)が金融危機、パンデミック、その後の財政支出拡大を経て40兆ドルへと急増する中、ドル建て金価格も長期的に大きく上昇していることが見て取れます。
今週の貴金属相場の動き(日次)
■ 月曜日
金、銀相場は前週の上昇基調を受け継ぎ、ロンドン時間早朝にそれぞれトロイオンスあたり4,416ドル、66.22ドルをつけた後に下げたものの、午後には4,428ドル、66.55ドルまで上昇し、その後上げ幅を若干削って終えました。
前週発表された米インフレ指標の鈍化や小売売上高などが米経済の減速を示唆し、FRBの早期利上げ観測が後退したことで、ドルが2カ月ぶりの安値をつけたことが貴金属を支えました。一方、トランプ大統領がイランとの「紛争解決に向けた期限は設けていない」と述べたことで原油価格が上昇し、インフレへの警戒から一時上値を抑えられました。
また、財政や政府債務への懸念を背景に米長期金利が高止まりし、イールドカーブがさらにスティープ化。30年国債利回りが2007年以来の高水準をつける中、米国の財政や債務の持続可能性への懸念が、安全資産としての金への需要を支えていました。
■ 火曜日
金・銀相場は前日からの上昇基調を失い、金はトロイオンスあたり4,394ドル前後で横ばい、銀は前週末終値に近い64.74ドルまで下落しました。
同日は世界的に長期国債利回りが上昇。30年物国債利回りは、日本では過去最高に近い水準、米国では2007年以来、英国では1998年以来の高水準に接近し、ドイツでも2011年以来の高水準となりました。株式市場も下落する中、金は安全資産としての買いと換金目的の売りが交錯する一方、銀は景気減速への懸念から売りが優勢となりました。
背景には主要国の財政赤字拡大への懸念に加え、AI関連企業による大規模な社債発行が投資資金を吸収していることなどが指摘され、米国では海外投資家による米国債保有の減少傾向も意識されていました。
■ 水曜日
金、銀相場は、米財務省が国債買い戻し(バイバック)の増額を発表したことを受け、それぞれトロイオンスあたり4,525ドル、67.16ドルと、6月初旬、6月半ば以来の高値へ急騰しました。
米財務省は、市場の流動性を支援するために行っている国債買い戻しについて、10~20年債と20~30年債を対象に、1回あたりの上限額を20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げると発表しました。
これを受け、米10年国債利回りは5ベーシスポイント低下。同日160億ドルの入札が行われる20年債は8ベーシスポイント、前日に2007年以来の高水準となっていた30年債利回りは最大9ベーシスポイント低下し、6月初旬以来の低水準へ下げました。
国債利回りの低下は金利を生まない貴金属を支えるとともに、長期金利が高水準へ上昇する中で財務省がバイバック拡充に踏み切ったことがドル安を引き起こし、金・銀相場を大きく押し上げました。
■ 木曜日
金、銀相場は、前日のバイバック拡充を受けた上げ幅を一時削ったものの、ロンドン時間午後にベッセント米財務長官がバイバック額をさらに増加させる可能性を示唆したことから、金はトロイオンスあたり4,540ドル、銀は68.97ドルまで急騰し、その後上げ幅を若干削って終えました。
一方、前日のバイバック拡充発表後に行われた160億ドル規模の米20年国債入札は、落札利回りが5.204%と前回の5.163%から上昇し、入札直前の市場水準も上回るなど、やや弱い結果となりました。30年国債利回りも再び上昇し、前日の低下分の大半を戻しました。
前日米政府債務が40兆ドルを超えたことが伝えられる中、財政や債務への懸念が長期金利への上昇圧力となる一方、財務省がその上昇を抑えようとする姿勢も米国の財政運営やドルへの懸念を高め、安全資産としての金を支えました。また、金価格が前日に200日移動平均線を上回ったことも、市場センチメントを改善させていました。
■ 金曜日
金、銀相場は、ドルが前日につけた約3カ月ぶりの安値圏で推移する中、長期金利は上昇したものの前日までの上昇基調を受け継ぎ、ロンドン時間午後にそれぞれトロイオンスあたり4,604ドル、70.22ドルと、5月29日、6月17日以来の高値をつけました。
米政府債務が40兆ドルを超える中、財政・債務への懸念に加え、長期金利の上昇を抑えるため財務省が国債市場への介入を強めていることが、ドルの実質的な価値が低下する「通貨価値の希薄化(Debasement)」への懸念を強め、実物資産である貴金属を支えていました。
ビットコインも今週、週間ベースで3年以上ぶりの大幅な上昇となる勢いで推移しており、金などとともに、法定通貨の価値低下に備える資産への需要が強まっていることを示唆していました。

その他の市場のニュ―ス
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コメックス(COMEX)のデータによれば、前週火曜日11日、米消費者物価指数発表前日に、前週の予想を下回る米雇用統計からも、金・銀価格が上昇していた際に、金とパラジウムはネットロングポジションを増加させ、銀とプラチナはネットロングを減少させていました。
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金のネットロングは前週比7.2%増の441.26トンと、昨年9月30日の週以来の高水準へ増加していたこと。2025年の平均は465.8トン、2024年は555.8トン。
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銀の先物・オプションのネットロングは6.8%減の1,604トンと、前週の7月7日の週以来の高い水準から減少していました。2025年の平均は5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。
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プラチナのネットロングは29.8%減の11.9トンと前週の6月2日の週以来の高さから減少していました。2025年の平均は16.2トン、2024年は9.4トン。
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パラジウムは、2月3日の週以来のネットロングから3月17日の週にネットショートへ転じた後、ネットショートは9.7%減の15.3トンと、6月23日の週以来の低さへ減少していました。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。
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金ETF最大銘柄のSPDR Gold Sharesの残高は、今週木曜日までに15.41トン(1.50%)増の1,038.934トンと、5月14日以来の高い水準でへ上昇し、3週連続の週間の増加傾向となっています。2025年は累計で198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は6.59トン(0.75%)減、2023年は38.53トン(4.4%)減、2022年は57.2トン(5.9%)減、2021年は195トン(6.8%)減。
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金ETF第2位のiShares Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.32トン(0.29%)z増の457.81トンと、8月7日以来の高さで、3週ぶりの週間の増加傾向となっています。2025年は累計で101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、2022年は42トン(8.9%)減、2021年は36トン(7.0%)減。
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銀ETF最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに60.44トン(0.39%)減の15,275.59トンと8月17日以来の低い水準で、週間では3週ぶりの減少傾向となっています。2025年累計では2,120.59トン(14.45%)増と2年連続の年間増加ペースとなっています。2024年は720.44トン(5.3%)増、2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1,937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。
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金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週66台後半で始まり、水曜日に68台後半と8月初旬以来の高値へ上げた後、本日65台後半と6月半ば以来の低さへと下げて推移しています。2025年の平均は87.85、2024年は84.75、2023年は83.27、過去5年平均は82.44です。比価が高いほど銀が相対的に割安であり、低下するほどその割安感が薄れていることを示します。
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上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の価格差は、2月27日の週からプレミアムへ転じており、今週の平均プレミアムは3.20ドルと前週の4.35ドルから下げての6月26日までの週以来の低さとなっていたこと。2025年の平均プレミアムは2.85ドル、2024年は15.15ドル、2023年は29ドル、2022年は11ドル、過去5年平均は6.9ドルです。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週の貴金属市場は、中東情勢に注目しながらも、水曜日に発表されたベッセント米財務長官による長期国債の買い入れ・償却(バイバック)拡充の影響を大きく受けました。このため、本来注目材料であった前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨以上に、米国の政府債務が40兆ドルを超えたことや、主要国で長期金利が上昇していることが意識され、これらを背景に金を中心とする貴金属が動く展開となりました。
来週も引き続き長期金利の動きに注目が集まる一方、水曜日にはFRBがインフレ指標として重視する米個人消費支出(PCE)コア・デフレーターが発表される予定で、重要な材料となります。
その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026年8月24日~28日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2026年8月17日~23日)今週のの結果をまとめています。
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主要経済指標(2026年8月24日~28日)来週の予定をまとめています。
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。
ロンドン便り
今週の英国では、ウクライナ戦争や中東情勢が引き続きトップニュースとして伝えられています。一方、国内では、干ばつや山火事など異常気象の影響に加え、ヘンリー王子とメーガン妃が子供たちとともに今月末までに英国へ戻ることが大きく報じられています。
夫妻が英国で暮らすのは、王室公務から退いた2020年以来、約6年ぶり。7歳のアーチー王子と5歳のリリベット王女は9月から英国の学校に通い、夫妻はロンドン郊外に生活拠点を置く見込みです。ただし、米カリフォルニア州の自宅も維持すると伝えられています。
そこで今週は、ヘンリー王子夫妻が6年前に英国を離れた理由、その後の王室との確執、そしてなぜ今戻るのかをまとめてみましょう。
夫妻が英国を離れた背景には、特にメーガン妃を巡る英国メディアの激しい報道やプライバシー侵害への不満、そして王室から十分な支援や保護を受けられなかったとの思いがあったとされています。2020年に王室公務から退き、カナダを経て米カリフォルニア州へ移住しました。
その後、夫妻と王室との確執はさらに深まりました。2021年のオプラ・ウィンフリーとのインタビュー、Netflixのドキュメンタリー、2023年の回顧録『Spare(スペア)』などで王室内部の問題を公に批判。父チャールズ国王との関係には改善の兆しがある一方、兄ウィリアム皇太子との関係は依然として冷え込んでいると伝えられています。
今回の帰国について夫妻は詳しい理由を明らかにしていませんが、子供たちの教育に加え、ヘンリー王子が望んできた父チャールズ国王との関係改善も背景にあるとみられています。一方、王室公務を退いたことで失った公費による警察警護を巡る問題は現在も残っており、一家の英国での警護体制とその費用を誰が負担するのかも、今回の帰国を巡る大きな注目点となっています。
英国では王室への支持が長期的には低下傾向にあるものの、今年の調査でも55%が君主制の維持を支持しています。それだけに、国王の次男であるヘンリー王子一家の帰国は大きな関心を集めています。
プライバシーを求めて6年前に英国を離れたヘンリー王子一家が、英国で納得のいく生活を送り、王室との関係も少しずつ改善していくことを願いたいと思います。




