金市場ニュース

ニュースレター(2025年4月18日)中国の需要の高まりからも金は史上最高値を更新

先週のニュースレターは出張と感謝祭の休暇の関係で遅くなりましたが、本日21日にお届けします。

週間市場ウォッチ

先週金曜日のLBMA PM金価格(午後3時)は、前週のLBMA PM金価格と比較すると、2.3%高でトロイオンスあたり3305ドルと上昇し、金曜日のこの価格としては、2週連続で史上最高値を更新していました。この間先週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)は、前週のLBMA 銀価格と比較して、3.33%高のトロイオンスあたり32.31ドルと上昇し、2週ぶりの高さとなっていました。また、先週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)は、前週金曜日のこの価格から2.13%高でトロイオンスあたり959ドルと、2週ぶりの高さとなっていました。そして、先週金曜日のLBMAのPMパラジウム価格(午後2時)は、前週金曜日のこの価格から2.92%高でトロイオンスあたり951ドルと、やはり2週ぶりの金曜日の高さとなっていました。

先週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

先週もまた、トランプ大統領の関税政策によって株価のボラティリティが高まる中で、金価格は史上最高値の更新を続け、他の貴金属も上昇することとなりました。

先週市場の話題となっていたのは、中国の需要の高まりでした。

それは、上海黄金交易所(SGE)と上海先物取引所(SHFE)の取引量が急増していること、SGEのロンドン世界指標との差のプレミアムが上昇していること、中国の金ETFへの資金の流入が急増していることなどから見られていました。

SGEとSHFEの取引量は、前週昨年4月の中国が金価格を押し上げていた以来の高さとなっていた水準からは先週若干下げていたものの、引き続き高いものであり、SGEのロンドン価格との差がトロイオンスあたり20ドルを超えて、本日も含めて8営業日連続で史上最高値をつけているにも関わらず、高いプレミアムを維持しています。

本日は中国の金ETFに注目して下記に、前月3月までの四半期ごとのその資金流入量と人民元建て金価格の推移のチャートを添付します。

今年第1四半期は、2月と3月の需要で四半期ベースで最高を記録して23トン相当の資金が流入していました。これは米中の貿易戦争激化による他の資産や経済成長への不透明感が背景となっていると分析されています。ちなみに、第2四半期の始まりである4月の2週までの資金流入量は、第1四半期をすでに上回る29トン相当となっています。

中国の金価格と中国のETFへの資金流入額 出典元 ワールド・ゴールド・カウンシル

先週他の貴金属は上昇していましたが、金と比較すると金銀比価は2020年のコロナ危機以来の高さ(銀の割安)、プラチナは引き続き金とのディスカウントが史上最大のトロイオンスあたり2361ドルを超えていますので、金の安全資産の需要が顕著であることが明らかとなっています。

先週の金相場について

週明け月曜日金相場は、金曜日のトランプ大統領がスマートフォンや半導体製造装置などの電子機器への関税を一時停止しことを受けて世界株価が上昇する中、取引開始直後に最高値のトロイオンスあたり3245ドルをつけた後に、若干下げて3213ドルで終えていました。

中国の需要は前週の上海黄金交易所の取引量がコロナ危機以来の高さであること、ここの金価格とロンドン世界指標との差も、先週の平均値が10ヶ月ぶりの高さであることからも示されていましたが、アジア時間に金価格が上昇し、NY時間で利益確定の売却で下げるパターンが続いていました。

火曜日金相場は、米株価指数が3営業日連続で上昇してトランプ政権の関税政策による下げ幅を削り、4月2日のトランプ大統領の相互関税発表以来続いていたドルと米国債の売却も収まり、ドルが上昇して米国債の利回りも若干下げて市場が落ち着きを取り戻す中で、月曜日の史上最高値のトロイオンスあたり3245ドルを下回って推移していまいたが、NY時間終わりに上昇に転じて3251ドルと史上最高値をつけて終えていました。

なお、同日はワールド・ゴールド・カウンシルのデータで、中国の金ETFの需要も上海黄金交易所と上海先物取引所の取引量同様に急増していたことが明らかとなり、今月4月11日までに、今年の第1四半期を上回る資金の流入があり、また中国の金ETFは年初来46%と急増して、金価格を押し上げていた(少なくともサポートしていた)背景とされていました。

水曜日金相場は、昨今のパターンであるアジア時間に上昇した後、ロンドンとNY時間で下げることなく、トロイオンスあたり3333ドルと史上最高値を更に引き上げて終えていました。

この背景は、米関税政策とそれによる米中貿易摩擦が世界経済へ悪影響を与えることへの懸念からでしたが、特に半導体やテクノロジー企業の下げが市場の懸念となっていました。

同日テクノロジー株を牽引してきたエヌビディアは、中国向けの半導体が米政府の輸出規制の対象となったことから、前日今年2月~4月期の費用を最大55億ドル計上するとし、同社株が7%を超えて下げ、オランダの半導体製造装置大手のASMLホールディングや、米同大手のアドバンス・マイクロ・デバイスも下げていました。

また、世界貿易機関(WTO)は、今年の世界貿易見通しを下方修正し、2025年はこれまでの2.7%増加から0.2%減少と伝えていました。

なお、同日発表の米小売売上高が予想を上回って2年ぶりの高さであったのは、関税による価格高騰を前の駆け込み需要とも分析されていました。

木曜日金相場は、アジア時間に前日の最高値のトロイオンスあたり3357ドルを1ドル下回る水準へ再び上昇後に、欧米が翌日から4日間の復活祭の休暇に入ることからも、若干ポジション整理も入り下げたものの、3327ドルまで戻して終えていました。なお、週間の上げ幅は終値ベースと2.4%と前週の5.8%に続き高いものとなっていました。

なお、前日NY時間に金価格が上昇したのは、パウエルFRB議長の「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」という、トランプ大統領の関税政策への警笛で、株価が下げに転じたことが背景とも分析されていました。

また、同日の欧州中央銀行の政策金利発表では、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」とやはりトランプ大統領の関税政策に警笛を鳴らし、市場予想通り昨年6月以来7会合目の0.25%の利下げが行われていました。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

 

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、12日の週末に4月8日までのデータが発表され、トランプ大統領が中国の輸入品への関税を104%げへ引き上げたことで、世界株価が下げて、金価格がトロイオンスたり3000ドルを割った際に、全ての貴金属でネットロングポジションを増加少させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、21.6%減で430.7トンと3週連続で減少し、2024年3月初旬来の低さへ下げていたこと。価格は3.8%安でトロイオンスあたり3015ドルと、前週の3133ドルと史上最高値から下げ、建玉は8.9%減であったこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、47.1%減で3411トンと3週連続で減少して昨年12月末以来の低さへ下げていたこと。価格は前週比10.7%安で、トロイオンスあたり30.32ドルと1月末以来の低さへ下げていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングであったものの、4月8日からネットショートへ転換し、23.0トンと昨年の3月初旬以来の大きさとなっていたこと。価格は前週比6.7%安でトロイオンスあたり923ドルと下げ、昨年末以来の低さとなっていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに40.9%増で41.8トンと3週ぶりに増加して昨年8月末以来の高さとなっていたこと。価格は7.7%安でトロイオンスあたり917ドルと5週ぶりに下落して昨年年末以来の低さとなっていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週木曜日までに0.9トン(0.10%)減少して952.29トンと4月10日以来の低さで、5週ぶりに週間の下落となっていたこと。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、先週木曜日までに3.26トン(0.75%)増で433.33トンと2023年8月25日以来の高さで、3週連続の週間の上昇となっていたこと。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、先週木曜日までに147.13トン(1.05%)増で14,120.10トンと3月25日以来の高さで、2週連続の週間の増加となっていたこと。
  • 金銀比価はLBMA価格ベースで、先週99台後半で始まり、徐々に上昇して木曜日に102の後半とコロナ危機の最中の2020年5月半ば以来の高さとなっていたこと。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、先週2265ドルで始まり、木曜日に2361ドルと史上最高値をつけて最高値を更新して終える傾向。2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は2月6日からプレミアムで、今週17ルのプレミアムで始まり、その後水曜日に13ドルのディスカウントに転換して、木曜日に再びプレミアムに転換して9ドルで終えていたこと。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、週間平均で21.91ドルと前週の31.61ドルの中国主導で金価格が上昇していた昨年6月初旬以来の高さからは下げていたこと。この間人民元建て金価格は4月10日から本日月曜日までの8営業日連続で史上最高値をつけていたこと。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプレミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は4月11日から正の相関関係へ転換し、0.56と4月初旬以来の高さへ関係を強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は4月3日から負の相関関係へ転換し、ドルインデックスが2022年3月以来の低さへ下げる中で、-0.87と昨年11月以来の高さへ強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は3月13日から負の相関関係で、木曜日までで-0.30と4月初旬以来の高さへ関係を弱めていたこと。

今週の主要イベント及び主要経済指標

先週も市場はトランプ大統領の関税政策に関する新たなニュースを注目し反応していましたが、水曜日のパウエル議長の発言と木曜日の欧州中央銀行の政策金利発表も重要となっていました。

今週は欧米が感謝祭の祝日から市場へ火曜日に戻りますが、引き続きトランプ大統領と中国の関税に関するニュースへ市場は注目し、経済指標としては、水曜日の主要国の製造業とサービス部門のPMI、木曜日の米耐久財受注、また金曜日のミシガン大学消費者態度指数等が重要となります。

詳細は主要経済指標(2025年4月21日~25日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

先週週英国では、トランプ大統領の関税政策と英米の交渉について、ウクライナ戦争とイスラエルとガザ地区の武装組織ハマスの停戦交渉について、英国内のニュースとしては、バーミンガム地区のごみ収集作業員のストライキについて、そして先週英国の最高裁判所が「女性」及び「性別」の法的定義について判決を下したことが大きく伝えられています。

そこで、本日はこの判決とその経緯についてお伝えしましょう。

今回の判決では、​「女性」の定義を生物学的な性別に限定し、性別認識証明書(GRC)を持つトランス女性を含まないとするものでした。

この訴訟は、女性の権利擁護団体「For Women Scotland」が提起したもので、​スコットランド政府がトランス女性を公的機関の女性枠に含めることが、平等法の趣旨に反すると主張していました。そして、最高裁は全会一致で、2010年平等法における「女性」および「性別」の定義は生物学的な性別に基づくと判断し、スコットランド政府の解釈を否定しました。

この判決により、トランス女性が女性専用のサービスや施設(例:病院の病棟、スポーツ、レイプ被害者支援センターなど)へのアクセスに制限が生じる可能性があります。​一方で、平等法における「性別再割り当て」の保護は引き続き有効であり、トランスジェンダーの人々に対する差別は禁止されています。

この判決は、女性の権利擁護団体やハリーポッターシリーズで有名な作家のJ.K.ローリング氏などからは、女性の権利と法的明確性の勝利として歓迎されました。​一方で、StonewallやScottish TransなどのLGBTQ+団体は、トランスジェンダーの権利と安全に対する重大な懸念を表明しています。

英国政府はこの判決を法的明確性の確保と女性専用空間の保護を歓迎するものとしました。そして、スコットランド政府は判決を受け入れ、その影響を精査すると表明しました。

​この判決は、イギリス全体におけるジェンダー認識と公共政策に関する今後の法的および立法的な議論に影響を与える可能性があると考えられています。

最高裁の、副裁判長のパトリック・ホッジ卿は、判決文で「この判決を、社会のあるグループの勝利であり、他のグループの犠牲であると読むべきではない。」と述べ、法的な明確性を提供するものであることを強調しました。

今後はこの判決に従って、女性専用の空間の保護の観点からも、「女性」の定義を明確にしながらも、トランスジェンダーの人々の権利と安全を守る社会の確立を目指すべきなのでしょう。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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