金市場ニュース

ニュースレター(2025年2月28日)金価格は8週ぶり調整の下げて2月上旬以来の低さへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日の午後3時の弊社チャートの金価格は、前週のLBMA PM金価格(午後3時)と比較すると、3.33%安でトロイオンスあたり2836ドルと8週ぶりの週間の下落で、2月初旬以来の水準で、週間の下げ幅としては昨年11月半ば以来の大幅なものとなっています。この間金曜日午後12時の弊社チャートの銀価格は、前週のLBMA 銀価格(午後12時)と比較して、5.44%安のトロイオンスあたり31.14ドルと2週連続の週間の下落で、やはり2月初旬以来の低さとなっています。また、今週金曜日午後2時の弊社チャートのプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から3.48%安でトロイオンスあたり942ドルと2週連続の下げで1月末以来の低さとなっています。そして、本日金曜日午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA PMパラジウム価格(午後2時)から6.60%安でトロイオンスあたり913ドルと2週連続の週間の下落で年初来の低さとなっています。

今週のの金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、金が年初からの上昇基調に調整が入る中で、世界経済の懸念からも工業用需要の割合が大きい銀、プラチナ、パラジウムは更なる下げを見せることとなりました。

金価格は前週末までで年初から10%を超えて上昇しており調整の時期であったこと、またロンドンのリースレートもトランプ政権発足以前の水準へ下げてロンドンの金地金現物の供給不足も解消されつつあること、先物市場で積み上げられていたロングポジションの減少等が、背景であるようです。

景気後退懸念は、先週金曜日のミシガン大学消費者態度指数の悪化以降、今週の米消費者信頼感指数、新築住宅販売件数、新規失業保険申請件数などが予想を下回る水準であることからですが、それに加えてトランプ政権が3月4日からメキシコとカナダへ25%の関税し、中国へも10%の関税を課すと発表したことも要因となっている模様です。

しかし、年初来からは金は未だ8%を超えて上昇しており、S&P500種が年初来の上げ幅をほぼ失っていること、ビットコインにおいては10%を超えて下げていることとは異なる未だ強いパフォーマンスといえるでしょう。そこで、今週のチャートは金(黄色)、S&P500種(青)、ビットコイン(水色)の年初来の動きを示すチャートをお届けしましょう。

年初からのドル建て金価格とS&P500種とビットコインのチャート 出典元 グーグルファイナンス

なお、本日金銀比価は92台後半と、高インフレでFRBによるさらなる利上げ観測が広がり、金銀共に価格を下げていた2022年9月以来の高さ(銀割安)となっています。

今週の金相場について

週明け月曜日金価格はロンドン時間昼過ぎに史上最高値のトロイオンスあたり2956ドルをつけた後に、利益確定の売却もありその後上げ幅を削ったものの、再び上昇して2949ドルで終えていました。

この背景は、前週の米経済データ(ミシガン大学消費者態度指数や製造業及びサービスPMI)がスタグフレーションを示している中で、金ETFへの週間の資金の流入がコロナ危機以来の速いペースとなっていたこと等からでした。

火曜日日金相場は米株価がハイテク株を中心に大きく下げる中で、トロイオンスあたり2900ドルを一時割って、一週間ぶりの低値へと下げた後に、2923ドルで終えていました。

これは、同日発表された米国の消費者信頼感は、2021年8月以来の大幅な落ち込みとなり、またトランプ政権が半導体の対中規制を強化する方針と伝えられ、エヌビディア等の半導体関連株が下げ、年初から10%を超えて上昇していた金価格にも調整が入いることとなりました。

そこで、景気停滞からFRBの利下げが年末までにこれまでの1回から2回行われる観測が広がり、ドルと長期金利が今年最低値まで下げていました。

通常ドルと長期金利の下げは、金を押し上げますが、年初来大きく上昇していたこと、金先物のロングポジションが積み重なっていたこと、また他のリスク資産の下げをカバーする現金化の動きもあった模様です。

水曜日金相場は、前日の下げを午前中の削ったものの、その後再び下げに転じて再びトロイオンスあたり2900ドルを割ったものの、2917ドルへと戻して終えていました。

この背景は前日同様に上昇を続けていた金に調整が入っていた模様ですが、ウクライナ戦争関連でトランプ米大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領の会談も金曜日に予定されていること、また週後半に米FRBがインフレ指標として注目する米個人消費支出PCEコアデフレーターが発表されることからも、そちらに注目が移っていることもあったようです。

木曜日金相場は、火曜日からの調整が続き、トロイオンスあたり2867ドルまで一時下げて2877ドルで終えていました。

この間米株価指数は、トランプ大統領がメキシコとカナダへの25%と中国への10%の関税発効を3月4日からと発表したことから、経済停滞懸念で下げ、ドルが1週間ぶりの高さに上昇し、長期金利は若干上げていました。

市場は翌日のFRBが注目するインフレ指標を待っていましたがが、同日の経済指標はまちまちの結果で、米第4四半期GDPは予想と前回同様の2.3%、インフレ(コアPCE)は予想と前回の2.5%を上回る2.7%、新規失業保険申請件数は予想と前回を上回っていました。

前日と前々日は2900ドル割れで買いが入っていましたが、同日は2900ドルを取り戻さず、さらに下げを見ることとなりました。

本日金曜日は、市場注目の米FRBが注目するインフレ指標の個人消費支出(PCE)コア・デフレーターが発表され、ほぼ予想と同じ水準であったものの、この指標の影響は限定的で、今週の調整の動きが続いているようで、金相場はトロイオンスあたり2841ドルと2月初旬の低さへと下げて推移しています。

このインフレ指標は、前月比0.3%と予想と同じでしたが前回0.2%からは上昇し、前年同月比は2.6%と予想と同水準でしたが、前回修正値の2.8%を下回っていました。そこで、インフレのペースは落ちているとい判断で、FRBの利下げ観測が広がり、長期金利は若干下げて推移しています。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週末に2月18日までのデータが発表されて、米国の大統領の日の祝日明けの火曜日までの一週間に、トランプ政権の関税政策とそれによる経済への悪影響への懸念で金価格が上昇していた際に、金と銀とプラチナは強気ポジションを前週比減少させ、銀は全く変わらず、パラジウムはこのポジションを増加させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、6.3%減で628トンと4週連続で減少していたこと。価格は1.1%高でトロイオンスあたり2927ドルと火曜日のLBMA価格においては前週に続き新高値を付け、建玉は0.4%高と11月12日の週以来の高さとなっていたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週と全く変わらず2353トンと昨年2月末以来の低さを保っていたこと。価格は前週比2.3%高で、トロイオンスあたり32.46ドルと上昇して11月5日の週以来の高さとなっていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングで、7.7%減で30.4トンと11月5日の週以来の高さから減少していたこと。価格は前週比0.5%安でトロイオンスあたり982ドルへ下げていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに10.9%減で22.1トンと減少していたこと。価格は0.4%安でトロイオンスあたり979ドルと2週連続で11月26日の週以来の高さから下げていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに1.7トン(2.4%)増加して906.10トンと、2週連続で週間の増加傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに2.58トン(0.6%)増で401.86トンと2023年11月初旬以来の大きさで、5週連続の増加傾向で、1月2日以来の高さとなっていたこと。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに77.87トン(0.5%)増で13,613.21トンと週間の増加傾向であること。
  • 金銀比価は、今週90台半ばで始まり、本日は92台後半に上昇し、2022年11月以来の高さに上昇して終える傾向。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1972ドルとほぼ過去最高の水準で始まり、木曜日に1934ドルへ下げて終える傾向。2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は2月6日からプレミアムで、今週7ドルのプレミアムで始まり、昨日43ドルと昨年8月初旬以来の高さへ上昇後に本日32ドルへ下げて終える傾向。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、今週の平均は人民元金価格が史上最高値から下げる中で、火曜日と水曜日にディスカウントに転じたもののその後プレミアムとなり、1.18ドルと前週の5.02ドルの1月半ば以来の高さから下げていたこと。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプレミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週木曜日までに週間で、金は3.8%減で2週連続で1月最終週以来の高さから下げ、銀は12.4%増で昨年11月末の週以来の高さへ上昇し、プラチナは10.9%増で昨年11月下旬以来の高さへ増加し、パラジウムは36.6%増で昨年2月中旬の週以来の高さとなっていたこと。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は1月21日から負の相関関係で本日-0.33と週間ではその関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は1月23日から負の関係で、本日-0.72と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は1月21日から正の関係で、木曜日までで0.06と前週から関係を弱めていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週金価格は、本日金曜日の米FRBがインフレ指標として注目する個人消費支出(PCE)コア・デフレーターを待つ中で、火曜日以降調整の下げを見せていました。

来週は米雇用関連データが発表され、金曜日の米非農業部門雇用者数、失業率、平均時給等の雇用統計が重要となりますが、水曜日のADP雇用統計や木曜日の新規失業保険申請件数へも市場は注目することとなります。そして、木曜日の欧州中央銀行の政策金利発表とそれに影響を与える可能性もある月曜日のユーロ圏の消費者物価指数も重要となります。

詳細は主要経済指標(2025年3月3日~7日をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週、英国のメディアは、ウクライナ戦争およびトランプ前大統領の関税政策をめぐり、ワシントンを訪問中のマクロン仏大統領、スターマー英首相、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の動向を大きく報じています。加えて、英国政府が2027年までに国防費をGDP比2.5%へ引き上げるとともに、財源確保のため国際援助を40%削減する決定も、トップニュースとして伝えられています。

本日は、この英国の国防費増額に関するニュースを整理してみましょう。

現在、英国の国防費はGDP比2.3%ですが、これを2.5%へ引き上げる方針は、前保守党政権のマニフェストにも盛り込まれており、ロシアのウクライナ侵攻以降、必要不可欠との認識が広がっていました。しかし、具体的な実施時期については、労働党政権は明確にしていなかったため、野党・保守党から追及を受けていました。そうした中、今週のトランプ前大統領との会談を前に、政府はこのロードマップを発表しました。

国防費のGDP比に関しては、2024年時点で米国が3.4%を超えており、トランプ前大統領は第1期政権時から北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、軍事費の増額を強く要求していました。NATO諸国の国防費は、2024年の平均で2%程度ですが、トランプ氏は5%への引き上げを求めています。

ロシアと国境を接するポーランドやエストニアは近年、急速に国防費を増額し、それぞれGDP比4.1%と3.4%に達しています。英国も2029年以降に3%への引き上げを視野に入れていることを示唆しています。

もちろん、国防費の増額には財源が必要となります。英国政府は、この費用を捻出するため、国際援助費を40%削減する方針を打ち出しました。これに対し、英国メディアは強く批判していないものの、国際援助関連のチャリティー団体は強く反発し、本日、英国の国際開発相であるアネリース・ドッズ氏が政府の決定に抗議して辞任しました。

また、たった今、ワシントンで行われたゼレンスキー大統領とトランプ前大統領の会談前の記者会見では、ウクライナ戦争終結に向けた方針の違いが鮮明になったことが伝えられています。

欧州諸国にとって、ロシアのウクライナ侵攻は決して遠い国の問題ではなく、当面の間は国防費を増額し、ロシアの脅威に備える以外の選択肢がないというのが、大方の世論のようです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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