ニュースレター(2024年8月2日)重要イベントと指標を消化して金価格は史上最高値へ近づく
週間市場ウォッチ
金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から3.4%高でトロイオンスあたり2468ドルと2週ぶりの週間の上昇で、金曜日価格としては史上最高値となっています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から4.4%高のトロイオンスあたり28.97ドルと2週ぶりの週間の上げとなっています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から3.9%高のトロイオンスあたり972ドルと3週ぶりの上げとなっています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から0.3%安でトロイオンスあたり905ドルと4週連続の週間の下げで引き続き6月半ば以来の低さとなっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週は日本銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)とイングランド銀行の金融政策発表があり、本日米雇用統計と重要イベントと指標が続くこととなりました。そこで、①日銀の利下げ、②FRBによる9月利下げ示唆、③米雇用統計を含む米経済指標が米景気停滞を示唆したことで、FRBによる利下げ観測が、FOMCメンバーが予想する年一回から、年4回へと一気に進み、ドル安、長期金利安(米長期国債価格上昇)からも金価格を7月17日につけたドル建てで史上最高値へ6ドルほどの2477ドルまで押し上げることとなりました。
また、イスラエルとイランやレバノンとの紛争の拡大による中東の地政学リスクの高まりも金価格をサポートしていました。
しかし、日米金利差が狭まる観測で円高が進み本日日経平均が歴代2番目の下げ幅を記録し、米景気停滞懸念による米株が昨日と今日続落することで、金は本日夕方に利益確定と現金化からも上げ幅を50ドル近く大きく削っています。
本日は、市場のFRBの年末の政策金利予想(青色)が昨日から大きく下げる中、金価格(深緑色)が上昇していることが分かるチャートをお届けしましょう。赤色のドットは今年6月時点のFOMCメンバーによる年末の金利予想で、市場予想が大きく乖離していることが分かります。
銀とプラチナは工業用途が多い中、金と共に上昇をしているものの、パラジウムは世界景気停滞懸念からも下げ幅を多少ながら広げることとなっています。
今週の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、ドルと長期金利が若干下げる中で、トロイオンスあたり2381ドルへと上昇していました。
この間米株価は全般下げて、翌日から始まるFOMCを前に、政策金利は据え置きの観測ですが、タカ派的声明文の内容やパウエルFRB議長の発言の警戒感からも利益確定の売却が起きていた模様です。
火曜日金相場は、翌日の日銀とFOMCの結果を待つ中、トロイオンスあたり2409ドルと前日終値から上昇して終えていました。
これは、前日上昇していたドルと長期金利が、イスラエルがイランのゴラン高原でのロケット弾攻撃への報復を宣言したことから、紛争激化への警戒からも、若干下げていたことが背景となりました。
なお、同日発表された第2四半期の金の需給レポートでは、前年同期比6%下げて929トンとなっていたものの、宝飾品需要以外は中銀需要が前年同期比19%増等と堅調であったことが明らかとなっていたのは、金投資のセンチメントをサポートしていた模様です。
ちなみに、FRBが注目する米雇用動態調査(JOLT)求人件数は、予想を上回り、米消費者信頼感指数も予想を若干上回っていましたが、影響は限定的であったようです。
水曜日金相場は、ドルと長期金利が下げる中、トロイオンスあたり2425ドルへ上昇して推移しています。
まず同日は日本銀行が事前に日経新聞等で伝えらえていた0〜0.1%としていた政策金利0.25%に引き上げ、国債買い入れ額を現在の月6兆円程度から2026年1〜3月に同3兆円に減らす方針も発表していました。これを受けて円が今年4月以来の円高へと強含むことで、ドルが相対的に下げることとなりました。
そして、米ADP全国雇用者数も予想を下回り、FRBの近い将来(9月)の利下げ観測が広がったことも、金をサポートすることとなりました。
なお、イスラエルがイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏を殺害したこと、またレバノン首都ベイルートへ攻撃してシーア派勢力のヒズボラ幹部を殺害したことが伝えられ、紛争が中東全体に広がる警戒感も、安全資産としての金の需要を高めていたようです。
しかし、円建て金相場は、円が対ドル強含みgあたり11707円へと下げていました。
木曜日金相場は、金相場は、ドルが下げ、長期金利が4%を割って下げる中で、トロイオンスあたり2445ドルへと上昇して終えていました。
ちなみに、前日はLBMAの月末価格では史上最高値の2426ドルをつけ、同日は金先物価格では、取引の中心が12月物に移行したこともあり一時2500ドルと史上最高値をつけていました。
この背景は、同日発表された米新規失業保険申請件数は予想を上回って11か月ぶりの高さで、ISM製造業景況指数も昨年11月以来の低さで、掲載の拡大と縮小の分岐点の50を4か月連続で下回ったこと、そして第2四半期単位労働コストが予想を下回るなど、米経済の停滞が示唆されるものとなっていました。
そこで、米株価指数が大きく下げる中、7月末の株価急落時に現金化が進み金は下げていましたが、今回はリスクオフの需要で上昇することとなりました。
同日は、イングランド銀行が5対4ではありましたが、0.25%の利下げを行いましたが、ほぼ想定内で、市場への影響は限定的となりました。
前日のイスラエルとイラン、レバノンとの地政学リスク高まりは、イランが報復を宣言したことで高まっており、金のサポートとなっていた模様です。
本日金相場は、注目の米雇用統計が予想を下回り、前日の指標の弱さからも、FRBによる利下げ観測が一気に広がっており、金相場は一時史上最高値まで10ドルほどの2472ドルまで上昇し、上げ幅を削って2428ドルまで下げて推移しています。
米雇用統計では、非農業部門雇用者数が11.4万人と予想の17.5万人、前回修正値の17.9万人も大きく下回っていました。そして、失業率も前回と予想の4.1%を上回る4.3%と3ヶ月連続の上昇、平均時給も前月比0.2%と前年同月比3.6%と予想を下回り、労働市場のひっ迫が緩和されていることが示唆されていました。
そこで、FRBによる9月の0.5%の利下げが70%へと急上昇し、年末までの利下げ回数が4回へと一気に増えて、ドルが3月半ば以来の低さ、米長期金利は昨年7月以来の低さへと下げています。
金相場が上げ幅を削っているのは、米株価が急落しており、7月末のように現金化が進んでいるようです。
ちなみに、日本円建て金相場は本日も円が対ドル年初来の水準へ強含んだことで、gあたり11442円と5月初旬以来の低さへ下げています。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週末に7月23日までの一週間データが発表され、インド政府が金への関税を15%から6%と11年ぶりの低さへ引き下げることが伝えられる中、金価格が若干上昇していた際にすべての貴金属で強気ポジションが減少していたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、10%減で617トンと前週の2020年3月10日以来の高さから下げていたこと。価格は1.6%安でトロイオンスあたり2403ドルと前週の火曜日のLBMA価格での史上最高値から下げていたこと。建玉は4.7%減で2週連続で2020年9月末以来の高さから減少していたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週38%減で4013トンと前週の2022年3月29日以来の高さから下げていたこと。価格は前週10.1%安で、トロイオンスあたり27.76ドルと5月7日以来の低さとなっていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、5月7日の週以来ネットロングで、94%減少して1.4トン、4月6日以来の高さから大きく減少していたこと。価格は前週3.3%安と3週連続下げてトロイオンスあたり950ドルと4月30日以来の低さとなっていたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、29%増と2週連続で増加して6月25日の週以来の高さで45.2トンとなっていたこと。価格は3.0%安でトロイオンスあたり911ドルと3週連続で下げて6月18日以来の低さとなっていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までで、週間としては2.3トン(0.30%)増で845.47トンと前日の2月6日以来の高さからは若干下げているものの、5週連続の週間の増加傾向となっていること。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで週間で0.53トン(0.14%)増で381.98トンと5月29日以来の高さで、4週連続の週間の増加傾向であること。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で2.85トン(0.02%)減で14,337.51トンと、前日の昨年3月初旬以来の高さからは下げて、2週ぶりの週間の減少傾向であること。
- 金銀比価は、今週85台前半で始まり、週半ばに84台へ下げたものの、本日金曜日85前半の高さに上昇して終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、1446ドルで始まり、本日金曜日に1485ドルと記録が始まった1990年3月末以来の過去最高の水準へ上昇して終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは5月8日からプレミアムに転換し、今週40ドルで始まり、金曜日は62ドルへと6月末以来の高さへ上昇して終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
- 上海黄金交易所(SGE)の金のプレミアムは、今週の平均が2.21ドルと、前週の4.42ドルから下げて、中国がコロナ危機のロックダウン下で2022年6月半ば以来の低さとなっていたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は今週木曜日までで、前週平均比で、金は19%減で3週ぶりの低さ、銀は12%減で2週ぶりの低さ、プラチナは18%減で1月末以来の低さ、パラジウムは10%増で3週ぶりの高さであること。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は6月27日から負の相関関係で-0.74と週間では負の関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は7月5日から負の関係へ転換し、-0.53と前週から関係を弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は7月3日から正の関係であるものの木曜日までに0.10へと関係を弱めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は水曜日の日銀及びFOMC後の政策発表、そして木曜日のイングランド銀行、金曜日の米雇用統計が発表される等、重要イベントと指標が続きました。
来週は比較的このような重要イベントや指標はありませんが、月曜日の主要国のサービス部門のPMI、米ISM非製造業景況指数等が重要となり、水曜日の中国貿易収支、木曜日の米新規失業保険申請件数等とFRBの高官のコメント等に市場は注目することとなります。
詳細は主要経済指標(2024年8月5日~9日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年7月29日~8月2日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年8月5日~9日)来週の予定をまとめています。
- インドの金需要、輸入関税引き下げショックで「15~40%増 」
- 金貨と金地金:ドイツは売り、中国とインドは買い
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
現在は日本に入っていますので、ロンドン便りはお休みさせていただきます。