金市場ニュース

インドの金需要、輸入関税引き下げショックで「15~40%増 」

金密輸の急増、記録的な世界指標との価格差後のサプライズとなる。
 
インド政府は、金と銀の輸入関税を引き下げ、貴金属の第二の消費市場であるインドにおいて、密輸業者へのインセンティブを半減させ、インドルピー建て金価格が記録的な高値から下落する中、この秋の祝祭と結婚式の需要に対する業界の予測を押し上げることとなった。
 
先週、ニルマラ・シタラマン財務大臣が新たな税制簡素化の一環として発表したこの驚くべき動きは、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP)政権によって、 インドの地金と宝飾品業界による10年にわたる税率引き下げのロビー活動何度も実施されていなかったが、6月に再選されたものの、単独過半数は得られなかった後に行われた。
 
金銀地金の輸入関税は15%から6%に引き下げられたが、インドの輸入関税の高さは、密輸の急増や、未精製の鉱石や金メッキのプラチナを利用した貿易協定や税制優遇措置の悪用の増加の原因になっていると非難されていた。
 
このような「非公式」な資金流入は、インドにおける金価格と世界の貴金属取引と保管の中心であるロンドンの金価格で世界指標とされる価格を比較し、さらに3%の一般消費税と15%の輸入関税を加味したところ、鉱業業界のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)がまとめて公表している数値において、2015年以降インドの金はほぼ途絶えることなく公式な相場より割安で取引されているディスカウントとなっていた。
 
このディスカウントは、インド政府の予想していない動きである税率引き下げの1週間前に 記録的な110ドルを記録し、2012年からのWGCのデータでは過去最大となっていた。
 
貴金属専門アナリストのMetals Focusは、 税率引き下げ前のディスカウントをトロイオンスあたり70-80ドルとしており、一方報道機関のロイターは65ドルとするなど、この6ヶ月で最も深いディスカウントとなっていた。
 
インドの世界指標との金価格の差 出典元 ワールドゴールドカウンシル(2021年から2024年の月間平均)とMetals Focus(過去12か月の日々の価格差)
 
The Week誌は、「インドは、急成長するサハラ砂漠を横断する金密輸を行うスーダンのシンジケートの拠点となっている」と述べ、アフリカ第3位、世界第10位の金採掘国であると推定される 戦争下のスーダンからの金塊が、アラブ首長国連邦からインドに飛来したり、ネパールから金粉やペーストを皮膚につけ、金カプセルを飲み込んだり、体腔に隠したりして国境を越える女性のクルビス(「スズメ」を意味する、人間の運び屋の俗語)によって密輸されていることを報じている。
 
その他の密輸ルートとしては、スリランカ北部と南東部のタミル・ナードゥ州間を航行する漁船、ミャンマーとの自由移動国境、UAEからのフライトなどがある。
 
ケララ州にあるUAE領事館の職員は、2019年から2020年にかけて外交官用バッグを使ってインドに約100kgの金を密輸したとして告発された27人のうちの1人である。
 
インドの歳入情報局(Directorate of Revenue Intelligence)の 「無駄のない」スタッフによる活動により、2022-2023会計年度における国の違法な金の押収量は4トンに達し、過去2年間の合計とほぼ同じであり、2019-2020年のコロナ危機以前の年を10%上回ることとなった。
 
また、2022年2月に署名されたインドのUAEとの包括的経済連携協定(CEPA)は、プラチナ地金の輸入にわずか5%の関税率が課され、2%のプラチナを含むだけで、その資格を得ることができることを意味していた。
 
この抜け穴により、7月上旬までのわずか4週間で 13トンの プラチナ 地金がインド洋を渡り、ディーラーがプラチナメッキされた金を輸入したため、2023年の通年の総額を上回ることとなった。
 
金地金と半精製鉱石の輸入関税の差は、2010年代後半にインド国内の地金精錬業界を活性化させる試みが頓挫し、 莫大な生産能力が過剰になった後、インド政府によってすでに均等化されていた。しかし、ワールド・ゴールド・カウンシルのMetals Focusがまとめたデータでは、鉱石は2021年から2023年の地金流入総量の28%近くを占めており、2012年から2014年の5%未満から増加している。
 
合計すると、昨年のインドの金地金輸入総量805トンのうち、約150トンが「非公式」であり、「不透明」とも呼ばれる流入であったとコンサルタント会社は述べている。
 
コルカタに拠点を持つJJ Gold Houseの卸業者のオーナーであるHarshad Ajmera氏は、「税率の引き下げと世界指標の調整もあり、金価格が下げている」と述べ、「多くの価格の下げを待っていたバイヤーが購入している。」と続けている。
 
「歴史的に金価格が下げた際に、消費者の金購入への熱は高まる傾向がある」とコルカタに本社を置く8億8000万ドルの株式市場に上場している宝飾業者Senco Gold LtdのCEOであるSuvankar Sen氏と同意している。過去最高値を更新した金相場を前に、今年初めにインドの消費者の需要が落ち込んだ後、秋の重要なお祭りであるディワリ祭と結婚式のシーズンを前に、「金相場の下落により、 売上が10-15%上昇すると予想している」と述べている。
 
Senco Gold (NSE: SENCO)の株価は、先週火曜日のシタラマン財務相の発表で10%近く跳ね上がったが、その後反落している一方で、360億ドルの価値を持つ市場リーダーのTitan (NSE: TITAN)は5%高を維持し、70億ドルのKalyan (NSE: KALYANKJIL)は発表前の水準より8%高い水準で取引されている。
 
「インドの宝飾品需要は、記録的な金価格の高騰によって打撃を受けたが、今回の関税引き下げは、金価格の上昇を抑えるだろう。
 
 「インドの宝飾需要は、記録的な金価格の高騰によって打撃を受けたが、関税の引き下げによって価格が下がり、消費を押し上げるだろう」と、西部の都市プネにある非上場宝飾店PNGの会長Saurabh Gadgil氏は述べている。
 
国内金価格の急落は、既存の在庫がルピー建てで価値を失ったことを意味するが、小売業者は、その結果消費者の需要が急増することで、その下落を相殺する以上になると予想しているとMetals Focusは述べている。
 
「ほとんどの小売業者は、現在の水準から30-40%の需要増を見込んでいる。」

 

ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュ、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ