ニュースレター(2022年7月1日)速いペースの利上げ観測で金価格は3週連続の下げへ
今週まで日本に一時帰国していますので、英国からのニュースはお休みさせていただいています。来週からは通常通りお届けします。
週間市場ウォッチ
今週水曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1797ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.53%安と、3週連続の下げでほぼ7週ぶりの低さとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から5.37%安でトロイオンスあたり19.74ドルと5週連続の下げで2020年7月以来の低さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から4.17%安のトロイオンスあたり873ドルと4週連続の下げで2020年11月以来の低さとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は2.94%高のトロイオンスあたり1861ドルと2週連続の上昇となっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属はパラジウムを除き、大きく下げることとなりました。これは、主要中央銀行による速いペースの利上げ観測が広がることによる、ドルインデックスが20年来の高さへ上昇していることが背景となっているようです。
そのような中で、パラジウムが堅固な動きをしているのは、ロシアが4割の産出国であること、そして、今週新たに貴金属現物の最大市場である英国がロシアのパラジウム産出で最大大手のNorilskへの経済制裁を発表したことで、供給不足懸念も広がっている模様です。
また、今週木曜日は第4四半期と上半期の最終日でポジション調整が行われていたようですが、金ETFの最大及び第2規模のSPDRゴールドシェアとiShareゴールドは前月に続き残高を月間で減少させるなど、金からの資金流出が続いていることが明らかとなっています。
しかしながら、上半期の主要米株価指数と貴金属のパフォーマンスを見てみると、下記のように株価が大きく下げる中で、ドル建て金価格はほぼ年初から横ばい、円建て金価格は対ドル円安が進んでいるために大幅な上昇等、堅固な動きをしていることも見られています。
ダウ30種平均株価指数 | 15.3%減 (1962年以来の下げ幅) |
S&P500種 | 20.6%減 (1970年来の下げ幅) |
ナスダック総合 | 29.5%減 (過去最大) |
ドル建て金 | 0.2%減 |
円建て金* | 16.6%増 |
銀 | 11.6%減 |
プラチナ | 5.7%減 |
パラジウム | 2.1%減 |
*注 貴金属は円建て金価格以外はLBMA価格を元に算出。円建ては金価格はLBMA価格で公表されていないために弊社チャートの価格で算出。
日々の金相場の動きと背景について
月曜日金市場では週末にG7で検討するとされたロシア産金地金輸入禁止のニュースを受けて、アジア時間からロンドン昼過ぎまで金相場は上昇していたものの、ロンドン時間昼過ぎ以降にその上げ幅を失い、トロイオンスあたり1823ドルで終えていました。
これは、欧州連合がその実施に躊躇していることが伝えられ、またすでに西側への輸入は、業界が3月にロシア産の新たな金を取引対象から外すことで激減していることからも、その影響は限定的という意見もあり、長期金利が上昇に転じたことからも、金は押し下げられることとなりました。
また、同日発表された米経済指標が良好でリスクオン基調となったことも、金にとってはネガティブとなりました。
火曜日金相場は、ロンドン時間午後に長期金利が上昇し、米株価指数が反発で始まる中で、トロイオンスあたり1818ドルへと下げて終えていました。
株価は中国政府が入国時の隔離期間短縮等のCovid-19感染防止の水際対策を緩和したことが好感されたことからで、中国の需要増加観測で原油を含むコモディティ価格が上昇していました。
そして、同日ウィリアムズNY連銀総裁が政策金利が年末までに3~3.5%の水準に上昇する必要があると述べたことが伝えられて長期金利を押し上げるものとなりました。
その後米経済指標の消費者信頼感指数が予想を大きく下回り、米株価指数は反転下げて終えていました。
水曜日金相場は、トロイオンスあたり1819ドルとほぼ前日の終値の水準で終えていました。
同日市場注目のECB年次フォーラムでは、パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、ベイリーBOE総裁が、インフレが高止まりする可能性、そのために利上げを進める必要があり、多少の景気後退は高インフレを抑え込むためには止む終えないというコメントを発し、高インフレ継続観測は金にとってサポートではあるものの、ドルが強含んだことが金の頭を抑えることとなりました。
木曜日金相場は、株価が全般大きく下げる中で、長期金利とドルインデクスは下げていたものの現金化が進み、トロイオンスあたり1806ドルと6月14日以来の低さへと下げて終えていました。
株価が下げていたのは同日発表したFRBが物価の指標として重視するPCE物価指数が前年同月比6.3%と伸び率は4月から横ばいだったものの、前月比で0.6%上昇と前月の0.2%を上回り、高インフレ懸念が広がり、米中銀の利上げペースが加速する懸念が広がった模様です。
また、同日は四半期、上半期の最終日でポジション整理が進み、金は売られていたようです。
本日金曜日金相場は、長期金利が1月ぶりの低さへ下げる中で、ドルが20年来の高さへ上昇したことで、トロイオンスあたり1800ドルを一時割るなど、5月半ば以来の低さへ下げています。
これは、今週のFRB高官のコメント等からもFRBによる速いペースの利上げ観測が広がっていることが背景にありますが、それに加え、世界第2金消費国のインドが金への関税率を引き上げたこともセンチメントを悪化させている模様です。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週21日火曜日に、ロンドン時間に上昇していた貴金属価格が、日本円が対ドル24年ぶりの低さへ下げ、ドルインデックスが20年ぶり、長期国債利回りが11年ぶりの高さへ上昇する中で、押し下げられ、パラジウムを除く貴金属は強気ポジションを増加させていたこと。
- コメックス金の先物・オプションのネットポジションは25%増の192トンと前週の2021年9月28日の週以来の低さから増加していたこと。この間LBMA PM金価格は前々週比1.2%高。建玉においては、前週比0.5%減。
- コメックス銀の先物・オプションのネットポジションは、333%増で1,214トンと5月3日の週以来の高さ。この間LBMA銀価格は2%高。
- コメックスのプラチナ先物・オプションは、2週連続のネットショートで、そのポジションは20%減の6.3トン。LBMA PMプラチナ価格は3.4%安。
- コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは13週連続でネットショートで、5.8%増の8.6トンと1月18日の週以来の大きさ。この間LBMA PM価格は4.1%高。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに10.7トン(1.0%)減で1050.31トンと3月3日の週以来の低さで、2週連続の週間の減少傾向であること。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.8トン(0.35%)減で510トンと、3月11日の週以来の低さで、5週連続の残高減少傾向であること。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに40トン(0.24%)減の16,817トンと、2月4日の週以来の低さで、8週連続の減少傾向となっていること。
- 金銀比価は、今週85台で始まって本日90台と前日の97は2020年7月以来の高さへ上昇。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、900ドル前半で始まり、週半ばで800代後半へ下げたものの、木曜日1000ドルを超えて2020年8月以来の高さへ上昇し、本日は900台前半へ下げていること。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、今週1000ドル前後で始まり、昨日1066と5月半ば以来の高さへ上昇後、本日1017へ下げていること。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。年初は1000ドルほど。
- 上海黄金交易所(SGE)の木曜日までの週平均は、前週の3.04ドルのプレミアムから今週は4.18ドルと2月11日の週以来の高さへ上昇。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
- コメックスの先物・オプションの取引量は、価格が全般下げる中でパラジウムを除く減少し、パラジウムは4週ぶりの高さ。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週も金相場は金融市場に反応する形で緩やかに下げながらもレンジ内で動いていますが、来週は米雇用統計が金曜日、その先行指標のADP雇用統計が水曜日に発表され、市場は注目することとなります。
その他、月曜日のユーロ圏卸売物価指数、火曜日の主要国のサービス部門PMI、水曜日の米サービス部門PMIとISM非製造業景況指数なども重要となります。
詳細は主要経済指標(2022年7月4日~8日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
ブリオンボールトは5月20日から大英図書館で始まる「金(Gold)」のエキジビションのスポンサーをさせていただいています。ご興味があれば下記のリンクでご覧ください。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2022年6月27日~7月1日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2022年7月4日~8日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2022年6月27日)金価格は上昇、しかしG7のロシア産金地金輸入禁止は「影響は限定的」と指摘
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週は日本に一時帰国していますので、お休みさせていただきます。