金価格ディリーレポート(2022年6月27日)金価格は上昇、しかしG7のロシア産金地金輸入禁止は「影響は限定的」と指摘 月曜日, 6/27/2022 15:51 金相場は月曜日アジア時間に上昇したものの、5月中旬以来の低値となった前週終値まで下落することとなりました。 これは、G7の4カ国の首脳が、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁強化の一環として、ロシア産金地金の輸入を禁止する計画を発表する中でのことでした。 この間、欧州連合(EU)は、ロシア産金地金輸入禁止に対し より「慎重」な反応を示し、またロシア産原油輸入の禁止による地域内経済への影響への懸念を表明していました。欧州連合による制裁は今年末まで延期され、天然ガスの輸入は継続される事となっています。 なお、先の制裁はすでに輸出されたロシア産の金地金は除外されます。 金現物価格は、ロンドン時間早朝に最大0.8%上昇しトロイオンスあたり1841ドルとなりましたが、ロンドン昼過ぎにはその上昇分をほぼ失うこととなりました。これは、先週金相場が2週連続の下げ、そして5月14日以来の低い週の終値を記録した後のことでした。 ユーロ建て金価格と 英国ポンド建て金価格は共に0.7%上昇し、それぞれ1742ユーロと1499ポンドに達した後、反落していました。 ある派生商品のアナリストは、「G7がロシアの金の輸入禁止を計画したことで、アジア(取引)時間に短期的なサポートとなったようだ」と述べていました。 「金はロシアにとって 数百億ドルを稼ぐ主要輸出品である」と、週末にドイツで開催されたG7サミットでバイデン米国大統領が宣言し、ホワイトハウスによると、ロシアにとって貴金属はエネルギーに次ぐもので、2020年には世界の 金の総輸出の5%を占める190億ドル近くに達するとされています。 しかし、スイスの銀行Julius BaerのアナリストのCasten Menkeは、ロシアからの金の輸出は、「戦争が始まって以来、すでにルートが変更されています」と言い、「西ではなく、 東に流れています。」と述べていました。 3月に、世界の金地金取引と保管の中心であるロンドン市場で受け入れられるグッドデリバリーリストから、 全てのロシアの金精製業者が停止されたことを受け、「これは、西側世界の金市場参加者からの自己制裁を反映している」と述べていました。 2021年の合計264トンのロシアからの英国への金輸入は、1月と2月にかけてほぼ37トンに達したものの、3月にはゼロに沈み、4月の公式データではわずか75キログラムを示したのみとなっていました。 しかしながら、「金市場に対する禁止措置の影響は非常に限定的であろう」とMenke氏は述べています。 欧州理事会のCharles Michel議長は、「我々は、より詳細に議論し、ロシア経済を標的とする方法で、かつ我々自身を標的としない方法で、 金を標的とすることが可能かどうかを検討する用意がある」と述べていました。 「現状を見ると、ロシア政府が自国で産出した金地金を戦費に充てることを計画したとしても驚くべきことではないでしょう。実際にロシア国内銀行の金準備は、2月と3月で11.4トン減少している。」と、証券会社のStone XのRhona O'Connell氏は述べていました。 EUはまた、米国がロシアのエネルギー収入を制限するために、原油価格の上限や「例外」を求めることに難色を示しているとのことです。 月曜の朝、原油価格は小幅に下落し、金曜の反騰を多少ながら失っていました。 米国債の10年物利回り(政府機関や多くの金融機関、企業の借入コストの基準金利)も先週の下げ幅を少し戻し、4ベーシスポイント高い3.17%で取引されていました。 サンフランシスコ連邦準備銀行のメアリー・デイリー総裁(2022年のFOMCの投票権を持たない)は金曜日、過去40年間で最も速いペースで年率8%を超えているインフレに対処するため、7月にもう 75ベーシスポイントの利上げが必要になりそうだと述べた。 セントルイス連銀のFOMCの投票権を持つFRBメンバー、ジェームス・ブラード総裁も、将来の急な利上げを避け、景気後退のリスクを回避するには、 緊急かつ急速な利上げが最善の方法であると述べた。 ロシアは今日、1億ドルの利払いの「猶予期間」が26日に終了することとなり、ソビエト革命の最中の1918年以来初めて対外債務不履行に陥ることとなりました。しかし、ロシア政府は、いかなる支払義務も履行する資金が存在すると主張し、デフォルトの指定に反対する構えとなっています。 一方、欧州の株式市場は先週の上昇幅を更に拡大し、中国が最新のCovid-19規制をさらに緩和したことでアジア市場が上昇したことに続き、MSCIワールドインデックスの2022年の年初からの下げ幅を18.9%に縮小していました。 先週、英国経由で4月にスイスに輸入されたと見られる3トンの ロシアの金塊をめぐる混乱は、スイスの税関が「原産地」を記録する方法によるもので、ロシア産の金地金は年代やその間の場所に関係なくロシア産の金地金として記録されていたことが原因であった可能性が高いとのことです。