金市場ニュース

ニュースレター(2022年12月23日)日銀のサプライズ金融引締めを経て金は1800ドルへ戻す

私は本日でクリスマスと年末の休暇に入りますので、来週のニュースレターはこの一年の貴金属の動きのまとめをお届けします。

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1794ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.07%高と若干ながら週間の上昇となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から3.99%高のトロイオンスあたり23.74ドルと週間の上昇となっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から2.28%高のトロイオンスあたり1020ドルと週間の上昇となっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は1.65%安のトロイオンスあたり1701ドルと週間の下落となっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属市場は、火曜日に日銀の実質量的緩和引き締めとなる長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げたことで円が強含み、ドルが相対的に下げたことで全般大きく上昇することとなりました。

その後、発表された経済指標が、米経済が堅調なものであることを示すもので、FRBの金融引き締めが長期化する観測が広がり、今週の上げ幅を金においてはほぼ失って終える傾向となっています。

しかし、工業用途の高い銀とプラチナにおいては、近い将来の景気減速で頭を抑えられていたことからも、上げ幅をほぼ維持して推移しています。

パラジウムに関しては、中国の新型コロナウィルス感染の拡大からも中国経済への懸念と需要減観測もあり、下げ幅を拡大しています。

今週のチャートとしては、日本円が強含んだことで、主要通貨建てで唯一週間の下げを記録し、9月末以来の水準へ下げている日本円建て金相場のチャートを添付します。

年初からの上げ幅は今週の動きで多少削られていますが、LBMA価格(午後3時)ベースで13%高と他の主要通貨建ての米ドルの1%安、ポンド建ての11%高、ユーロ建ての5%を上回っています。

1年間の日本円建て金相場のチャート 出典元 ブリオンボールト

日々の金相場の動きと背景について

週明け月曜日金相場は前週の重要指標とイベントを消化する中で、欧米市場参加者はクリスマス休暇に入り薄商いの中でトロイオンスあたり1790ドルを挟んだ狭いレンジでの動きで1786ドルで終えていました。

火曜日金相場は、日銀のサプライズにより、円高ドル安からも、トロイオンスあたり1820ドルと前週達した6月以来の高さで前週終値から1.5%まで一時上昇し、1818ドルで終えていました。

この日銀のサプライズとは、実質緩和引き締めの長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げたことで、円が対ドル4.6%急騰してドルを相対的に下げたことでドル建て金を押し上げていました。

そこで、日本円建て金はgあたり7674円と前週終値比2.5%下げて9月末以来の低値をつけていました。

水曜日金相場は、薄商いで重要指標もない中で、前日の上昇分を維持してトロイオンスあたり1818ドルで終えていました。

木曜日金相場は、主要米国指標が予想を上回る良好なものであったことで、FRBの利上げ減速観測が後退し、トロイオンスあたり1791ドルと今週の上げ幅を失って終えることとなりました。

同日発表された指標は、米国第3四半期GDPが予想の2.9%を上回る3.2%で、新規失業保険申請件数は21.6万件と予想の22.2万件を下回っていました。

そこで、ドルインデックスが前日から0.3%上昇し、今週の日銀の実質緩和引き締めによるドル安をほぼ取り戻していました。

また、同日は欧米株価が全般下げたことで、金が高い水準であったことからも換金の売りがあったとも分析されています。

本日金曜日金相場は、市場注目のFRBがインフレ指標として注目する米個人消費支出PCEコア・デフレーターが発表を経て、トロイオンスあたり1801ドルと心理的節目の1800ドルを取り戻してロンドン午後に推移しています。

11月の米インフレデータは市場予想の前年同月比4.7%と同じ4.7%で、前月比も予想と同じ0.2%とインフレが緩やかながらも沈静化していることが明らかとなっています。

しかし、米耐久材受注は、輸送用機器を除くと0.2%と予想の0.0%を上回っており、FRBの金融引締が長期化する見方からも株式市場は下げており、米長期金利は上昇しています。

そのような中、ドルがデータ発表後の上げ幅を失って若干下げていることが金を支えている模様です。

一週間のドル建て金相場のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス


  • 先週末に発表された前週火曜日のコメックスの先物とオプションのポジションは、予想を下回る米消費者物価指数が発表されてFRBによる利上げ減速の観測が広がる中で、全ての貴金属で強気ポジションが増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションのネットポジションは5週連続でネットロングで、50%増の176トンと増加していたこと。この間LBMA PM金価格は前々週比2.8%高で1824ルと上げて6月末以来の高さで、建玉は前週比7.1%増と2週連続で増加していたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットポジションは、6週連続でネットロングで50%増で3,247トンと4月末以来の高さとなっていたこと。この間LBMA銀価格は3.8%高で23.40ドルと上昇していたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、10週連続でネットロングで、そのポジションは19%増の37.7トンと3月初旬以来の高さとなっていたこと。LBMA PMプラチナ価格は3.9%高で1037ドルとやはり3月初旬以来の高さ。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは9週連続でネットショートであったものの、99%減の0.009トン。LBMA PMパラジウム価格は4.3%高で1952ドルと4週ぶりの高さ。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに1.7トン(0.19%)増で914トンと、11月2日以来の高さで週間の増加傾向。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに全く変化なく449.5トンと2020年6月半ば以来の低さで、16週ぶりに減少を止める傾向。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに7.16トン減で14,541トンと今年9月半ば以来の低さで、4週連続の週間の減少傾向。

  • 金銀比価は、今週火曜日と本日75台へと76台から下げていること。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)

  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、週初めに800台を割っていたものの、本日は814と9月半ばの水準へ上昇して終える傾向。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。

  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、今週水曜日に700台を割って、2019年9月以来の低さに下げ、本日722と上昇して終える傾向。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。年初は1000ドルほど。

  • 上海黄金交易所(SGE)のロンドン金価格との差は、今週人民建て金価格が前週から大きく上昇する中でプレミアムで、その平均は14.02ドルと前週の14.81ドルから下げていること。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。

  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は12%減で8月末以来の低さ、銀は13%減で7月末以来の低さ、プラチナは29%増と2021年9月以来の高さ、パラジウムは18%減で前前週以来の低さ

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は日銀の実質利上げでもある長期金利の変動許容幅を0.25%から0.5%へ広げたことで市場は大きく動きました。

来週前半欧米はクリスマス休暇となり、経済指標及びイベントは限られたものとなります。

そのような中で注目されるのは、火曜日のケース・シラー米住宅価格指数、木曜日の米新規失業保険申請件数、金曜日の米シカゴ購買部協会景気指数となりますが、薄商いでもあり影響は限定的なものと思われます。

詳細は主要経済指標(2022年12月26日~30日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、クリスマスを前に看護師、電車、郵便局などのストが続発しているためにそのニュースが大きく伝えられていますが、その他ワールドカップの決勝で手に汗握る戦いの後に優勝をしたアルゼンチンのチームとメッシ選手とその帰還後の凱旋パレードについてなどが大きく伝えられています。

そのような中で、今週は国営放送のBBCが毎年この時期発表する、今年最も活躍が顕著であったスポーツ選手を選ぶ(スポーツ・パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー)が発表されましたので、今年の英国におけるスポーツ界を振り返る意味でも、ここでノミネートされているスポーツ選手をここでご紹介しましょう。

ジェシカ・ガディロバ(Jessica Gadirova

体操の世界選手権大会の床運動で金メダル、オールラウンドで銅メダル、そしてチームでは銀メダルを獲得した女子体操選手。英国チームとしてオールラウンドでメダル獲得は初のこと。

ベス・ミード(Beth Mead

UEFA欧州女子選手権2022年で優勝したイングランドチームの代表選手で、得点王で最優秀選手。すでにBBCの2022年女子サッカー最優秀選手の賞を受賞し、欧州プロサッカー界に於ける最優秀選手の賞バロンドールでは2位に選ばれています。

イブ・ミュアヘッド(Eve Muirhead

英国の女子カーリング選手で、北京オリンピックで日本チームに競り勝ち、英国チームを優勝に導いたキャプテン。

ロニー・オーサリバン(Ronnie O’Sullivan

英国のスヌーカー選手。今年も含めて7回世界選手権で優勝とステファン・ヘンドリーと同数の優勝回数となったとのこと。

ベン・ストークス(Ben Stokes

2019年にすでにこの賞を受賞しているクリケット選手。今年は世界選手権大会(ICC T20)で優勝に導いたキャプテン。

ジェイク・ワイトマン(Jake Wightman)

オレゴンの世界陸上で、1500mで金メダルを獲得。このイベントで英国男子が金メダルを獲得したのは1983年のスティーブ・クラム以来。800mでも銀メダルを獲得。

今年の英国でのスポーツの話題は、北京オリンピックで始まり、4月にスヌーカーの世界選手権、7月にはUEFA欧州女子選手権でイングランド女子が優勝、クリケットの選手権、オレゴンの世界陸上と多くのスポーツイベントを経て、10月にはラグビーワールドカップ、11月には世界体操と、パンデミックで延期されていたイベントも多く開催され、英国選手の活躍を多く見られる機会がありました。

スポーツ・パーソナリティ・オブ・ザ・イヤーの結果はイングランド女子サッカーチームを欧州選手権で優勝に導いたベス・ミード選手が選ばれ、イングランド女子チームとこの監督のサリナ・ウィーグマン(Sarina Wiegman)氏もまた、最優秀チームと監督に選ばれて、イングランド女子サッカーチームへの国民のサポートが大きかったことが感じられるものとなりました。

ちなみに、世界のスポーツ最優秀賞は今月行われたワールドカップで優勝したアルゼンチンチームのキャプテンのリオネル・メッシ選手が受賞しています。

来年もまた、トップを極めるスポーツ選手の姿が、国を超えて多く感動を人々にもたらすことでしょう。

それでは、弊社ニュースレターは来週年間のまとめを発信させていただきますが、週末がクリスマスですのでクリスマスに合わせて年末のご挨拶をさせていただきます。

ブリオンボールトからのクリスマスと年末のご挨拶

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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