ニュースレター(2021年6月25日)金価格は3週ぶりの上昇となったもののレンジ内にとどまる
先週はお休みをいただいていましたので、遅くなりましたが先週のニュースレターをお届けします。
週間市場ウォッチ
先週金曜日のLBMA価格のPM金価格はトロイオンスあたり1786.65ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.76%高で3週ぶりの上昇となっていました。またLBMA銀価格は、金曜日トロイオンスあたり26.13ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.97%安と下げていました。そして、プラチナの先週金曜日LBMA価格は1101ドルと、前週LBMA価格から2.9%高と3週ぶりの上昇となっていました。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
先週金・銀価格はそれぞれトロイオンスあたり20ドル、0.70ドルほどの狭いレンジでの取引となっていました。これは、前週のFOMC後の金融緩和引き締め観測による急落後、FRB高官による相次ぐコメントで早期金融緩和引き締め観測の広がりと後退が交錯する中で、主要経済指標も大きなきっかけとならず、ドルの動き以外に強い動意を失っていたことからでした。
そのような中で、プラチナに関しては他の貴金属に比べて売られすぎというところもあり調整の買いが入る中で、先週後半にロシアが新たな輸出税を鉄鋼等の鉄系金属に課することが伝えられたこともあり、プラチナの主要産出会社のロシアのノリルスク・ニッケル社への懸念からも、サポートが入っていたとも分析されています。参考までにプラチナの週間チャートを添付します。
日々の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、トロイオンスあたり1783ドルと前週の終値から1%上昇して終えていました。
これは、同日ドルインデックスが2ヶ月半ぶりの高さから多少下げ、金相場は前週6%と大幅な下げ幅を見せたことからも、調整が入っていた模様です。
しかし、長期金利は多少ながら上昇しており、またFRB高官のカプラン・ダラス総裁のテーパリングは「早いほうが良い」やブラード・セントルイス連銀総裁「テーパリングを話すべき時期」とタカ派的コメントもあり、上値は押さえられていました。
火曜日金相場は、トロイオンスあたり1772ドルまで一時下げたものの、1777ドルと前日終値から0.3%下げて終えていました。
この間ドルインデックスと長期金利は多少ながら下げていました。
この背景は、同日注目のパウエル議長の議会証言で、足元のインフレ率の高まりについて「一過性の供給制約などが和らげば長期的な目標に向けて低下していく」との考えを示し「新型コロナウイルス後の回復は長い道のりだ」とも述べて、前週に強まった利上げ前倒し観測がやや後退したことからでした。
しかし、引き続きインフレ懸念の後退からも実質金利がマイナスながらも上昇していたことから、金の頭を抑えていました。
水曜日金相場はロンドン時間にトロイオンスあたり1795ドルほどまで上昇したものの、その後上げ幅を失い1777ドルで終えていました。
これは、前日のパウエルFRB議長の議会証言でテーパリングの早期開始の懸念が後退しドルが弱含んだものの、同日のFRB高官のタカ派的コメントで再び早期テーパリング観測が広がり、ドルが強含んだ事が背景となりました。
このコメントとは、アトランタ連銀のボスティック総裁の「米金融当局が資産購入ペース減速を向こう数カ月に決定する可能性がある」、また「2022年の利上げ開始が望ましい」と述べたこと、そしてダラス連銀のカプラン総裁も「インフレ率が今年と来年に当局目標の2%を上回り、失業率は4%未満に低下する」とし、22年の利上げ開始を予想した事からでした。
ちなみにドルと金相場の負の相関性は過去1年間で強まっており、過去15年間の67%から75%の割合で逆方向へ動いています。
木曜日金相場は、ロンドン時間昼過ぎに一時トロイオンスあたり1788ドルまで上げたものの、その後上げ幅を失い、1775ドルと前日比0.1%下げて終えていました。
同日は米新規失業保険申請件数が予想を上回ったものの、米耐久財受注が1月以来の速さで上昇していたことから、FRBの金融緩和引き締め観測が多少広がっていました。
その後、バイデン米大統領が1兆ドル規模のインフラ投資法案で超党派の上院議員と合意したと表明したことから、米株価指標が上昇しリスクオン基調が金の頭を押さえることとなりました。しかし、前週末比では0.6%高と前週後半の急落の自発的反発からも上昇していました。
なお、この間日本円建て金相場は、円が対ドル3ヶ月ぶりの水準へ弱含んでいることからも、前週末から1.1%高のgあたり6332円と上昇しています。
金曜日金相場は、水曜日と木曜日同様に、ロンドン昼過ぎまで上昇をしていたものの、その後長期金利とドルが上昇に転じたことで、その上げ幅を失って前日終値からは上回るトロイオンスあたり1781ドルで終えていました。
この動きは、同日発表の5月のコア個人消費支出(PCE)物価指数が前年同月比3.4%上昇と市場予想と一致し、インフレ加速の懸念を招かなかったものの、この高さは30年ぶりの高さでもあり、その後緩やかに上昇したことからでした。
なお、金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアは、2日連続で残高を減少させ、週間で10トン(1%)の減少となっており、金のセンチメントが多少悪化していることを示唆していました。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、FOMCの結果を待つ6月15日に、金とパラジウムで減少し、銀とプラチナは増加させていたこと。(先週末には6月22日のFOMC後のデータが出ていますが、これは金曜日にお届けします。) -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、ロングポジションが2週連続で減少し、ショートポジションが増加する中で、9.9%減で356トンと減少していたこと。また、建玉は4週連続で減少していたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.9%増の7,240トンと2週連続で増加していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.22%増で13.69トンと多少ながら増加しいたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比1.1%減で11.9トンと2週ぶりに減少していたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週10.2トン(0.97%)減少し、1043トンと2週ぶりの週間の減少となっていたこと。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、先週1.13トン(0.22%)増で504.8トンと3月30日以来の高さで8週連続の増加となっていたこと。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、先週328.8トン(1.85%)減で、17,346トンと3週連続の週間の減少で1月15日以来の低さとなっていたこと。 -
金銀比価は、先週全般68台を推移していたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格は、ロンドン価格に対しプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で5月末以来となり、週間平均は2.81ドルとなっていたこと。 -
コメックスの金、銀、プラチナの取引量は、先週価格がレンジ内で推移する中で、週間平均でそれぞれ37%、25%、4%減と全ての貴金属で減少していたこと。
今週の主要イベント及び主要経済指標
今週の重要イベントは、金曜日の米雇用統計となりますが、その先行指標の水曜日のADP全国雇用者数もまた注目指標となります。
また他の指標としては、火曜日にはドイツの消費者物価指数、水曜日には中国の製造業PMI、ユーロ圏消費者物価指数、木曜日には中国のCaixin製造業PMI、米国新規失業保険申請件数とISM製造業景況指数が発表され、これらもインフレ傾向及び経済回復状況を計る指標として注目されます。
詳細については主要経済指標(2021年6月28日~7月2日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
先週金相場が下げる中で、週間での上昇分を維持したことを伝える、米主要経済サイトのMarketWatchの記事で、弊社リサーチダィレクターのエイドリアン・アッシュのコメントが取り上げらています。
ここで、エイドリアンは「インフレ見通しを金の購入と売却の理由としている人々は、株式市場の警戒すべき兆候を見逃している。」とし、「企業価値(バリュエーション)はハイテクバブル以降で最も肥大化している。株式が急落しても金が上昇するとは保証されていないものの、長期的にはS&P500種が下げた際には上昇している。」と述べています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2021年6月21日~25日)先週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2021年6月28日~7月2日)今週の予定をまとめています。
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
先週は休暇をいただき、ウェールズを訪問していました。そこで、今週のロンドン便りはお休みをさせていただきますが、休暇中に登ったスノードン山の写真をお届けします。
英国の中でもイングランドは標高600メートルを超える山が192ほどしか無く、最高峰でも北西部にあるスカフェル・パイク山の978メートルとなっています。そして、このイングランドに加えて、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド全体で標高600メートルを超える山は2755のみですが、その多くはスコットランドに2191と集中しています。
そこで、ロンドン在住の私は山と無縁の生活をしていることからも、今回の休暇はウェールズの最高峰のスノードン山(1085メートル)に登頂することが主な目的でした。
当日は晴天に恵まれ、麓から山頂までの7キロ強の行程を雄大な景色を楽しみながら3時間半ほどで登ってきました。そこで、息を呑むような景色の数々の中から、山頂で優雅に羽ばたくかもめの姿の写真を下記に添付します。