金市場ニュース

ニュースレター(2020年4月9日)主要諸国と中央銀行の大規模な対コロナ対策で金は大きく上昇

英国は明日から復活祭の休暇で4連休となりますので、本日早めに今週のニュースレターをお届けします。

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1683.43ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から4.36%上昇しています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.17ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から5.42%上昇しています。そして、プラチナも本日午後3時の弊社チャート上では748.42ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から4.82%上昇しています。

今週金相場は、月曜日に上昇した後に緩やかに下げて本日木曜日に再び大きく上昇することになりました。その動きの背景についてまとめてみましょう。

月曜日の上昇は、前週第1四半期末の調整の下げを取り戻し、主要諸国の経済刺激策や主要中央銀行が最大規模の金融緩和策を導入していることによる、インフレや財政赤字の広がり等の先行き不明感の広がりによる金購入が背景となっていました。

その後火曜日の一週間ぶりの下げは、世界株価が全般上昇する中で、他の安全資産の主要国国債やドルも売却されていたことからもリスクオフの基調は緩んでいる中で、前日の上昇に対する利益確定の動きであった模様です。

そして、昨日水曜日金相場は、米国株価が強気市場圏内に入る傾向を見せる中で、トロイオンスあたり1650ドルとほぼ前日終値の水準で狭いレンジで推移していました。

同日はS&P500種株価指数は3月の低値から20%上昇と強気市場入と定義される状況となっていました。これは、新型コロナウイルスが、中国、イタリア、スペインの感染ペースが鈍化していること、米国立アレルギー感染症研究所ファウチ所長が米国の死者数が減っているために来週以降に転換期を迎えると述べたことで収束に向かっているという観測が広がったことからでした。

なお、同日欧州株価はEU財務相がパンデミックへの経済対策に合意できなかったことからほぼ全般下げていました。しかし、同日GDPが第2次世界対戦以来最大の下げの6%減となると仏中銀が発表したことが大きく伝えられていたものの、同国株価指標は0.1%増とかろうじてプラス圏で終えていました。

本日の金相場の上昇の要因は、株価も押し上げたFRBによる新たな資金供給の発表でした。

FRBはニューヨーク時間朝に、新型コロナの感染拡大で苦しむ企業や家計を支援するための最大2兆3000億ドルの資金供給策を発表し、すでに打ち出しているゼロ金利政策や量的金融緩和に加えて、企業の資金繰りを支援する異例の措置を行うと発表していました。

これにより、本日の米国新規失業保険申請件数が予想の525万人を超える660.6万人で前回数値は664.8万人から686.7万人に上方修正されたという悲観的ニュースも打ち消すものとなりましたが、金にとってはこの規模の資金が市場に流入することによるインフレ懸念、財政赤字懸念などからも買いとなっているようです。

その他の市場のニュ―ス


  • 昨日ワールドゴールドカウンシルが発表したデータによると、世界の金ETFは今年第1四半期に298トン残高を増加させて2016年以来の増加量となっていたこと。この内訳を見ると、欧州の増加量が150.1トンと北米の128.5トンを上回り、アジアやその他の地域も全て増加していたこと。また、昨年は659トン増と年間の増加量としては世界金融危機以来の高さとなっていたこと。また3月は一ヶ月ベースで151トン増加と残高が史上最高の3185トンとなっていたこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週31日第1四半期最終日に貴金属価格が下げる中で、金とプラチナは減少し、銀とパラジウムは増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比10.83%減の554トンと下げていたこと。また、建玉も前週から20%減と大幅に下げて4ヶ月ぶりに100万枚を割っていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比18.7%増の2,755トンと5週間ぶりに増加していたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比23.8%減で11.1トンと9週連続で減少して8月20日以来の低さへと下げていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比156%増の3.7トンと12週ぶりの増加となっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週水曜日までで9.6トン増で988.6トンと7年ぶりの高さとなっていること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週水曜日までに週間で4.73トン(1.2%)増で397.8トンと過去最大となっていること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週水曜日までで週間で1.51%増加して史上最高となっていること。

  • 金銀比価は今週も100を超えていたものの、本日109と月曜日の112から下げて銀割安傾向が多少改善されていること。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週本日までの平均が20.06と過去最大の水準となっていたこと。

  • 金消費世界第2のインドに於いても、月曜日の現地通貨建て金価格とロンドン価格との差は、インド政府が3週間の外出禁止令を出したことで、6ヶ月ぶりの大幅なディスカウントとなっていたこと。

  • コメックスの取引量は今週水曜日までの週平均量で前週比2%増加しているものの、昨年クリスマス前の週の取引量水準であること。

  • 原油価格は本日木曜日にロシアとサウジアラビアが減産合意に入るという観測から下げ止まって推移していること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週も欧米を中心とした新型コロナウイルス感染拡大関連ニュースヘ市場は注目することとなります。

また、主要経済指標では、火曜日に中国の貿易収支、水曜日に米国の小売売上高とニューヨーク連銀製造業景気指数と鉱工業生産、そして米地区連銀経済報告、木曜日はドイツの消費者物価指数、ユーロ圏の鉱工業生産、米国の住宅着工件数とフィラデルフィア連銀製造業景気指数と新規失業保険申請件数、金曜日の中国の第1四半期GDPと小売売上高と鉱工業生産、ユーロ圏の消費者物価指数となります。

ブリオンボールトニュース

ブリオンボールトは昨年日本で貴金属市場の発展と振興を目的に設立された日本貴金属マーケット協会(JBMA)の法人賛助会員として大阪取引所(日本取引所グループ)、ワールド・プラチナム・インベスト・カウンシルとともに登録しています。

このJBMAのYouTube番組のロンドン現地レポートに先週、先々週ご紹介したように参加させていただきましたが、明日日本時間午後7時からのJBMAオンライン勉強会では代表理事で日本の貴金属ディーリングの第一人者の池水雄一氏が質問に答えてくださいます。よろしければ、登録、参加ください。

弊社が毎月まとめる金投資家の投資傾向を実際に取引されたデータから算出する金投資家インデックスの3月数値について、日本語で金の情報を網羅するゴールドニュースサイトで取り上げていただいています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

 ロンドン便り

今週も新型コロナウイルス感染関連のニュース一色の日々となっています。

英国は3月23日からロックダウンと呼ばれる自宅待機が行われていますが、新型コロナウイルス感染が悪化して月曜日の夜に集中治療室に入っていたボリス・ジョンソン首相が、ロンドン時間午後7時半に普通病棟へ移ったことが伝えられています。

ジョンソン氏は強行離脱派であることや2度の離婚歴を持つライフスタイルなどからも、彼自身を支持しない人々も多いようですが、新型コロナウイルス感染対策へ力を尽くしていることは多くの人々が認めており、英国中が彼の一日も早い快復を祈っています。

そのような中、本日は英国の多くの劇場がロックダウンで閉めているために、自宅待機をしている芝居やバレエやオペラファンのために、様々な無料のストリーミングをしているのでご紹介しましょう。

National Theatre

YouTube番組で無料でこれまでの芝居を定期的にアップロードしています。本日からはジェーン・エアが見ることができるようです。

Royal Opera HouseやEnglish National Ballet

クラシックバレエやオペラ等の多くの作品が見ることができるようですが、そのためにはMarquee TVで登録する必要があります。ただ、30日間は無料のトライアルがあるようです。

Sadler’s Wells

このシアターはダンスの演目が多いですが、Facebookページで無料で過去の作品を見せているようです。

日本も緊急事態宣言で外出自粛となりましたが、もし英国のお芝居やオペラやクラシックバレエ等ご興味があれば先のリンクでお試しください。そして、どうか人混みを避けて、Social distansingを守り、安全に過ごされますように。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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