金市場ニュース

ニュースレター(2019年6月14日)地政学リスクの高まりで金は14か月ぶりの高さへ上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1351.59ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.8% 上昇しています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.02ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.7%上げています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では809.25ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.7%上げています。

今週金相場は、トランプ政権の中国との貿易協議について明るいニュースが出ない中、香港での抗議デモの警官隊との衝突、中東ホルムズ海峡近くでタンカーが襲撃された事件を受け、米国とイランの対立激化など地政学リスクへの懸念の広がりから、金相場は14か月ぶりの高さへと上昇することとなりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

月曜日金相場は、トランプ政権がメキシコへの追加関税を見送ったことで、世界株価が上げ、安全資産への需要が減り、トロイオンスあたり1325ドルへと一時下げ、先週終値からは1.2%下げていました。

なお、週末福岡で行われたG20財務相・中央銀行総裁会議では「貿易リスクに更なる行動の用意がある」との共同声明を採択したものの、米財務長官のムニューチン氏は、この会議後に「もし中国が動く準備があれば、我々は前進する用意がある。しかし、中国がその準備が無ければ、トランプ大統領は米中関係をリバランスするために、追加課税をすることに全く問題は無い」と、今月末のG20時の米中首脳会議を前に警告をしていました。

火曜日金相場は、世界株価が全般上げ、S&P500種が6日連続で上昇する中で、トロイオンスあたり1320ドルまで一時下げていました。

同日は、中国政府が重要なインフラ投資を目的にした地方債の使途制限を緩和し、地方政府の投資を促進する方針を示したことが好感され、月末のG20での米中首脳会議で周金平首相がトランプ大統領に会わなかった場合は、関税引き上げを行うというトランプ大統領の警告への懸念も打ち消していました。

また、同日発表された米国生産者物価指数は予想を下回り、先週の雇用統計の悪化からも、FRBの利下げ観測が広がっていることも、株価を押し上げていました。

水曜日金相場は、世界株価が全般下げる中で、トロイオンスあたり1338ドルへと一時上昇した後、1333ドルで終えていました。

これは、香港の容疑者を中国へ移送可能とする「逃亡犯条例」改正案への香港の大規模な抗議デモが警官隊と衝突したことや、トランプ大統領が同日中国が当初の合意事項に戻らない限りは最終合意は無いと述べたこと等の地政学や政治リスクが意識されたことからでした。

なお、同日注目の米消費者物価指数が予想を下回ったことで、FRBによる金利引き下げ観測は広がっていました。

そして、ロンドン時間夕方には英国議会が労働党が提出した合意無き離脱を防ぐための採決が否決されたことから、合意無き離脱への懸念の広がりポンドが弱含んでいることから、ドルを相対的に押し上げて、ロンドン時間終盤に多少金は押し戻されていました。

木曜日金相場は、欧米株価が全般上昇する中で、トロイオンスあたり1344ドルへ上昇して終えていました。

同日の株価上昇は、中東のホルムズ海峡近くのオマーン湾で石油タンカー2隻が攻撃を受け、原油供給を巡る不透明感から原油先物相場が大幅に上昇し、石油関連株に買いがけん引している中で、FRBの利下げ観測の広がりなどが要因となっていました。

また、香港の抗議デモの状況や、今月末の大阪でのG20での米中首脳会談の日程も定まっていないこと等から、金の安全資産としての買いも入ることとなりました。

本日金曜日は、世界株価が全般下げる中で、ロンドン時間早朝から金相場はトロイオンスあたり1358ドルと、昨年4月9日以来の高さまで上昇していました。

これは、株価の下げは本日発表された中国の経済指標が予想を下回り中国経済の先行きに対する警戒感が強まったこと、また前日のホルムズ海峡の石油タンカーへの攻撃に対して、ポンペオ米国務長官は「イランに責任がある」と主張するなど、米国とイランとの緊張感が強まっていることからでした。

なお、本日発表された米小売売上高が予想を上回ったことで、ロンドン時間午後はドルが強含み金が多少押し下げられています。

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週火曜日に0.2トン減少したものの水曜日に3.5トン増加し、木曜日までに759.7トンと今年4月8日以来の高さとなっていること。

  • 金銀レシオは今週も木曜日まで90を超える26年来の高い水準で、水曜日は90.38と今年一番で、再び1993年3月末以来の高さへと上昇していたこと。

  • 水曜日に中国の生産者物価指数が幾分弱い内容で豪ドルが主要通貨に対して下落していることからも、豪ドル建て金価格が史上最高値を付けていたこと。

  • 週末発表のコメックス貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、トランプ政権のメキシコ関税見送りが発表される前の先週火曜日に、プラチナを除き強気ポジションが増加していたこと。

  • コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、3週連続で強気ポジションを増加させ、前週から264%増の昨年4月以来の14か月ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日も10週続けてネットショートではあったものの、そのポジションは48.9%減少し、3100トンとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、2週連続でネットショートで、そのポジションも25.5%増加し19.8トンとなっていたこと。

  • また、コメックスパラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に2.4%増の29.2トンとなっていたこと。

  • 中国の金準備が6か月連続で増加し、15.6トン増の1,916トンとなり、外貨準備高も予想に反して増加し、3.01兆ドルとなったことを人民銀行が発表したこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週は市場注目のFOMCが火曜日と水曜日に行われ、水曜日の発表とパウエルFRB議長の記者会見が最大イベントとなります。その他日本と英国の金融政策発表も木曜日に行われ注目されることとなります。

指標においては、月曜日のニューヨーク連銀製造業景気指数、火曜日のユーロ圏消費者物価指数と貿易収支、ドイツとユーロ圏のZEW景況感調査、米国の住宅着工件数、水曜日は英国の消費者物価指数、木曜日は英国小売売上高と米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数、ユーロ圏消費信頼感、金曜日は日本の消費者物価指数とドイツ、ユーロ圏、米国の製造業PMIと米国中古住宅販売件数等となります。

そして、本日相場を大きく動かしている中東情勢、引き続き米中貿易協議関連ニュース、英国の与党保守党党首選の結果も注目されることとなります

ブリオンボールトニュース   

今週金相場が大きく動く中で、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが主要メディアで取り上げられています。

英国の投資情報サイトFE Trustnet「金を今買うべきか

この記事では、数人のファンドマネージャーや専門家に「安全資産」の金についてインタビューし、金業界のマーケティング団体であるワールドゴールドカウンシルの最新の金需給レポートにも触れ、中央銀行や金ETFへの需要が高まり、この傾向は今年後半まで続くとしていることを紹介しています。

そしてエィドリアンは、「メイ首相が退任後にブレグジットや政局の不透明さが増すことからも、英国投資家にとって金へとポートフォリオの分散をする意味が出てくるだろう」とし、「ポンド建てですでに金は、2011年のピークに7%という高い水準へと上昇している。そのために、ハードブレグジットやコービン野党党首が首相になった場合のポンドの急落のリスクは金を良いヘッジ商品とするだろう」とコメントしています。

 ドイツの主要経済サイトのDW.com「トランプの政策がドルを犠牲にして金を魅力あるものにしている

ここで、新興国中央銀行が金準備を過去50年見られたことがないペースで増加させていることを、トランプ政権がドルを武器としていることで、この通貨建て資産を持つことの懸念が高まっていることを背景とし、エィドリアンの「貿易戦争は、この傾向に新たな理由を加えた。ドルを売って金を買うことで、その国の外貨準備がドル決済のシステム、つまりは米国政府の管理外に置かれることとなる。」というコメントを紹介しています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週英国では、メイ首相辞任を受けて、与党保守党の党首選関連ニュースが日々伝えられています。

この党首選の第一回は今週の木曜日に行われ、10名の候補者に保守党議員が投票し、予想通り元外相のボリス・ジョンソン氏が大差で第一位となりましたが、来週18日は16人以上の支持を集められなかった3人を除き、2回目の投票が行われます。

このようにして、候補者を2名にまで絞った後に、保守党員の投票で新党首が7月22日の週に決まる予定とのこと。

先週末から今週前半は、立候補者が選挙活動をする中で、立候補者が過去の違法薬物使用について謝罪をするニュースが続いていました。

特に、マイケル・ゴーブ環境相は、先週日曜日のBBCの政治番組に出て、20年前にコカインを複数回使用したことを認めたことは、大きく伝えられていました。

それを前後して、ローリー・スチュワート国際開発相は15年前にアヘンを吸引し、アンドレア・レッドソム前下院院内総務は大学時代に大麻を吸ったこと、ジェレミー・ハント外相は過去に大麻の入ったラッシー(乳飲料)を飲んだこと、エスター・マクヴェイ全雇用・年金相もまた大麻の吸引を明らかにしていました。

マイケル・ゴーブ氏のニュースがより大きく伝えられていた背景は、彼が教育相であった際に、コカインなどの危険度の高い薬物を利用したことのある教員は失職する規則を導入したこと、また法務長官であった際には、この薬物保持は上限7年の懲役という法律の施行も主導していたことから、ダブルスタンダードと見られたことからでした。

このニュースが出るまでは、ゴーブ氏はジョンソン氏に次ぐ首相候補とされていましたが、今週の結果では3位で37票とジョンソン氏の114票に大きく差をつけられたようでした。

ゴーブ氏のこれまでの政府内の要職を務めてきた経験などからも、議員の中では支持も高かったようですが、薬物使用は過去のこととはいえ、やはり他人に厳しく自分に対して甘い人に首相は務まるのかと、保守党議員が躊躇する気持ちは十分に理解できるところです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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