ニュースレター(2019年3月8日)中国の輸出データと米非農業部門雇用者数の悪化で金は1300ドルを試す
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1295.75ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.2%下げています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.11ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から2.9%下げています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上で815.68ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から5.5%上げています。
米中貿易協議への楽観的観測や強いドルで頭を押さえられていた金相場は、本日発表の中国の予想を大きく下回る輸出データで世界株式が下げる中上昇を始め、本日午後の米雇用統計の予想を大きく下回る非農業部門雇用者数で1300ドルを一週間ぶりに試すこととなりました。それでは、今週の日々の動きを追ってみましょう。
月曜日金相場は米中の貿易交渉がすでに課された関税の撤廃を含んで合意に近いというニュースを受けて、先週金曜日の6週間ぶりの低さから更に下げて、トロイオンスあたり1286ドルで終えていました。
そのために金相場は、ドルが強含み含み、欧州株がアジア株の上げ基調を受け継ぐ中で、2月中旬の10か月ぶりの高さからは4%の下げとなっていました。
なお、ドルは週末トランプ大統領がドル高と米連銀の金融引き締めを非難したことからアジア時間には下げていました。
また翌日からは中国で全国人民代表大会が行われる予定で、ここで景気刺激策が発表されると予想されていたことも株式市場を押し上げていました。
火曜日金相場は、ドルインデックスが5日連続で上昇し、世界株価が5営業中4営業日下げる中で、トロイオンスあたり1281ドルまで一時下げていました。
株価の下げは、米中貿易協議の楽観的観測が広まり上げた価格の調整、同日はトランプ大統領が特恵関税対象からインドを除外する意向を明らかとしたこと、そしてやはり同日から行われている中国の人民代表大会で出された19年のGDP成長率目標が引き下げられたこと等が要因とされていました。
水曜日金相場はドルインデックスが高止まりし、米株価が3日連続で下げ、S&P500が3週間ぶりの低さへ下げる中で、トロイオンスあたり7ドルの狭い幅で推移していました。
株価の下げは、米中貿易協議の結果待ちであることから、そして同日発表された米貿易収支が赤字幅を広げていたこと、また今週金曜日の米雇用統計の先行指標と見られているADP全国雇用者数が予想を下回ったこと等が要因となりました。
木曜日金相場はドルインデックスが10週間ぶりの高さへと上げる中、前日同様にトロイオンスあたり1286ドル前後の狭い幅で推移していました。
このドル高は同日のECBの政策金利発表で利上げ時期を来年に先延ばし 期間2年の貸出条件付き長期資金供給オペの第3弾を9月から実施することが発表され、そして経済見通しも大幅下方修正されたことで、ユーロが弱含みドルが押し上げられたことからでした。
本日金相場は、アジア時間に発表された中国の輸出が-20.7% と予想の-4.8%を大きく下回り、アジア株が下げたことで上昇して始まっていました。
その後、今週注目の米雇用統計2月数値が発表され、予想の18万人を大きく下回る2万人と2017年9月以来の低水準となったことで、金はさらに上昇し一週間ぶりに一時トロイオンスあたり1300ドルを付けていました。
しかしながら、失業率は3.8%と予想3.9%と前回の4%を下回り、平均時給も前年同月比3.4%と10年ぶりの伸びとなったことから、株価の下げは抑えられており、金の上値も抑えられている模様です。
その他の市場のニュ―ス
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金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は今週月曜日に5.9トン減少し、766トンと昨年12月17日の低さまで下げていたこと。なお先週金曜日に金価格が6週間ぶりの低さへ下げていた際に、この残高は1.5%減と一日の下げ幅としては昨年2月以来の11トンを超える大きな売却が起きていたこと。 -
ノルウェー政府は探査・生産専業のエネルギー企業を政府系ファンドの年金基金グローバルの投資先から除外することを提案したこと。この目的は、恒久的な原油価格下落に対する国民の共有資産の脆弱性を減らすこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週の重要イベントは、メイ英首相のEU離脱協定案の修正案が議会で採決され、今月29日のEU離脱がハードブレグジット(合意無き離脱)を免れるのかに市場は注目することとなります。
また、米中首脳会談を今月27日に開催する方向で調整しているとWSJが先週末に伝えいたことからも、米中貿易協議関連ニュースも市場を動かすこととなります。
来週の注目指標としては、月曜日の米小売売上高、火曜日の米消費者物価指数、水曜日の米卸売物価指数と耐久財受注、木曜日の中国の鉱工業生産、小売売上高、米国の新築住宅販売件数、金曜日の日銀の政策金利発表、ユーロ圏の消費者物価指数、米国のニューヨーク連銀製造景気指数、米鉱工業生産、ミシガン大学消費者態度指数などとなります。
ブリオンボールトニュース
一般投資家の金投資傾向を数値化した弊社の金投資家インデックスの2月数値のプレスリリース「2016年のEU離脱の国民投票時と比較して金投資は8割強減少と英国投資家はブレグジットへの懸念を見せず」が、金の情報を日本語で網羅しているゴールドニュースサイトで取り上げられました。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2019年3月4日~8日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2019年3月11日~17日)来週の予定をまとめています。 -
英国は「ブレグジット懸念は全くない」と金投資傾向が語る 弊社金投資家インデックス2月分の解説記事
ロンドン便り
本日はご存知のように国際女性デーです。そこで、英国メディアは様々な形で取り上げていますので、この様子をお伝えしましょう。
国際女性デーが始まったのは1908年にニューヨークで15000人の女性が労働条件改善を要求して行進をしたことが始まりとされています。
その後、1910年にデンマークでそれぞれの国で女性の権利を高めるために国際女性デー設立が提言され、1911年に初めて3月19日にドイツとオーストリアとデンマークとスイスで祝われたとのこと。
そして、1913年に3月8日へと変更されて、この日が国際女性デーとして確立したということですが、国連が認識したのは1975年とのこと。
国ごとにこの日の扱いは異なるようですが、英国では社会的そして政治的に女性が抱える問題にスポットライトを当てて、これを改善すべくディスカッションやデモンストレーションなどが行われます。
それに対し中国、ドイツ、ロシアや多くの中央アジアやアジアやアフリカの国々は祝日としており、米国では大統領が米国女性の貢献を称えて公式な声明が出されるとのこと。イタリアではミモザの花が女性に贈られ、スペインは昨年から女性の労働条件改善を求める大規模な24時間ストライキが行われているようです。
今年英国では先に加え、航空会社数社が面白い企画を立ち上げているので簡単にご紹介しましょう。
英国航空は今年100周年とのことで、それも祝いイギリス南東の100人の女子をパイロット訓練センターへ招待をし、パイロットになることを奨励したとのこと。そして、飛行機の中のエンターテインメントシステムに女性が主役の情勢に力を与えるような番組を取り上げるチャンネルを3月中に加えたとのこと。
そして、バージンアトランティック航空は、世界でただ一つ女性の名前が付けられている国であるセントルシアへの無料航空券4枚を、この国名にちなんでルーシー、もしくはルチアという名前の女性に抽選で提供するとのこと。そこで、弊社にもルチアというアルゼンチン出身の女性が働いていますので、本日応募することを勧めたところです。
日本でも国際女性デーは広まりつつあるようですが、ワールド・エコノミック・フォーラムによると、男女の格差が改善されるのは2186年まで必要とするとのこと。既にこのムーブメントが生まれて111年を経て、これまで以上の年月が必要とされていることを考えると気が遠くなるように思いますが、まずはこの格差が是正されるべきものとして認識され、そのために多くの政府と企業が共に改善のために動くモメンタムが加速することを希望するばかりです。