ニュースレター(2019年11月1日)FOMCと良好な雇用統計の下げを取り戻し金価格は1500ドルを超える
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1508.87ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.3%の下げとなっています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり18.12ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)とほぼ同水準となっています。また、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では941.87ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.2%と上げています。
今週金相場は、市場注目のFOMCと米雇用統計で一時押し下げられたものの、米中貿易協議への懸念は払拭しきれていないことからも、心理的節目の1500ドルへ戻して週を終えることになりそうです。
月曜日金相場はトランプ大統領の米中部分合意の早期合意の可能性のコメントで米株価が史上最高値を更新したことからも押し下げられることとなりました。
また、ロンドン時間夕方に英国議会はジョンソン首相の12月12日の総選挙の動議を否決したことが伝えられていましたが、この結果に対する市場の反応は予想されていたことからも限定的となっていました。
火曜日金相場は前日の下げ幅を広げてトロイオンスあたり1485ドルまで一時下げていました。 これは、米中貿易協議の部分合意が早期行われる可能性があるというトランプ大統領のコメントで前日米株価指数S&P500種が史上最高値を更新する中で、金は押し下げられ同日はその観測が多少後退はしているものの、金はさらなる下げを見せていたことからでした。
なお、英国のEU離脱関連ニュースでは、ジョンソン政権が12月12日の総選挙の動議を再度提出し可決されたことから、ポンドが強含みポンド建て金相場が下落していました。
水曜日は、市場注目のFOMCでは25ベーシスポイントの金利引き下げを予想通り行われました。また、この声明で今後の金利引き下げは一時休止することが示唆されたことから、金相場は一時1481ドルまで下げましたが、その後パウエルFRB議長の記者会見で、今後の金利引き下げの可能性が残されたことから、その下げ幅を取り戻して終えていました。
なお、FOMCの声明ではFOMCの声明では、鍵となる言葉「景気拡大維持のために適切に行動」が取り除かれ「先行きの政策を適切に見極める」としたことから、よりハト派的と一旦は解釈されていました。
その様な中、同日は金曜日の米雇用統計の先行指標と見られているADP民間雇用者数は、12.5万人と予想の12万人を上回りましたが、前回数値は13.5万人から9.3万人へ下方修正されていました。また、米国第3四半期GDPは1.9%と予想の1.6%を上回りましたが、前回の2.0%からは下げていましたが、市場への影響は限定的となっていました。
そして、市場注目の米中貿易協議の部分同意は、米中首脳会談を予定していたチリでのAPECがキャンセルされたことなどから、先行きが不透明で米中貿易戦争のリスクが残っていることも、金をサポートすることとなりました。
木曜日金相場はドルと欧米株価が全般下げる中で、一時トロイオンスあたり1514ドルを付ける等、先週金曜日以来の高値で前日終値から1.1%上昇していました。
この背景は米中貿易協議を巡り、「中国高官らは包括的で長期的な合意に疑問を呈している」と伝えられていること、また同日の米国経済指標のシカゴ購買部協会景気指数が予想を下回り、FRBが重要と見ている米個人消費支出価格指数も2016年以来の低い数値と伸び悩んでいたことからでした。
金曜日は、市場注目の非農業部門雇用者数が発表され、10月は12.8万人と予想の8.9万人を大きく上回りました。また、前回数値は13.6万人から18万人へと上方修正されていました。そこで、この発表を受けて金相場はトロイオンスあたり1503ドルへと10ドルほど一時下げていましたが、その下げ幅は一時間ほどで取り戻されロンドン時間午後5時半には1509ドル前後を推移しています。
この背景は雇用統計後発表された米国のISM製造業景況指数やMarkit製造業PMIが予想を下回ったことや、米中貿易協議への懸念が下値を支えていることからのようです。
なお、本日米株価インデックスのS&P500種は再び史上最高値を更新しています。
その他の市場のニュ―ス
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金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに3.0トン減少し、915 トンと10月18日以来増加していなく、9月24日以来の低い水準となっていること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで0.95トン(0.27%)増の357トンと、引き続き史上最高値を更新していること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに0.34%下げ、10月10日から全く増加していないこと。 -
金銀比価は今週のLBMA価格では82.99から84.53の間を推移していること。 -
また、今週の上海黄金交易所(SGE)のロンドン価格との差のプレミアムは、5-8ドル台を推移し、引き続き通常の9ドルからは下げていること。 -
米議会下院は木曜日に本会議で、トランプ大統領に対する弾劾調査の手続きを定めた決議案を賛成多数で可決し、民主党はトランプ氏の弾劾訴追に向けて手続きを進めたこと。 -
先週末に発表されたコメックスデータによると、先週火曜日にこの週の後半に行われるECB政策金利発表や他の重要指標を待つ中で、貴金属先物・オプションの資金運用業者の強気ポジションは、パラジウムを除きすべて増加していたこと。 -
コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは火曜日に2.81%増の703トンとなっていたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に5.6%増の6860トンとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、14.46%増で24トンとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは、1.45%減で44.9トンと2週連続の減少となっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週の重要イベントは、予定されていたチリでのAPEC会議の機会を利用した米中貿易協議部分合意の調印は、会議がキャンセルされたことで流れていますが、引き続き米中の貿易協議関連ニュースとなります。
また、主要経済指標としては、月曜日のドイツとユーロ圏のMarkit製造業PMI、火曜日の中国のCaixinサービス業PMIと英国と米国のMarkitサービス業PMI、米国の貿易収支とISM非製造業景況指数、日銀政策会合議事録、水曜日雄ドイツとユーロ圏のMarkitサービス業PMIとユーロ圏の小売売上高、木曜日のイングランド銀行の政策金利発表、ドイツの鉱工業生産、金曜日の中国の貿易収支と輸出入高、米国のロイターミシガン大学消費者信頼感指数等となります。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2019年10月28日~11月1日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2019年11月4日~8日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2019年10月28日)FOMCを前に、トランプ大統領の予定より早い米中貿易部分合意のコメントで米株価は新記録を付けて金価格は1500ドルを割る
ロンドン便り
今週は英国では英国議会が12月12日の総選挙を可決したことからも、総選挙に向けてのそれぞれの党のキャンペーン状況を日々伝えています。
その様な中で、昨日はトランプ大統領が英国のラジオ番組に電話出演して、内政干渉と取られる意見を述べたことから、トップニュースで伝えられています。
このラジオ番組は、ブレグジット党のナイジェル・ファラージ党首の番組で、ファラージ党首とここでトランプ大統領は対談する形で出演しました。
ここで、トランプ大統領は野党労働党ジェレミー・コービン党首を「彼は国のためにならない。本当に悪い。イギリスをとても悪い方向に、とても悪いところに連れて行くだろう」と語り、ボリス・ジョンソン首相は「素晴らしい人物」と褒めながらも、彼が合意したEUとの離脱協定案は「我々は今よりも何倍もの取引ができるし、もりろんEUの中にいるよりももっと大きな数字にできるのに、(この協定では)イギリスと貿易協定を結べない」と批判していました。
ファラージ党首とトランプ大統領はトランプ氏の2016年の大統領選キャンペーンをサポートをするなどとても親しい関係にあります。
そこで、トランプ大統領はジョンソン首相はファラージ氏と協力すべきともコメントしていました。
国家首脳は、他国の選挙に介入しないのが常識と言える中で、トランプ大統領の先のコメントは、型破りな大統領であることは分かっていても驚くものではあります。しかし、オバマ前大統領もEU離脱の国民投票の際に、当時のキャメロン首相をサポートするためでしょうが、英国がEUを離脱した場合は米国は英国との通商協定の話し合いは、すでに話し合いが行われている国々を終えた「最後の国」となると述べて、内政干渉と離脱派の怒りを買っていました。
コービン党首はツィッターで反論していましたが、トランプ大統領から非難されることは、彼の支持者層においてはマイナスでなはいことからも、あまり大きくことを荒げてはいないようです。
12月の総選挙は1923年以来の稀なものであり、ここで議席を争っている政党の党首は、トランプ大統領ほど型破りではないものの、かなり個性的な人々です。
そこで、政治ドラマを見るような日々が続いていますが、人々の注目は高まっていることは悪いことでは無いと言えるでしょう。
それでは、明日は素晴らしいラグビーワールドカップを開催していた日本での決勝でイングランドが南アフリカと戦います。イングランドは2003年以来の優勝となるのか、英国中が注目している試合を私も楽しみたいと思います。