ニュースレター(2019年10月25日)経済指標の悪化と主要中央銀行の金融緩和策への期待で金は1500ドルを取り戻す
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1513.75ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.6%の上げとなっています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり18.13ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から4%上げています。また、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では935.42ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から5.6%と上げています。
今週金相場は、米中貿易協議の楽天的な見方も広がる中で、米中貿易戦争の影響がみられる主要経済指標の悪化とそれによる中央銀行の金融緩和政策への期待などから心理的節目の1500ドルを取り戻すこととなりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。
月曜日金相場は、ロンドン午前中に中国の劉鶴副首相の「多くの分野で重要な進展があった」というコメントが伝えられて米中貿易戦争の早期の解決への期待が広がる中で、ほぼ横ばいで推移していましたが、午後に入りドルが強含み、欧米株価が上昇する中で金相場が下げて1484ドルで終えていました。
この要因はラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長がFOXビジネスニュースに、もし貿易協議が順調に進めば、12月に課される関税を撤廃する可能性があると述べたことが、市場の楽観的観測を広めたことからでした。
火曜日金相場はトロイオンスあたり1486ドル前後の狭いレンジでの取引となりました。
市場は米中貿易協議の行方と英国のEU離脱をめぐる英国議会の行方に注目していましたが、米中貿易協議関係では前日の米中双方から聞こえてくるポジティブなニュースで引き続き早期の解決への期待が広がり、また米企業の良好な決算からも前日同様に欧米の株価が全般上昇していました。
しかしながら、英国のEU離脱に関しては、昨日離脱協定案の採決が下院議長によって認められなかったことから、同案を実行するための法案「離脱協定法案」の採決が行われ、承認されたものの、「議事進行動議」は否決されたことから、10月31日の離脱は困難なものとなっていました。
水曜日金相場は特に主要イベントや指標が無い中で、翌日のECBの金融政策発表と主要諸国の製造業PMIが発表されるのを待っていることからも、1492ドルと前日の終値から多少ながら上昇して終えていました。
木曜日金相場はトロイオンスあたり1500ドルを2週間ぶりに超えて終えていました。
この背景は、同日発表された米国耐久財受注が予想の-0.8%より低い-1.1%と悪化していたこと、また、ECBのドラギ総裁の退任前の最後の金融政策発表で金利が据え置かれたことで、ユーロが強含みドルが相対的に一時的ながら押し下げられたこと等からでした。
本日金曜日は金相場は一時トロイオンスあたり1517ドルへと上昇したものの、その後押し戻されてロンドン時間午後6時に1502ドルへと下げています。
これは米中閣僚が電話会議を行い、「複数分野で最終決着に近づいている」と発表されたこと、米株価インデックスのS&P500種が一時史上最高値を上回ったことなどからリスクオン基調となり、調整の売りもあり金は押し戻された模様です。
なお、英国のEU離脱に関しては、本日EUが10月31日の離脱延期を認めたものの、その期間に関しては来週発表すると伝えられています。なお、ジョンソン首相がEUが英国議会の要請を受けて来年1月31日まで延期を認めた場合は12月12日の総選挙を行うことを議会に提案すると述べています。
その他の市場のニュ―ス
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金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに6.2トン減少し、918トンとなっていること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで1.66トン(0.47%)増の356トンと、引き続き史上最高値を更新していること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに0.8%下げ、10月10日から全く増加していないこと。 -
金銀比価は今週のLBMA価格では84.11から85.23の間を推移している中、本日は弊社チャート上の午後12時の価格では83台へ下げていること。 -
また、今週の上海黄金交易所(SGE)のロンドン価格との差のプレミアムは、6-7ドル台を推移し、先週の5-6ドル台よりは上昇しているものの、引き続き通常の9ドルからは下げていること。なお、このプレミアムは中国国内の需要が高まると上昇し、需要が後退すると下がるもの。 -
先週末に発表されたコメックスデータによると、先週火曜日に株価が米中貿易協議への楽観的観測や良好な決算でリスクオンで上昇する中、貴金属先物・オプションの資金運用業者の強気ポジションは、すべて減少していたこと。 -
コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは15日火曜日に12%減少し684トンとなり、9月24日のピークから25%減少していたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に12%減の6,496トンと9週間で最も低くなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、4.9%減で21トンと、5週連続の下げとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションも2.7%減で45.5トンと9週間ぶりに減少していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は、昨日もトランプ大統領が利下げをFRBに要求していましたが、ここ数週間の経済指標の悪化で利下げ観測が広がっている米国の政策金利発表が水曜日に行われ、金曜日には同国の雇用統計が発表され、市場は注目することになります。
その他経済指標とイベントでは、水曜日の米雇用統計の先行指標と見られているADP民間雇用者数、米国GDP、個人消費支出と価格指数(PCE)、木曜日の中国の製造業と非製造業PMIと日銀の金融政策発表、ユーロ圏第3四半期GDPと失業率と消費者物価指数、米国個人支出と個人所得と個人消費支出価格指数、金曜日のCaixin中国製造業PMI、米国Markit製造業PMIとISM製造業景況指数等となります。
それに加え、英国のEU離脱関連では、EUが本日10月31日の延期を認めていますが、その期間が来週発表されるため、この内容と、昨日ボリス・ジョンソン首相が、この延期内容次第で12月12日の総選挙の可能性に触れていますので、市場注目材料となります。
また、米中貿易協議関連にも市場は引き続き注目することとなります。
ブリオンボールトニュース
米主要経済サイトのMarketWatchが昨日の2週間ぶりの高さとなった金先物価格を伝え、弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントを取り上げています。
ここでエィドリアンは、「金は人々が中央銀行への信頼を失う際にパフォーマンスを高める。」とし、ドラギECB総裁が量的緩和を再開し、マイナス金利を据え置いて退任したことに触れ、「(トランプ大統領が)米中央銀行に利下げを行い量的緩和を開始するよう圧力をかけていることからも、通貨価値の切り下げ競争は、金の資産保全の役割として選択肢として魅力的なものとしている。」と述べています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2019年10月21日~25日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2019年10月28日~11月1日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2019年10月21日)ブレグジットがポンドを動かす中で、投資家はブレグジットと米中貿易協議の動きを見据える
ロンドン便り
今週も英国はEU離脱関連ニュース、またロンドン東方のトラックのコンテナから39人の遺体が見つかったことについてがトップニュースで伝えられています。
その様な中、ヘンリー王子とメーガン妃がアフリカ南部を訪問した際のドキュメンタリーが先週日曜日に民放で放映され、ここで二人が英国タブロイド紙の報道に苦しんでいることを告白していたこと、それに対してウィリアム王子が心配をしていることがニュースになっていました。
ヘンリー王子は、以前からタブロイドがメーガン妃をバッシングしていることを懸念し、パパラッチに追いかけられた末に交通事故で亡くなったダイアナ妃とこの現状が重なって見えてトラウマになっていることも告白していました。
既にメーガン妃は英国タブロイド紙が彼女の私信を公開したことを受けて訴訟を起こしていますが、このインタビューはここに至るまでの状況を人々に理解してもらうための手段であったのかもしれません。
英国の人々のロイヤルファミリーへの関心は尽きることがありません。特に若いウィリアム王子とキャサリン妃、そしてヘンリー王子とメーガン妃は、それぞれが社会に貢献をすべく活発に活動をしていることからも、メディアにさらされることともなるのでしょう。
英国の人々がその報道方法の良し悪しは別としても生活の一部として読み親しんでいるタブロイド紙と彼らが、エリザベス女王がこれまで築いてきたように、程よい距離の関係を築ける日が早く来ることをヘンリー王子とメーガン妃のためにも祈らざるを得ません。