ニュースレター(2018年8月17日)1178.76ドル:トルコ危機で金は18ヶ月来の低さへ急落
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1178.76ドルと、前週金曜日のLBMAの金価格のPM価格(午後3時)から2.9%下げています。この水準は金曜日のLBMAのPM価格としては5週続けて今年最低を付けることとなり、過去12週間で10回目の週単位での下げとなっています。なお銀価格においては本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.66ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)と4.6%の下げとなっています。
今週月曜日は、トルコ危機の懸念の広がりで、安全資産としてドルと円と米国債が買われる中、13ヶ月ぶりのドル高の影響で金が18か月ぶりにトロイオンスあたり1200ドルを割ることとなりました。
同日は、金曜日のトランプ政権による鉄鋼とアルミニウムへの追加関税率を倍とすることを受けて、トルコリラが20%下げていたことに加え、週末に続きエルドアン大統領が米国に譲歩しない考えを強調していることから、トルコ中銀による外貨の準備率を引き下げるという発表で多少戻したものの、トルコリラは同日も最安値を記録していました。
そしてこのトルコ危機は、新興国通貨の急落も引き起こし、インドルピーが対ドル最低値を付け、南アフリカのランドは2016年半ば以来の低値、ロシアのルーブルは先週から更に下げて2年半ぶりの低値を付け、中国の人民元は4週間ぶりの下げ幅となっていました。
火曜日金相場は、前日1.8%急落したものの、ドルインデックスが96を超えて高止まりする中、同日トロイオンスあたり1196ドル前後の狭いレンジでの取引となっていました。
同日は前日の世界株価の下げと新興国通貨の急落を引き起こしたトルコリラの下げが一服する中で米国株が5営業日ぶりに上昇していました。
そのような中、トルコのエルドアン大統領は米国製電気製品の不買運動を呼びかけたことが伝えられていました。
水曜日トルコ危機で今週月曜日に1.8%下げた金相場は前日下げ止まっていましたが、同日は1.5%の下げを見せ、昨年1月4日以来の低さのトロイオンスあたり1176ドルまで下げることとなりました。
また、ドル建てプラチナ価格が781.96ドルと14年ぶりの低値へと下げていました。これは、トルコ危機で金相場が大きく下げていることに影響を受けていますが、新興国通貨の一つとして南アフリカのランドも今週月曜日に2年ぶりの低さへ下げ、同日朝も0.2%下げていることも要因となりました。
同日トルコ情勢は、トルコ政府が米国製品一部に報復完全を課すと伝わったことから警戒が高まり、世界株価は全般下げることとなりました。
また、同日の米株価の下げは、中国ネットサービスの大手テンセントの決算結果が減益となったことから、ハイテク株が下げていることも要因となっていました。
そのような中、今週の重要指標であった米小売売上高は前月比0.5%と予想を上回り、ニューヨーク連銀製造業景況指数も予想を上回っていましたが、市場への影響は限定的となっていました。
なお、トルコリラはカタ―ルが150億ドルのトルコへの投資を約束したことで、多少ながら上昇していました。
しかし南アフリカのランドは、ムーディーズの悲観的見解やヨハネスブルグ証券取引市場で最大銘柄のナスパーズ株が31%の株を保有するテンセントの急落もあり大幅安となる中、同日も下落していました。
木曜日金相場は一時トロイオンスあたり1160ドルと2017年1月初旬の水準まで下げましたが、その後1175ドルまで戻して終えていました。
同日はトルコ危機の懸念も一服し世界株式が戻していました。また米中貿易戦争への懸念は、中国の商務次官が貿易協議のために8月下旬に訪米することが分かり、米中が貿易摩擦の緩和に向けて交渉を再開するとの期待が浮上することによって後退していました。
なお、同日発表されたフィラデルフィア連銀製造業景況指数と住宅着工件数は共に予想を下回ったことから、ドル高も落ち着いていることが金相場の下げを抑えた模様でした。
本日金曜日金相場は昨夜トランプ政権がさらなる経済制裁を行うことを発表する中で、ドルインデックスが2日連続で若干ながらも下げていることで、前日の19ヶ月ぶりの低さからは上昇し、ロンドン時間午後5時半にトロイオンスあたり1177ドル前後を推移しています。
そのような中でトルコリラが再び7%と急落後若干戻し4%の下げとなっていました。
また、中国と米国の貿易関連交渉が行われることが前日発表されたものの、トランプ大統領が米国に公平なものを得られるまでは、何の合意も行われないと述べたことから、本日他のアジア株とは異なり中国株が大きく下げています。
その他の市場のニュ―ス
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米中貿易交渉を前に、米国が強い人民元を望んでいることからも、人民銀行は金曜日に過去7日間連続で予想よりも高いレートを設定したこと。
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金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアは、今週木曜日までの4日間でその残高を3.2%減の12.8トン減少させ、773トンと2016年2月末以来の低い水準となっていたこと。これにより、シリア情勢の緊迫の高まりから残高が今年ピークとなっていた4月30日の871トンから11%減少していること。
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先週ロシアの金準備が急増していることをお伝えしましたが、2016年7月のクーデター未遂以来トルコの金準備も増加していたこと。
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今週月曜日にトルコリラが急落した際に、Googleでの検索数の変化を見ることができるGoogleトレンドでトルコ語での「金価格」検索が急増し、2011年8月の検索数を上回っていたこと。 -
週末に発表されたコメックス貴金属の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションが、トランプ大統領がイランへの経済制裁を再開し「イランと商取引する者は誰でも米国と取引できなくなる」と、各国に警告をした先週火曜日に、パラジウムを除き、全ての貴金属で引き続きネットショートとなっていたこと。
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金先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは4週連続でネットショートで、前週から54%増の196トンとこのフォーマットでデータが発表されて以来最大となっていたこと。またこのショートポジションは、過去の平均の5倍と激増。
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コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションも先週火曜日に、4週連続でネットショートとなっていたこと。そのネットポジションは、前週比87%増の1,948トンで、ショートポジションは過去の平均の5倍。
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コメックスプラチナの先物・オプションの資金運用業者のネットポジションも、先週火曜日にネットショートで、その期間も18週連続と長期に渡っていたこと。そのネットショートポジションは、前週比1.8%と多少ながら増加し、39トンとなっていたこと。
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貴金属でただ一つネットロングを保っているコメックスパラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも39.74%減の5.81トンと低い水準となっていたこと。
ブリオンボールトニュース
投資サイトのモーニングスターが、今週1200ドルを割った金が1300ドルを超えるという記事をまとめ、メリルリンチが年末までに金が1300ドルを超え、2020年までに1380ドルへ達することを予想していることを紹介し、UBSのストラテジストを含む多くの著名ファンドマネジャーのコメントと共に、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントを取り上げています。
ここで、エィドリアンはヘッジファンドが金に弱気なのは、その他の投資資産に強気であることの裏返しではあるものの、株とドルにはそのサイクルを考えると楽観的すぎるのではないかと問いかけています。
そして、長期保有の投資家にとっては価格の下げは投資機会であるために、売却者数が激減していること、そして、金を安全資産というよりも長期のポートフォリオの保険と考慮すべきとし、その場合危機が起こる前に購入する必要性を「火事になってから火災保険を買うのでは遅い」と例えて説いています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週火曜日にロンドンでテロ事件が起き、このニュースがメディアで広く伝えられていますのでご紹介しましょう。
今回のテロも、昨年3月に起こったテロ同様に、英国議会議事堂のウェストミンスター宮殿近くで車が歩道に乗り上げてサイクリストや通行人をなぎ倒すというものでした。
昨年のテロでは、実行犯も含めて6人が死亡し40人が負傷しましたが、今回は3人が怪我をしたものの入院をするほどのものではなかったとのこと。そして、この事件の容疑者はその場で警官に取り押さえられました。
容疑者はスーダン出身の英国人のサリー・カーターとのこと。英秘密情報部(MI5)や対テロ警察には知られていない人物とみられていますが、地元警察には把握はされていたとのこと。しかし、カーター容疑者は警察への協力を拒否しているために、現在は動機やテログループとの繋がりを調べているとのことです。
昨年の事件後議会議事堂周辺はこのようなテロを防ぐために鉄とコンクリートでできた柵に囲まれています。そして、防御柵は爆弾にも対応するとのこと。そして、低い城壁のような黒い壁が議事堂そのものを取り囲んでいます。また、武装した警官も増員して配置されているとのこと。
そこで、このように警戒を高めていたことも被害を最小限に抑えられた理由でもあるようです。
3月昨年のテロ以来、13件のイスラム過激派による計画と4件の極右による計画が阻止されていることも伝えられています。
ロンドン市内は暫くはまた警戒が高まることとなりそうです。