ニュースレター(2018年7月13日)1241.25ドル:米中貿易戦争が一服しドル高から金の週終値が年初来の最低値へ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1241.25ドルと、前週金曜日のLBMAの金価格のPM価格(午後3時)から1.1%下げています。この水準は金曜日のLBMAのPM価格としては今年最低となります。なお銀価格においては本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.81ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)からは1.1%の下げとなっています。
月曜日金相場は、米中貿易戦争に関して新たなニュースが無かったことから多少懸念が後退し、米株価が全般上げる中、ドルインデックスも高止まりしていた中、トロイオンスあたり1265ドルまで一時上げていました。
米株価とドルインデックスが上昇していたのは、先週の良好な雇用統計からも今週発表される米主要企業の決算が良いという観測からのようでしたが、金の動きは、米中貿易戦争などの懸念は根強いこと、先月から金が大きく下げていたことへの調整の上昇であったようです。
なお、同日はロンドン早朝に辞任が伝えられたデービット・デービスEU離脱相同様に、ボリス・ジョンソン外相がメイ政権のEU離脱の方向性に同意できないことから辞任したことがロンドン時間午後に伝えられ、ポンドが弱含み、ポンド建て金相場がトロイオンスあたり10ポンドほど急上昇していたことから、英国のEU離脱の懸念が高まっていることも要因ではあった模様です。
火曜日金相場は、ドルインデックスが強含む中で前日の上げ幅を失いトロイオンスあたり1247ドルまで下げたものの1256ドルまで戻して終えていました。
この下げは、同日発表されたユーロ圏のZEW景況感調査が予想を下回りユーロが弱含む中ドルが相対的に上げ、また米株価がペプシコなどの好決算を好感して上昇していたこと等からでした。
水曜日金相場は、世界株式が米中貿易戦争への懸念が高まる中下げ、ドルインデックスが上昇する中、トロイオンスあたり1241ドルまで一時下げていました。
米中貿易戦争への懸念は、トランプ政権が前夜、中国の知的財産侵害に対する制裁関税の追加措置として、食料品や衣料・素材など2000億ドルに相当する中国からの輸入品に10%の関税を9月以降に課すと発表し、同日中国も報復に動く方針を示していた事からでした。
また、同日から欧州を訪問しているトランプ大統領が、NATO首脳会議でドイツに対し、エネルギー供給をロシアに依存していることを批判した事が伝わったことも、投資家心理を冷やした模様です。
また、同日発表された米生産者物価指数は6年ぶりの高い水準となったことも、FRBの利上げ観測を広げ、ドルが強含み金相場を押し下げる要因となりました。
木曜日金相場は、貿易戦争への懸念が多少後退しドルが多少弱含み株価が前日の下げから反発する中、トロイオンスあたり1248ドルまで一時上昇していました。
貿易戦争への懸念が後退したのは、前日トランプ政権が2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する制裁関税の追加措置案を発表したことに対し、中国からの報告措置が出ていなかったことからでした。
また同日発表された市場注目の米消費者物価指数は、前月比0.1%と予想の0.2%を下回っていましたが、食品を除くコアの指数は予想と同じ0.2%と市場に大きな影響を与えるものではありませんでした。
そして、同日閉幕したNATOにおいては、前日はドイツがロシアからの燃料に依存していることを批判したトランプ大統領が急遽記者会見を開き、加盟国が2024年までに国防支出をGDPの2%に増やす目標を前倒しすることで合意したと発表するとともに、米国のNATO離脱を否定したことから懸念が後退していました。
本日金曜日の金相場は、ドルインデックスが94.78と高止まりしていることからも、トロイオンスあたり1241ドルへと緩やかに押し下げられています。
ドル高の背景は、米企業の好調な業績期待からのようですが、米中貿易摩擦を巡りさらなる悪材料が出ていない事も米株高やドルの高止まりを支えているようです。
なお、昨日から英国を訪問しているトランプ大統領は、英国のタブロイド刊紙のサンとのインタビューで、メイ首相がまとめたソフトブレグジット方針について、米国との二国貿易協定に向けた動きを潰えるものと批判したことが伝えられ、英国ポンドが安含んでいたこともドル高を支えた模様です。
その他の市場のニュ―ス
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金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は今週も木曜日までで既に7.1トン減少をし795トンと、昨年8月半ばの水準まで下げていたこと。 -
先週4日が独立記念日で祝日であったために一日遅れで発表されたコメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に金価格が前日の今年最低値から戻す中、金とパラジウムは多少ながら増加し、銀とプラチナは減少させていたこと。 -
コメックスの金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に2.51%と少ないながらも増加し、13.347トンとなっていたこと。これにより、前週の2年半ぶりの低い水準から増加していたものの、未だ過去10年の平均の3.3%。
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コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に52%下げ、1,656トンと3週間連続で下げていたこと。
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コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは先週火曜日に12週連続でネットショートで、そのポジションは7.43%増の43トンとなっていたこと。これにより、プラチナのネットショートポジションは3週続けて2006年6月にこのフォーマットでレポートが発表されて以来の最大の水準を更新。
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コメックスのパラジウムの先物・オプションのネットロングポジションは金同様に、2.23%と多少ながら増加し、20トンとなっていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週、米中の貿易戦争や英国のEU離脱問題などで弊社における金購入が大幅に伸びていたことが、日英の主要メディアで伝えられています。
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ブルームバーグ日本「個人の金需要、欧米で急増の動き-米中貿易摩擦などで安全資産に注目」
この記事では、今週水曜日までの一週間のネット購入量(購入量から売却量を差し引いた量)が、過去1年間の5倍に急増していたことが取り上げられ、ブリオンボールトの顧客の90%が欧米居住であるとし、米中の貿易戦争や英国のEU離脱問題やトランプ大統領がNATO加盟国を批判したこと等への懸念から、安全資産としての金の需要が伸びたと紹介しています。
そして、日本国内の傾向として田中貴金属の6月の金販売量が前月の2倍で1年8ヶ月ぶりの高い水準となったこともレポートし、これは価格の下げのタイミングを狙ったもので、米中貿易摩擦の激化は材料にはなるが価格動向へ反応をする傾向が強いという田中貴金属のコメントも取り上げています。
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英主要日刊紙ディリーメイル「貿易戦争が金需要を押し上げる」
この記事では米中の貿易戦争への懸念から、投資家が価格の下げで金の購入を進めたと、弊社の水曜日のデータ、81ポンドの重量で110万ポンド(1億6300万円)相当の金が、トロイオンスあたり1244.79ドルと6ヶ月ぶりの低さへ下げた水曜日に購入されたと紹介しています。そして、リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメント「直接の要因は価格の下げだった」も取り上げています。
そして、本日が13日の金曜日と欧米においては縁起の悪い日であることから、この日に見られるバーゲンとして、英主要日刊紙が記事をまとめ、弊社のデータを取り上げています。
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英主要日刊紙テレグラフ「なぜ13日の金曜日がふ不思議なバーゲンを生み出すのか。そしてその利用法」
13日の金曜日は縁起が悪いために運転に気を付けるために保険の請求が少ないこと、この日に旅行する人が少ないために旅行費用が少ないこと、住所やアパートの番号が13の不動産は安く買えること、結婚式場も安く提供していることをデータで紹介し、そして、投資においてエィドリアンのコメントを紹介しています。
ここで、エィドリアンは13日の金曜日に新たな取引を始める人は少ないとし、2015年のデータでは、その前後4週間の金曜日と比較して取引量が45%下げていたというコメントを紹介しています。
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英国主要日刊紙インディペンデント「大きな節約をもたらす可能性のある13日の金曜日を楽しみましょう」
ここでも保険と不動産業界におけるバーゲンを紹介し、投資においては弊社の取引量が2015年の13日の金曜日に平均して39%下げていたと取り上げています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国は水曜日のワールドカップ準決勝イングランド対クロアチア戦で52年ぶりに決勝に進出となるのかで盛り上がっていましたが、ご存知のように残念ながら決勝に進むことはできませんでした。当初はグループステージを超えて準々決勝まで勝ち進められたら上々と言われていたチームが、予想以上の活躍をしたことから、もしかしたら優勝の可能性もありとまで期待が高まっていただけに、サポーターの人々の落胆ぶり、そして選手やチームマネジャーの肩を落とす姿は、見ているのも辛くなるようでした。
明日は3位決定戦があるようですが、まずは4年後を目指し再出発をしてもらいたいものです。
そこで、本日は昨日から英国を訪問しているトランプ大統領関連のニュースが英国主要メディアではトップニュースで報道されているのでその一つを番外編としてお伝えしましょう。
それは「トランプベイビー」巨大風船についてです。これは、トランプ大統領への抗議として、活動家がクラウドファンディングで資金を集め、トランプ大統領を模倣した赤ちゃんのヘリウムガスの巨大風船を飛ばすという計画を発表し、ロンドン市場が許可をしたことから、本日行われたのでした。
この巨大風船はや約6メートルの高さで、国会議事堂の前にあるパーラメントスクエアという広場の上空に2時間ほど浮かべられたようです。クラウドファンディングは1000ポンド(約15万円)であったので、開始から24時間以内に目標に達したとのこと。また、この計画に許可を求める署名運動には1万人以上が署名をしたとのことです。
この飛行を許可したサディック・カーン市長は、トランプ氏が昨年6月にロンドンで起きたテロ攻撃についてツィッターなどでカーン氏の対応を批判したこと等からも、トランプ大統領が大統領就任後にメイ首相が招待をした英国公式訪問には、野党・労働党のコービン党首や同時の野党・自由民主党のファロン党首と共に反対というコメントも出していました。
その後、世論においても公式訪問への反対意見も強く、今回の訪問は実務訪問へ格下げとなっています。
本日はロンドン市内でも6万人の抗議デモがあったとのことですが、昨日のNATO首脳会議後の記者会見でトランプ大統領は、英国各地で予定されている反トランプデモは「別に構わない」と言い切り、「英国民は私のことが大好きだと思う」と意に介さない姿勢を示していました。
トランプ大統領に彼の政策への抗議や反対意見を述べる方法としては、「トランプベイビー」が効果的であったとは思えませんが、反トランプ大統領の英国の活動家の人々にとっては、主要メディアの見出しを飾るという目的を達成した行動ではあったのでしょう。