ニュースレター(2018年6月8日)1299.25ドル:ECBの利上げ観測からのユーロ高とG7首脳会談への懸念が金をサポート
週間市場ウォッチ
今週金曜日のロンドン時間3時の弊社チャート上のスポット価格はトロイオンスあたり1299.25ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格から0.3%上げています。なお、銀相場においては、先週金曜日のLBMA価格と比較すると2.1%上げています。
月曜日金相場は、前週金曜日の下げの反発もあり一時トロイオンスあたり1297ドルへと上昇したものの、その上げ幅を失って1291ドルで終えていました。
これは、南欧政局への懸念が後退したこと、金曜日の18年ぶりの低い失業率など好調な米雇用統計を受けて世界株価が上げる等、投資センチメントがリスクオンとなっていたことからでした。
また、来週のFOMCでの利上げは市場は織り込み済みですが、今後の利上げペースはFedWatchツールによると年間で3回から4回へとペースが速まる観測が広まっていることも金の頭を押さえていたようです。
火曜日金相場はドルインデックスが弱含む中でトロイオンスあたり1300ドルまで一時上げたものの1297ドルで終えることとなりました。
同日はロンドン昼過ぎにISM非製造業景況指数が発表されて、結果は予想を上回り100ヶ月連続の経済の拡大(50を超える数値)を示していました。そのためにドルは強含んでいましたが、米株価はナスダックを除き前日の上昇からの調整の下げをその後見せていました。
また、イタリアのコンテ新首相は所信表明演説で歳出拡大で景気を刺激する方針を示し、放漫財政やEUとの関係悪化への懸念からイタリア株価が下げ、国債利回りが上昇していましたが、EU離脱は無いとしたことでユーロが反発することとなりました。。
水曜日金相場は世界株価が全般上昇し、ナスダックが3日連続で史上最高値を記録する中、トロイオンスあたり1294ドルから1301ドルのレンジで推移することとなりました。
なお、ユーロ建て金相場はユーロが強含んだことから、2週間ぶりの下げとなっていました。
これは、ECBのプラート専務理事が同日の講演で今月の理事会で資産購入の縮小について議論すると示唆したと伝わったことからでした。
木曜日金相場は、ドルインデックスが多少弱含む中、トロイオンスあたり1300ドルを挟んで前日とほぼ同じ1295ドルと1302ドルのレンジでの取引となっていました。
同日は良好な米新規失業保険申請件数後にトロイオンスあたり7ドルほど下げましたが、市場は既に翌日からのケベックでのG7首脳会議での貿易関連の交渉への懸念もあり注目を移していた模様です。
本日金曜日は、貿易摩擦関連の交渉となるであろうG7首脳会議を見守る中、水曜日と木曜日とほぼ同様のレンジでの動きとなっています。
なお、この間世界株価は全般横ばいもしくは下げており、また経済指標の悪化から南アフリカの通貨ランドが継続して下落しており、ブラジルやアルゼンチン等のリスクへの懸念は金のサポートとなっているようです。
その他の市場のニュ―ス
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金銀比価が一時は80:1に至るまで下げていた銀相場は、木曜日に6週間ぶりの高さのトロイオンスあたり16.90ドルと上昇し、金銀比価は76.37:1まで下げていたこと。
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三井物産、ドイツ銀行、バークレイズ等の貴金属市場参加者の市場からの撤退ニュースが続く中、今週水曜日にはスコシアバンクがその貴金属ビジネスの規模を半減させることが伝えられていたこと。 -
金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週は木曜日までに3.8トン減少し832トンと、今年2月末の水準へと下げていること。そして既に先週金曜日までに5週連続の週間の下げとなっていること。 -
先週末に発表されたコメックス貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、世界株価がイタリア政局の懸念で急落した先週火曜日に、パラジウムを除いて増加(もしくはネットショートが減少)していたこと。 -
金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日まで2週連続で減少後に、139.88%増で190トンと2016年1月以来の低い水準から増加していたこと。 -
また銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションも4週連続のネットショートから、先週火曜日に134トンのネットロングとなっていたこと。 -
そしてプラチナの先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、8週連続でネットショートではあったものの、そのポジションは9.19%減少し28.51トンとなっていたこと。 -
しかしパラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、6.88%減の25トンとなっていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週は弊社が毎月まとめている金投資家インデックスの5月数値が発表され、金関連情報を日本語で網羅し発信しているゴールドニュースサイトで、【金投資家インデックス】新規の金投資家数が4年ぶりの低さへ下げると取り上げていただいています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では英国のEU離脱のブレグジット(Brexit)に関するニュースが見出しを飾っています。
それは、EU離脱派でも「ハード・ブレグジット」派のデービット・デービスEU離脱担当相とボリス・ジョンソン外相が公的に出したコメントからでした。
ご存知のように英国のEU離脱は2016年の国民投票で僅差ながらも離脱が決定され、2017年3月29日にメイ首相がリスボン条約の第50条を発動すべくトゥスクEU大統領にEU離脱を通告しています。その後、2年間が離脱条件に合意するための期間となりますので2019年3月29日が離脱の日となります。
しかし、EU加盟国前28ヶ国が合意することで移行期間を設けることができ、2020年12月31日までとすることが今年3月に合意されています。そして、この合意が行われた際の条項の一つが、英国領北アイルランドとアイルランドの国境問題で、「アイルランドと国境管理を伴わない措置で合意しない限り、英領北アイルランドはEU単一市場および関税同盟にとどまる」というものでした。
メイ首相は昨年6月の総選挙で、政府与党の保守党は過半数を失い、メイ首相は北アイルランド政党の民主統一党(DUP)のサポートが必要となり、アイルランドの国境管理問題はメイ首相にとっては政権を運営する上で無視できないものです。このために、アイルランド問題が足かせとなって離脱交渉が遅々と進まないといっても過言ではないかもしれません。
そこで、今週はEUからの明確な離脱を望むディビスEU離脱担当相が、アイルランドの国境管理問題の補完措置(合意できなかった場合のため)については、期限を付けるべきと主張し、それが無い場合は辞任も辞さずと伝えられるなど、メイ首相が自分の閣僚に条件を突きつけられていました。
そして本日はジョンソン外相が昨夜行った保守党のサポーターとの小規模なレセプションでのスピーチが参加者が個人的に録音したと思われるオーディオがBuzzfeedというメディアによって入手され発表されたことから、トップニュースで取り上げられています。
それは、メイ政権のEU離脱交渉の戦略が「ガッツ」が無いとの批判であり、アイルランド問題は「ことに足らないもの」とし、ハモンド財務相を中心とした財務省は「残留派の中心」と呼び、EU離脱交渉は「メルトダウン」へと向かっているというような、批判に満ちたものでした。それに加え、トランプ大統領がEU離脱交渉を行っていたら「激しい交渉で多くの失敗や大混乱が起こるかもしれないが、ある一定の進展はあるかもしれない。」とまでコメントしています。
メイ首相は昨日の閣議である程度のアイルランド問題は進展が見られたことを良しとして、本日からのG7首脳会談へ向かったものの、先のニュースで彼女の首相としての弱さが再び露呈することとなり、今後のEU交渉が懸念されています。
先月末に実施されたユーガブ社の最新の世論調査では、「離脱を決めたのは間違いだった」との回答が「正しかった」を7ポイント上回り過去最高となったとのこと。メイ政権の混迷を見れば、この結果も理解できますが、英国にEU離脱以外の選択肢はありません。EU離脱交渉がメルトダウンになる前に、政権立て直しなどの何らかの措置が行われることを強く願うばかりです。