金市場ニュース

ニュースレター(2018年3月29日)1323.85ドル:貿易戦争の懸念後退、好調な米GDP、中朝首脳会談による緊張緩和等で金は大きく下落

英国は明日からイースター(復活祭)の祝日で4連休となります。そこで、ニュースレターを本日お届けします。

週間市場ウォッチ

今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1323.85ドルと前週同価格から1.7%下げています。しかし、前四半期比では2.1%上げており、昨年同四半期最終日比では、6.3%の上げとなっています。


月曜日金相場は、株式市場が先週の下げから反発して上昇する中、トロイオンスあたり1356ドルと5週間ぶりの高さへ一時達するなど、緩やかに上昇していました。


 


まず株式市場の上昇は、中国が米国との貿易摩擦の激化を回避するために柔軟な姿勢を示したとの見方が広がっていたことから、また先週の下げの調整もあったようでした。


 


しかし、英国で起きたロシア元2重スパイの暗殺未遂事件にロシアがかかわった可能性が高いとのことで、トランプ政権下の米国を含むEU主要国等が、ロシアの外交官を国外追放したことから、地政学リスクの高まりからもドルインデックスは5週間ぶりの低さへ下げたことが金相場をサポートすることとなりました。


 


火曜日金相場は、ドルが強含む中で前日の上昇分を失いトロイオンスあたり1340ドルまで一時下げることとなりました。


 


同日ドルが強含んだのは、前日米国と中国が貿易摩擦回避に向けて交渉していることが明らかになったことから、米株価が大きく上昇したことを受けて、同日アジア株と欧州株が上げるなど、先週後半の過度の懸念が和らいだことからでした。


 


また、同日金正恩氏が訪中の可能性があると伝えられていたことも、韓国ウォンを強めるなどドルを強めることとなりました。


 


水曜日金相場はドルが強含む中トロイオンスあたり1324ドルへと4週間ぶりの大きな下げを見せることとなりました。


 


この背景は同日発表された米国第4四半期GDPが予想の2.7%を上回る2.9%と好調であったことがドルを強め、その後アトランタ地区連銀のボスティック総裁がFRBが中立金利に向けて利上げ継続の必要があると見解を示したことが伝えられ、前日は5週間ぶりの高さまで上げていた金の利益確定の売りなどからも下げ幅を大きく広げることとなりました。


 


また、北朝鮮の金正恩委員長が中国を訪問し、習近平国家主席と会談が行われ「非核化への強い決意を表明した」ことが伝えられたことも、緊張緩和という意味で金売りの材料となった模様です。


 


なお、前日ナスダックの1日の下げ幅としては2016年以来の大きな下げを引き起こしたFANGs – Facebook, Apple, Netflix and Google は史上最大の1日の下げ幅を記録していましたが、同日もAmazonとNetflixが4%下げるなど、引き続きボラティリティの高い動きをしていました。


 


この背景はトランプ政権がアマゾンへの課税を強化する可能性が報じられたことなどからですが、ファイスブックによる個人情報の流用問題からの規制の強化や中国企業による米ハイテク企業の買収制限、米ウーバーテクノロジーズが米アリゾナ州で試験運行していた自動運転車による死亡事故を受けた自動運転車への疑念も関連株を下げていることからも、市場心理は悪化していた模様でした。


 


木曜日金相場は、明日からの欧米の復活祭の祝日を前に取引薄である中、昨日大きく下げた水準のトロイオンスあたり1323ドル前後の狭いレンジで推移しています。


 


本日は昨日大きく下げたハイテク株も、トランプ大統領がツィッターで納税額の少なさをコメントしたアマゾン以外は持ち直すことで、投資家心理が改善している模様です。 なお、FRBが重要視すると言われている米個人消費支出(PCE)デフレーターは、予想と変わらず0.2%と物価上昇の鈍さが目立ち、FRBによる利上げペースも動きは無いという見方となっている模様です。

その他の市場のニュ―ス

  • 金ETFのSPDRゴールドシェアの残高は今週水曜日までで4.4トン減少し、846トンとなっていること。


  • 銀が金の上げ幅に劣る動きをしていることから、金価格と銀価格の比率を表す金銀レシオが2年ぶりの低さの81.2を今週月曜日につけていたこと。


  • 先週末発表された先週火曜日のコメックス貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、FOMCの政策金利が発表される前日であったことからも、先週に引き続き、全ての貴金属でネットロングが減少していたこと。


  • 金の先物・オプションの先週火曜日の資金運用業者のネットロングポジションは、16.35%減の378トンで、2週連続減少で今年最も低い水準であったこと。

  • 銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日も6週間連続でネットショートで、そのネットショートポジションは2006年6月にこのフォーマットで記録されて以来の最大で5470トンとなっていたこと。


  • プラチナの先物・オプションのネットロングポジションもまた、先週火曜日に23.69%減の30トンと、4週連続で減少し、今年1月9日以来の低さへと下げていたこと。

  • パラジウムの先物・オプションのネットロングポジションも5.17%減で37トンと、2016年11月15日以来の低い水準へと下げていたこと。

ブリオンボールトニュース

 

CNBCのMoneyControl番組で、ブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュがインタビューを受け、2018年の第1四半期の金相場についてまとめ、第2四半期以降の相場予想について答えています。

第1四半期で特筆すべきことは、①2013年以来の最も高い金の四半期の終値であること②2四半期連続で実質金利の上昇と共に金が上昇していること③米国株価が2015年以来初めて四半期比で下げ(る模様)、株価下落時に金が上昇したのは2011年以来。このような金にとってはポジティブな新しいパターンが見られたこと。

金相場予想としては、1340ドルがクリティカルレベルだが、これを超え1375ドルを超えれば、1400ドルの可能性が見えてくる。これには、FRBなどの主要中銀の政策金利が鍵となるとし、もしインフレが伸び悩み、政策金利の引き上げが停滞すれば金にとっては追い風となるとしています。

 


今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。


 


 

ロンドン便り

今週も英国では先週に続き、ロシアの元2重スパイであったスクリパリ氏とその娘のユリアさんの毒殺未遂事件の進展状況が日々主要メディアで取り上げられています。今週の新たな動きは、ロシアの外交官を米国を含むEU主要国が追放したこと、またこの毒殺未遂に使われた神経剤が大量にスクリパリ氏の玄関のドアで感知されたことなどですが、今週は少し政治から離れてスポーツに関するニュースをお伝えしましょう。

本日お伝えするニュースは、日本ではあまり知られていない英国発祥のクリケットというスポーツで、オーストラリアの代表選手が試合中に不正を行ったことが発覚したというものです。

この不正は今月24日のオーストラリア対南アフリカの試合中に起こったのですが、オーストラリア代表チームのキャメロン・バンクロフト選手が粘着テープのようなものをボールにこすりつけている場面がこの試合を放映したテレビカメラに写っていたことから問題となり、関わった選手がその不正を認めたことからも、昨日オーストラリアのクリケット協会は、この不正に関わった代表チームの主将スティーブ・スミス選手と副主将のデビット・ワーナーとバングロフト選手3名に対し、最大1年間の出場停止処分を科すと発表したのでした。

クリケットは16世紀初頭の英国のチューダー朝時代まで遡ることができる伝統的な英国発祥のスポーツで、英国連邦国のインド、パキスタン、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどを中心に100以上の国と地域で現在は活発にプレーされており、その競技人口はサッカーに次ぐ世界3位と言われています。

そして、このスポーツは英国では著名な公立、私立校などでプレーされる紳士のスポーツとも言われており、世界でも有数の選手であるオーストラリアのスミス主将も関わっていたことからも、今回の不正事件の衝撃は英国においても大きかったようです。

不正が発覚したその日には、即座にターンブル豪首相は「国民の模範でクリケットはフェアプレーの代名詞だ、信じられない、おおいに失望している」と述べていることからも、このような不正は過去にも稀であったことがお分かりいただけるでしょう。

本日ロンドン時間午後にはオーストリア代表チームのリーマンコーチも辞任しており、このチームや選手のスポンサー企業のLG社や朝食のシリアルWeet-Bixのサニタリウム社もスポンサーから降りることになるようで、選手やチームへの経済的なダメージも大きくなりそうです。

プロであるから勝つことで収入も増え、勝ち負けへのこだわりが出るのでしょうが、勝つために手段を選ばないという考えを持ってしまったのであれば、国民や特に若い世代の模範でもあるべき国の代表選手としての認識が足りなかったのではないかと、才能のある選手達の今後も思い、残念に思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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