ニュースレター(2018年12月21日)世界株価急落で安全資産への需要から金は5ヶ月ぶりの高さへ
私は来週月曜日から休暇をいただき、年末には日本に入り、ロンドンオフィスへ戻りますのは1月15日となります。
そこで、ニュースレターの更新はこの間は簡易的となり、多少日程もずれる可能性があることをご了承ください。なお、次回のニュースレターは、12月30日に発信を予定しています。
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1258.17ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.8%上げています。また銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.69ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.8%上昇しています。
今週は、米中貿易摩擦や中国経済の減速等で世界的な景気減速懸念で世界株価が下げる中、米連邦準備制度理事会が19日にこれまでの利上げペースを緩めることを期待していた市場は、その内容が期待よりも「ハト派的」でなかったこと、また米国のつなぎ予算案を巡るトランプ政権と民主党の軋轢で本日から政府機関一部が閉鎖される懸念もあり、ダウ工業30種平均の下落率が今月10%に達するなど、世界株価が全般大幅に下げる中で、金は7月10日以来の高さへと上昇することとなりました。それでは、その動きを曜日ごとに追ってみましょう。
月曜日金相場は今週火曜日と水曜日に行われるFOMCを前に、ドルインデックスが金曜日の19か月ぶりの高さから下げ、調整及び持ち高解消の売りで欧米株価が2営業日連続で大幅に下げる中、トロイオンスあたり1248ドルへと一時上昇していました。
同日はニューヨーク連銀製造業景気指数が発表され、予想20.0と前回23.3を大幅に下回る10.9であったことから、すでに前週金曜日に米中の指標悪化で経済停滞への懸念が高まっていたことからも、市場が強く反応することとなりました。
その後、著名債券投資家のジェフリー・ガンドラックCEOが「株価は弱気相場に入った」、「FRBは今週利上げすべきではない」と述べ、トランプ大統領も利上げをする可能性について「FEDが利上げを検討していること自体が信じられない」と述べたことも要因になった模様です。
火曜日金相場は、前日の上げ基調を受け継ぎ一時1250ドルまで上げた後に多少押し戻されましたが、翌日のFOMCの結果を待つ中で狭いレンジでの取引となりました。
なお、同日世界株価は前日ほどの下げを見せなかったものの、中国の習近平主席の改革開放40周年大会の演説で新たな経済刺激策などに触れることがなかったことは下げの要因となったようです。
水曜日金相場は、FOMCの政策金利発表を待つ中、一時トロイオンスあたり1258ドルと5か月ぶりの高さまで上昇していました。
これは、市場が0.25bpの利上げは予想しながらも、同日のFOMCの声明とパウエルFRB議長の記者会見がハト派的であろうと見ていたことからでした。そのために、株価は日経225を除きほぼ全般上昇し、米長期金利は2.81%まで下げていました。
また、米中貿易交渉の進展への期待も株価を上昇させていました。それは、前夜ムニューシン米財務長官が、中国の構造改革を巡る貿易協議を2019年1月に開く方向で中国と調整していると米メディアとのインタビューで明らかにし、中国政府もまた来年1月から自動車分野の外資規制を緩和すると伝わったことなどからでした。
しかし、FOMCの結果が発表後は金相場は一時1241ドルまで下げることとなりました。これは、FOMCで予想通り0.25%の利上げが行われ、翌年の利上げは2回とこれまでの3回から減ったものの、声明とパウエルFRB議長のコメントでは、「経済活動は力強いペースで拡大している。」、「バランスシートを正常化する政策について、変更は想定しない。」とするなど、ハト派的ではないと解釈されたことからでした。
これにより、同日の米国株価はダウ工業株30種平均が年初来の安値、ナスダック総合株価指数は昨年10月以来の安値を付けていました。
木曜日金相場は今年7月10日以来の高さのトロイオンスあたり1266ドルを一時つけて、前日の終値から1.7%上昇していました。
これは、前日のFOMCとパウエルFRB議長の記者会見が市場が期待するほど「ハト派的」ではなかったことで、米国株価が大きく下げた基調を受け継ぎ、アジアと欧州株も下げる中で、ドルが弱含み、同日の米国株価はナスダック総合指数が一時弱気市場入りとみられる直近の高値から20%下げ、ダウ工業30種平均とS&P500種も年初来の安値と下げ幅を広げていたことから、リスクオフの動きが出たことからでした。
また、同日発表のフィラデルフィア連銀製造業景気指数は予想と前回を大きく下回り、米新規失業保険申請件数も前回を上回ったことも要因となったようです。
そして、ニューヨーク時間にトランプ大統領が上院が可決した2019年度つなぎ予算の中に、メキシコとの国境に建設する壁の予算が含まれていないことから、大統領署名を拒否したことで、本日までに合意がない場合は政府機関一部が閉鎖されることになる懸念も、ドルを下げて金が買われる要因となったとのことです。
本日金相場は、クリスマス休暇に欧米トレーダーが入る中で、前日の上げ幅をほぼ維持し、トロイオンスあたり1259ドル前後を推移しています。
世界株価は、アジアと欧州は下げる中で、米国主要株価指標は、ロンドン時間夕方にナスダック総合指数以外は自律反発狙いの買いもあり前日比多少ながら上昇しています。
また、本日中国政府が2019年に更なる金融政策で経済をサポートすると述べたことが伝えられたことでドルは多少強含んでいます。
なお、本日期限を迎える米連邦予算の一部を巡りトランプ政権と民主党の対立が激化しており、トランプ大統領はツイッターに「民主党が国境の安全を支持しなければ政府機関は今日閉鎖される!」と投稿したことが伝えられています。
その他の市場のニュ―ス
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金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までで5.6トン増の769トンと今年8月20日以来の高さへと増加していたこと。そのうち、火曜日には8.2トン増と、一日の増加量としては今年10月10日以来の高さとなっていたこと。 -
先週末に発表されたコメックス貴金属先物・オプションの資金運用業者ポジションは、先週火曜日に米中貿易戦争への懸念が後退していたものの、ブレグジットなどの欧州の政治リスクが高まっていた際に、金と銀が強気ポジションを増加させ、プラチナとパラジウムが弱気ポジションを高めていたこと。 -
コメックス金先物・オプションに関しては、先週火曜日に資金運用業者のポジションは7月以来のネットロングで、そのポジションも6月以来の高さの32トンとなっていたこと。
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またコメックス銀先物・オプションの資金運用業者ポジションは、先週火曜日に引き続き22週連続のネットショートでありながらも、そのポジションを60%減少させ、1395トンと8月7日以来の低い水準となっていたこと。 -
それに対し、コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者ポジションは、先週火曜日に7.89トンのネットショートへと5週連続のネットロングから切り替わっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用業者ポジションは、先週火曜日に引き続きネットロングでありながらも、5.98%減の42.7トンとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は多くの欧米諸国はクリスマス休暇で25日と26日が祝日であることから、発表される指標数は限られていますが、26日の日銀金融政策決定会合議事録と黒田日銀総裁の発言、米国ケース・シラー住宅価格指数、リッチモンド連銀製造業指数、27日の米国新規失業保険申請件数、米国新築住宅販売件数、米国消費者信頼感指数、28日の米国シカゴ購買部協会景気指数などが重要指標となります。
ブリオンボールトニュース
米国主要経済サイトのMarketWatchの記事
先週金曜日に安全資産を求めてドルが強含む中、金が下げたことをまとめた記事では、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが「利上げと堅調な株価の中で、金は2018年に注目するに値する動きをしていた。特に、消費者の需要が弱まり、金産出量が記録を出す見通しの中でだ。地政学的リスクの悪化、金のETFのポジションが堅固であること、そして価格の下げでの購入なども金をサポートしていた。」とコメントしています。
日経グループの情報ベンダーQuick「不安のマネー、緩やかに着実に金へ 投機筋も個人投資家も」
この記事では、投機筋の動きとしてComexのデータを紹介し、個人投資家の動きでブリオンボールトを取り上げていただきました。
弊社の日本における正規媒介代理店のブリオンジャパンが、今週から同社の事務手数料を1%へと値下げしています。
この事務手数料は、資金を同社の日本の送金用銀行口座から英国の弊社取引銀行の顧客口座へ送金する際の手数料として同社が設定していたものですが、今回の値下げにより、弊社サービスを日本からご利用になる手数料がより安くなりましたのでご検討ください。
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今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2018年12月17日~21日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2018年12月24日~28日)来週の予定をまとめています。 -
2019年金価格:今年を振り返って
ロンドン便り
今週英国では、木曜日午後9時から数機のドローンがガトウィック空港内で滑走路に侵入したために、空港が閉鎖されています。本日午前中に空港が開いたというニュースが流れていましたが、今晩再びドローンの飛行が確認されたとのことで空港が閉鎖されたことが特報で伝えられていました。
すでに英国陸軍が警察を支援するために派兵されていますが、19日の滑走路閉鎖以降影響を受けた利用客は12万にに上っているとのことで、クリスマス休暇で最も混雑が予想されている英国でヒースロー空港に次ぐ規模のこの空港が閉鎖されたニュースは日々トップニュースで伝えられています。
ガトウィック空港に到着予定であった旅客機は英国内の他の飛行場や、パリやアムステルダムにも変更を余儀なくされたとのこと。
また、英国の民間航空管理局は、今回の事態を「非常事態」と判断し、航空会社が賠償金を支払う必要はないと述べているようです。
英国では、空港やその敷地から1キロ以内でのドローンの使用は違法であることから、GPSを持つドローンはこの禁止地域の中では飛ばすことができなくなっているとのこと。そのために、今回のドローンは意図的にこの機能を停止させる改良がされているものか、元々この機能が無い古いものとも推測されています。
すでに新婚旅行でニューヨークに出かける予定だったカップルが、追加7000ポンド(約98万円)支払って別の空港から飛んだというエピソードや、サンタクロースに会いにラップランドへの旅行を計画していたお子さん連れの家族が楽しみにしていた旅行がキャンセルになってしまったなどというエピソードも紹介されていますが、一日も早い事態の解決を祈るばかりです。
それでは、先でもお伝えしましたが、私は来週から休暇に入り年末には日本へと入るため、ロンドン便りは今年最後のお届けとなります。
本年も弊社ニュースレターをご購読いただきありがとうございます。新年もよろしくお願いいたします。