ニュースレター(2018年10月19日)世界同時株安、サウジアラビア、イタリア、英国を巡る地政学リスクへの懸念で金相場は2ヶ月ぶりの高さへ上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1228.14ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.7%上げ、週の終値ベースでは今年7月20日以来の高さへと上昇しています。また銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.60ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)とほぼ同レベルとなっています。
今週金相場は、世界の同時株安、サウジアラビアの反体制記者の失踪事件、イタリアのポピュリスト政権による財政赤字を増加させる予算案、英国のEU離脱を巡るEU首脳との交渉の混迷等から、ほぼ2ヶ月ぶりの高さへと上げていました。それでは、その動きを曜日ごとにお伝えしましょう。
月曜日金相場は、トロイオンスあたり1231ドルまで上昇し、7月26日以来(2月半ぶり)の高さとなっていました。これは、前週世界株価が急落した事によるリスクオフが同日も続き、ダウ工業株30種平均が反落していたこと等からでした。
また、同日発表された9月の米小売売上高が低調だったこと、サウジアラビアの記者殺害疑惑で国際情勢が不安定になるとの警戒感があったこと、週末に行われたドイツ南部バイエルン州議会選挙で与党が大敗し、メルケル独政権への逆風が意識されたこともリスクオフの基調を強めていました。
なお、記録的な水準にショートポジションを増加させているコメックスなどの派生商品市場で先週木曜日以降に起きているショートカバーも一因であるとのことでした。
火曜日金相場は、世界株価が落ち着きを取り戻し上昇する中、前日同様に12週ぶりの高さの1232ドルを試していました。
米国株価が上昇していたのは、同日発表されたゴールドマンサックスなどの金融機関の決算結果が良好であったことからですが、欧州株は前日イタリア連立政権が19年度予素案案を議会が承認したことで懸念を後退させていました。
水曜日金相場は、同日発表されるFOMC議事録を待つ中、一時トロイオンスあたり1229ドルを付けていましたが、FOMC議事録発表前から緩やかに下げ1222ドルで終えていました。
FOMC議事録は特にサプライズは無かったものの、12月の利上げ観測を高めることとなり、長期金利が上昇することで株価が下げることとなりました。なお、前日トランプ大統領はFRBを「最大の脅威」と批判し利上げをけん制していました。
また欧州においては、月曜日にイタリア政府が承認した予算案を欧州委員会が拒否する懸念と、翌日まで行われるEUとの首脳会議での英国のEU離脱関連の交渉混迷への懸念、そしてサウジアラビアの著名ジャーナリストが行方不明になっていることに関し、サウジアラビア政府の関与の可能性が高まっていたことから、IMFのラガルド専務理事が同国訪問を延期する等懸念も高まっていました。
木曜日金相場は、ロンドン時間午後に米国株価が1%を超えて下げる中、一時トロイオンスあたり1230ドルへと上昇していました。
同日は中国の景気減速懸念からアジア株が全般下げ上海総合株式指数が3%近い大幅安となり、米長期金利も上昇していたことからも、米国株価が前日に続き下げていました。長期金利の上昇は、前夜発表されたFOMC議事録で継続的な利上げが確認されたことからでしたが、同日サウジアラビアを巡る地政学リスクが高まったことも要因となりました。
それは、ロンドン時間午後にムニューシン米財務長官がサウジアラビアでの経済フォーラムを欠席することが伝えられ、英国とフランスとオランダの代表も欠席することが伝えらたことからでした。
本日金曜日金相場は前日の世界同時株安の反発で株価が上昇する中、トロイオンスあたり1230ドルを付けてロンドン午後5時前に1227ドル前後を推移しています。
株価の上昇は今週の下げの反発もありますが、本日の中国のGDPが予想を下回ったにもかかわらず中国株が落ち着きを取り戻し、本日発表された米主要企業のアメリカンエクスプレスやPaypal等の決算結果が良かったことも要因となりました。
なお、本日米中首脳会談が仮ではあるものの11月のG20で行われることが同意されたことから、米中貿易戦争への懸念も後退した模様でドルは弱含んでいます。しかし、イタリアの予算案を欧州委員会が却下することへの懸念が高まっており、イタリア国債とドイツ国債のスプレッドが5年ぶりの幅へと広がっています。
なお、今週懸念が高まっているサウジアラビアの反体制派記者の殺害疑惑は、トランプ大統領が「記者は死亡したようだ」と述べ、サウジアラビアが関与している場合は「厳しい」措置を行うと述べたことからも、原油の供給が滞って需給が引き締まるとの見方で、原油価格が上昇しています。
その他の市場のニュ―ス
-
金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週14.5トン週間で増加後、今週月曜日に4.1トン増加し748トンと8月末の水準まで上昇した後、昨日まで変化が無かったこと。 -
ブルームバーグが火曜日にハンガリーの中央銀行がその金準備を10倍の31.5トンとしたことを伝えていたこと。 -
先週末に発表されたデータで、世界株価が急落する前の先週火曜日に、コメックスの金先物・オプションのネットショートポジションはこのフォーマットでレポートが発表され始めた2006年月以来の高い水準の320トンへと前週から40.9%増加していたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションも、先週火曜日に13週続けてネットショートで、そのポジションは6.3%増の6,262トンへと増加していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのポジションは、27週連続でネットショートだったものの、そのポジションは24.2%減の9トンと5週連続で減少していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週の重要イベント及び主要経済指標は、水曜日発表の米地区連銀経済報告と木曜日の欧州中央銀行の政策金利発表と米国耐久財受注なります。その他、ドルの動き、その結果金相場に影響を与えるものとして、火曜日のリッチモンド連銀製造業指数、水曜日の米国製造業購買担当者景気指数(PMI)、米国新築住宅販売件数、金曜日のミシガン大学消費者態度指数となります。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では先週金曜日のロイヤルウェディングに続き、ヘンリー王子とメーガン妃の来春誕生予定のロイヤルベィビーと彼らのオーストラリア訪問の模様が日々伝えられていますが、本日興味深いニュースが入っているのでお届けしましょう。
それは、英国の政治家で英国の第3党であった自由民主党の党首で、キャメロン政権の副首相も務めたニック・クレッグ氏がフェイスブックのグローバル・コミュニケーションチームの責任者となることが発表されたことです。
フェイスブックでは、今年ケンブリッジ・アナリティカが不正にフェイスブックの個人情報を取得したことが問題になるなど、セキュリティーやプライバシーの問題が続いていたこと等から、既に6月に退任することが伝えられていた、10年間この職についていたElliot Schrage氏などのシニアメンバーの退任が続いていたとのことです。そして、今回の人事はマーク・ザッカーバーグCEOに数か月間懇願されてクレッグ氏は同意したとのこと。
クレッグ氏は欧州議会議員を勤めた経験もあり、欧州委員会への繋がりもフェイスブックにとっては重要であったようですが、テクノロジー関連会社で勤めていた人ではない新たな人材も必要であったともシェリル・サンドバーグCOOは述べているとのことです。
しかし、多くの英国の政治関係者はこのニュースに驚いており、一般の人々の反応も「なぜ」というものが多いようです。
それは、クレッグ氏の米国政治やテクノロジー企業での限られた経験等からですが、ザッカバーグ氏が彼の内巻きを変えてこなかったという非難が高まっていたとのことですので、そう意味では全く畑違いで少なくとも欧州や英国政界の経験を持つのクレッグ氏を取り込むことはフェイスブックにとってはプラスなのでしょう。
英国でのクレッグ氏の評判は、2015年の総選挙で大敗した自民党を率いていた党首で、2017年には総選挙で労働党候補に敗れて落選するなど、当初は従来の政治家とは異なるクリーンなイメージが好感されたようですが、その後副首相となって他の政治家と変わらないと落胆した人々も多かったとのこと。そこで、このニュース発表後SNSなどでは「フェイスブックがなぜ」と落胆する人々共に、「なぜクレッグ氏がフェイスブックに」とコメントする人々も多いとのことです。
この人選がフェイスブックにとってプラスとなるのか、今後見えてくることなのでしょう。