ニュースレター(2018年1月26日)1353.15 ドル:ドル安で一年半ぶりの高値へ上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1353.15ドルと前週同価格から1.3%上昇しています。
週明け月曜日金相場は、ドルインデックスがほぼ横ばい状態の中、トロイオンスあたり1332ドル前後の狭いレンジの取引となっていました。
前週金曜日につなぎ予算の失効したことで、米政府機関の一部閉鎖が3日目を迎えていましたが、経済への影響は小さいという見方主流で、今週発表の企業決算への期待などから株価は堅調に推移していました。
また、週末21日にドイツ社会民主党は、党大会でメルケル首相との正式な連立交渉開始を支持する決定をしたことからも、ユーロが対ドル上昇し、ユーロ高ドル安となっていました。
火曜日金相場は、ドルインデックスが2014年1月以来の低さへと下げる中、トロイオンスあたり1342ドルへと上昇することとなりました。
同日は前夜米上院で暫定予算案が可決され、政府機関の閉鎖が解除されたことで、米株式市場の主要3指標が最高値を更新し、日銀が金融政策の現状維持を決定したことで、日経平均株価も26年ぶりの高値を付けていました。
しかし、日銀の緩和縮小観測が後退したことで米国債が買われ米長期金利が低下することで米株式は小反落して始まったこと、また前週にロシアゲートに絡みセッションズ司法長官の事情聴取が行われたことが伝えられたこと、そして同日トランプ政権が太陽電池パネルと大型洗濯機へ高い関税を課すと発表し保護主義への懸念などが要因となり、金相場が上昇することとなりました。
水曜日金相場は、ドルインデックスが3年ぶりの低さへ下げる中、トロイオンスあたり1365ドルと北朝鮮懸念で上昇していた昨年9月以来の高さを超え、2016年7月の英国のEU離脱後の高さへと上昇することとなりました。
このドル安は、ムニューシン米財務長官が、スイスのダボスで開かれている世界経済フォーラムで、ドルの下落を歓迎する姿勢を示したことが要因となりました。
木曜日金相場は、ドルインデックスが3年ぶりの低い水準から上昇する中、トロイオンスあたり1346ドルへ下げることとなりました。
これは、同日トランプ米大統領は、CNBCとの単独インタビューで「ドルはどんどん強くなる見込みだ。私は最終的に強いドルを見たい」と述べ、またダボスの世界経済フォーラムで「米国は経済的にも他の側面でも再び強くなる」とし、米経済の成長が通貨高につながるとの見解を示したことが要因となりました。
そして、トランプ米大統領はインタビューでTPPについても再検討する考えも示すなど、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」等の保護主義傾向への懸念も一段落したこともドル安への歯止めにもなった模様です。
なお、同日行われた欧州中銀の金融政策決定会合では、金融政策の維持が決定され、ドラギ総裁の記者会見で、ユーロ高をけん制するコメントもでたものの踏み込んだ発言がなく、経済成長へ前向きな評価をし、インフレ率も景気の勢いから自信を深めるとしたことで、トランプ大統領の発言までは一時ユーロ高へと動くことになりました。
本日金曜日は昨日のトランプ大統領のドル高を容認するコメントもあり、ドルの下げが止まる中、昨日史上最高値を付けた米株価が堅調に推移しており、金相場はトロイオンスあたり1350ドルと1355ドルのレンジで推移しています。
また、本日発表された市場注目の米第4四半期GDPは2.6%と予想の2.9%を下回ったものの、個人消費6四半期ぶりの伸びとなった、また同時に発表された耐久財受注が2.9%と予想の0.7%を大幅に上回ったことなどから、これらの指標の市場への影響は限定的となっています。
なお、ダボスでの世界経済フォーラムに参加している黒田日銀総裁は「インフレ目標(2%)に近い状態にある」と述べたことが伝えられ、日銀の金融緩和縮小観測が広がり、一時108円台まで円高になっていました。
その他の市場のニュ―ス
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金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週の17.7トンに続き今週も木曜日までに2.7トン増加させていたこと。 -
先週末に発表されたコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは2.99%と少ないながらも、先週火曜日に5週連続で増加し、634トンとなっていたこと。 -
コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、3週間続けて増加した後、13%減少し5,134トンとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に2週続けてネットロングとなり、前週比78%増の30トンと昨年9月以来の高い水準となっていたこと。
ブリオンボールトニュース
ビットコイン価格が急落した先週、ブリオンボールトでの取引量が急増していたことが、「ビットコイン、乱高下で増す取引難易度 個人の金回帰強まる」と日本経済新聞で取り上げられました。
ここでは、先週弊社の1日の取引量が74キロと通常の2倍に増加し、ドイツからの100万ユーロ単位の大規模な資金が入ってきていること等、ビットコインへ向いていた興味が、金へ戻りつつあるとレポートされています。
また、弊社のグループ会社のジェームズ・イーディが昨年10月にローンチした、70年前のオリジナルブレンデットウイスキーのレセピに忠実に再現された「トレードマークX」が、英国で最も有名なスコッチウイスキーサイトのScotchWhisky.comで取り上げられ、高い評価をいただきました。
ここでは100点満点でスコアをつけていますが、「トレードマークX」は90点をいただき、他のウイスキーと比較しても高得点で、詳細の批評では「It's a triumph.(大成功)」と評価いただきました。
日本では、既に楽天サイト(https://www.rakuten.co.jp/chagatapark/)、武川蒸留酒サイト(https://mukawa-spirit.com/)、新宿伊勢丹でお取り扱いいただいています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週はダボスで行われている世界経済フォーラムでのトランプ大統領を含む各国首脳や中央銀行総裁の発言や、英国閣僚のEU離脱絡みの発言などが日々トップニュースとして伝えられています。
しかし、本日のロンドン便りでは、昨日英国貴族院で行った演説がスタンディングオベーションを受けた、元英国文化オリンピック・メディア・スポーツ大臣(影の内閣)のテッサ・ジュエル(Tessa Jowell)氏についてお伝えしましょう。
ジュエル氏は、トニー・ブレア政権とゴードン・ブラウン政権でも内閣の要職を務め、その功績が認められて2015年に一代限りのバロネス(女性男爵)の称号を得て貴族院議員となっていました。
しかし、昨年9月の70歳の誕生日に脳腫瘍を同年5月から患っていることを「多くの人々が癌と共に長く、より良い人生を生きられることが私の願いです」と公表していました。
ジュエル氏の病状は予断を許さないもので、そのような中で貴族院での演説を行ったのでした。演説では、彼女はどのように彼女の病気を知ったのか、癌の患者にとって地域、医療のサポートが必要であること、そして世界の癌研究者はさらなる協力が必要であるとし、癌患者がより多くの先進の治療法を受ける選択肢を持てることを希望し、次のような言葉で演説を終えています。
「多くの癌患者はお互いを日々サポートしています。彼らは、どのような場所でも愛情と決意にあふれたコミュニティーを作っています。私たちは医療に従事する全ての人々に同じようにこのようなコミュニティーを作り、お互いから学びあっていくことを望みます。
最終的には、人生の意味はどのように生きたかのみではなく、どのように人生を終えたかでもあります。
私はここで議論されたことが私のような多くの癌患者に希望を与えることを望みます。そして、私たちがただ死に至るばかりではなく、癌と共に生きられることを。全ての人々が、長い間。」
ご自身の状況を超えて、癌患者のために力強い演説を行った彼女の勇気と強い決意が、貴族院の議員の心を動かし、その後行われた庶民院でもメイ首相が力を尽くすと約束をしていました。
ここでもご紹介をしてきていますが、私は2015年から癌の患者とその家族をサポートする英国発祥のマギーズ・キャンサー・サポート・センターのサポーターとして活動もしています。家族を癌で失った者として、ジュエル氏の言葉は深く心に響いたのでした。
ジョエル氏の思いがかなう日が遠い将来でないことを心から祈りたいと思います。