ニュースレター(2018年1月19日)1334.95ドル:米国政府機関閉鎖懸念もありドル安、長期金利上昇に加え、景気への楽観視からの株高の中、金も堅調
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1334.95ドルと前週同価格から0.15%上昇しています。
月曜日金相場は、ドルインデックスが3年ぶりの低さへと弱含む中、トロイオンスあたり1340ドルと前週終値から更に上昇することとなりました。
同日はキング牧師の誕生日の祝日で米国市場が休場の中、ドルが対主要通貨で4日連続で下落していました。特にユーロは2014年以来の高い水準となっており、中国人民元も2年ぶりの高さとなっていました。
ユーロ高は、先週金曜日にもお伝えした、欧州中央銀行のタカ派的ポジションとドイツの政局に絡んでいますが、ユーロ圏の経済が2018年2.2%成長するとエコノミストが見ていることがブルームバーグで伝えられたこと、ドイツ中央銀行が中国人民元を外貨準備に含めたことも要因となっていると伝えられていました。
火曜日金相場は、ドルが昨日の3年ぶりの低さから若干強含む中、トロイオンスあたり1334ドルへと下げることとなりました。
同日は、ダウ工業株30種平均は一時史上初の26000ドル台に載せ、S&P500種株価指数はやはり史上初の2800に載せるなど、米主要企業の業績が改善する期待からも株価が堅調に推移していました。
水曜日金相場は前日の終値から更に上げトロイオンスあたり1343ドルを付けた後、調整の売りも出た模様で1332ドルまで下げたものの、その後1339ドルまで上昇して1328ドルで終える等、激しい動きを見せていました。
この動きはドルインデックスとほぼ負の相関関係で動いていましたが、ニューヨーク時間の下げは、同日発表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)で「いくつかの地域で企業が賃金上昇を見込んでいると報告」と書かれていたことから、そして同日は米株価が軒並み史上最高値を記録していたことも金を押し下げた模様です。
木曜日金相場は、前夜ロンドン時間後に下げた水準のトロイオンスあたり1330ドル前後で推移することとなりました。
同日は中国の第4四半期のGDPが予想を上回り前年比6.9%と2015年以来の高さを記録したことが注目されていましたが、それに加え、米長期金利が昨年3月以来の2.6%を超えたことも注目されていました。米株価は下落し、ドルインデックスが低い水準で推移しているにも関わらず、今月に入り上昇を続けていた金相場は調整の動きもあるようで、頭を抑えられていた模様です。
なお、米債務上限に絡む暫定予算案の可決が金曜日中にされない場合、米政府機関の一部シャットダウンもあることから、その懸念が長期金利を押し上げていたようです。
本日金曜日は、米国債10年物が利回り2.62%と2014年以来の高い水準、そして2年物が2.05%と高止まりする中、一時トロイオンスあたり1337ドルまで上昇した後、ロンドン時間昼過ぎに1333ドルを推移しています。
なお本日米国深夜に失効する暫定予算に代わる暫定予算案は、前日下院で可決され、本日上院で可決に向けて審議が行われますが、上院民主党は暫定予算案阻止に十分な表を確保したと主張しているとのことです。
そこで、本日上院で暫定予算案が可決されなかった場合、政府職員約80万人が自宅待機となり、多くの政府機関が閉鎖されることとなります。そのようなことから、この懸念等で米国債券利回りが上昇していますが、金もまたこの懸念からも堅調な動きをしている模様です。
その他の市場のニュ―ス
- プラチナ価格が今週月曜日に昨年9月以来初めて1000ドルを超えたこと。
- 今週水曜日にビットコインが1万ドルを割り、12月17日につけた最高値から50%下げていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高が先週木曜日から動きがなかった後、昨日11.8トン増加していたこと。
- 先週末に発表されたコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に前週比29%増の615トンと、4週続けて増加していたこと。これにより、このポジションは12月半ばから146%増で、過去10年間の平均を33%上回ったこと。
- 銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に前週比138%増の5,919トンで、2週連続の増加となっていたこと。
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プラチナの先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、4週続けてネットショートとなっていたことからネットロングへ先週火曜日になっていたこと。この間、プラチナ価格は先週火曜日に前週比トロイオンスあたり35ドル上げ、トロイオンスあたり971ドル。
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パラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも、パラジウム価格がトロイオンスあたり21ドル上げ1108ドルと、過去最高の2001年1月につけた1125ドルへと近づく中、1.26%増の85トンと、2006年にデータが発表されて以来の高い水準となっていたこと。
ブリオンボールトニュース
英国の主要経済サイトのInvestment Weekで「2重のヘッジのために金の購入が進む:保険は必要のないときに買うべき」という記事でブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここで、エィドリアンは「2000年代半ばに起こった、アラン・グリーンスパン元FRB議長の『債券市場の謎』が繰り返されているようです。この際、政策金利は1%から5.25%へと上昇しましたが、不動産市場を混乱させ、債券市場は継続上昇(長期金利は低下)しました。」「人々は金を(金融システムの)保険として購入します。歴史的に金は他の資産の収益性が悪い際に良く、中央銀行への信頼が落ちた際にとても良い動きをします。そのため、金は金自体ではなく、他の資産や市場の動きに常に影響を受けるのです。そこで、保険を購入する最善の時は保険を必要としていないときですが、投資家は知りながらも実行しないことがあります。」と述べています。
また、米主要経済サイトのMarketWatchの「金が一日の下げ幅としては一月ぶりの大きな下げを記録」の記事で、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここでエィドリアンは、「長期金利の上昇と、史上最高値を更新する株価と共に、通常金は上昇しない。しかし、新年からこのパターンが崩れ、人々は驚いていた。そのため、金の他の資産との関係が通常へと戻りつつあるようだ。」とコメントしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
しばらくお休みをさせていただいていましたが、先週土曜日にロンドンへ戻りましたので、ロンドン便りを再開させていただきます。
新年第一弾は、英国王室のニュースからお伝えしましょう。
ご存知のように、昨年暮れはヘンリー王子とメーガン・マークル氏の婚約に英国中が沸きましたが、マークル氏の人気は収まることが無いようで、今週は二人の初のウェールズ訪問で、カーディフ城を訪れた様子等を含むマークル氏関連のニュースが幾つか伝えられていました。
その一つは、今年最初の公式行事の9日のロンドン市内のブリクストンの若者の就業を支援する非営利ラジオ局訪問時に、マークル氏が英国の一般向けファッションブランドのマークス・アンド・スペンサーのセーターを着ていたこと、そしてその45ポンド(約7000円)のセーターは、訪問から1時間で売り切れたこと、さらにこのビジネスニュースでは、マークル氏が英国のファッションブランドをキャサリン妃のように装い、応援することで英国産業を助けることになると伝えていました。
ただ、必ずしもこのような明るいニュースばかりではなく、今週のもう一つのニュースは、英国のEUからの離脱を主張した反EU政党の英国独立党(UKIP)のボルトン党首の交際相手の女性が、マークル氏を人種差別的な表現で中傷したことが大きく報じられ、ボルトン党首の責任が追及されていることが政治ニュースで伝えられています。
ボルトン氏の交際相手のジョー・マーニー氏は、友人へのテキストで(母親がアフリカ系)マークル氏を「愚かな一般人で、彼女の遺伝子は王室を汚す」と中傷したとのこと。
この他にもかなり人種差別的コメントも述べており、マーニー氏は英国独立党員資格を即座に停止され、問題の調査が開始されています。その数日後にはボルトン党首はマーニー氏と別れ、事態収拾を図りましたが、本日の段階でも党首辞任を求める声は高いとニュースになっています。
これまでの伝統とは異なるバックグランドを持つマークル氏であるからこそ、その注目度や人気は高いのでしょうが、ビジネスニュースで、政治ニュースでも伝えられるフィーバーさには、ご本人もお疲れになっているのではとお気持ちを察しているところです。