ニュースレター(2017年9月8日)1346.25ドル:ハリケーンによる過大な被害が利上げ観測を後退させ金続伸
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1346.25ドルと前週同価格から1.9%上昇しています。
週明け月曜日金相場は、週末明けの市場開始と共にトロイオンスあたり10ドル上げ、一時1338ドルまで上昇するなど急騰することとなりました。
同日は米国がレイバーデーで休日の中、前日の北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験で地政学リスクが高まる中、株価が下げ、金が安全資産としてスイスフランクと日本円とともに買われることとなりました。
また、米政府は核開発を支える中国やロシア企業への制裁拡大で圧力強化を検討するとも伝えられ、さらに緊張が高まる懸念が広がった模様です。
火曜日金相場は、北朝鮮を巡る緊張から株価が下げる中、BREXIT後の混乱で上昇していた昨年7月以来の高さの一時トロイオンス1343ドルまで上昇することとなりました。
同日はトランプ大統領が日本と韓国による軍事機器購入を容認したことが伝えられ、アジアデイリーが北朝鮮が新たに弾道間ミサイルを発射する準備があると伝えたことなどからも、緊張が高まっていると市場は捉えていた模様です。
また、同日はブレイナード理事 の「インフレ率が目標達成に向けた軌道に乗っていると確信を持てるまで、政策の一段の引き締めについて慎重になる必要がある」等のハト派的コメントも伝えられ、ドルインデックスが下げることとなりました。
水曜日金相場は、トランプ米大統領と議会指導部がハリケーン「ハービー」の被害救済法案に、債務上限引き上げと12月15日までの歳出を抱き合わせることで合意したと伝えられたことから、債務上限問題への懸念が後退し、緩やかに下げることとなりました。
木曜日は市場注目の欧州中銀の理事会が行われ、金融政策(政策金利0%、中銀預金金利-0.4%)現状状維持を決定したことが伝えられました。また注目の量的緩和(毎月600億ユーロ買い入れ)も年末まで続けるとし、声明文は7月を踏襲し、必要であれば量的緩和の拡大をする準備があるとしていました。
そして、制作発表後行われたドラギECB総裁の会見では、「QEに関する決定の大半は10月に下す」、「インフレ率は年末にかけて低下へ」、「為替レート、政策判断に考慮に入れる必要ある」と、インフレへ及びユーロ高への懸念を言及しましたが、緩和縮小の手法には触れることはありませんでした。
これを受けて、ユーロが大きく2年8ヶ月ぶりの高い水準へ上昇し、ドルが2015年1月以来の水準へ下げることで、金相場は上昇しトロイオンスあたり1350ドル近くまで上昇することとなりました。なお、ドルが下落している背景は、相次ぐハリケーンの被害の大きさで、FRBの金利引き上げが困難になるという観測が広がっていることからとされています。
なお、ハリケーンハービー関連の失業もあり、昨日発表された週間の新規失業保険申請件数は29.8万件と2年ぶりの高水準となっていました。
本日金相場は、早朝にトロイオンスあたり1356ドルを付けた後に、今週の上げの調整もあり、また米下院で被害救済・債務上限・短期歳出法案が可決したことが伝えられる中、緩やかに下落しています。
なお、ロンドン午後にはダドリーNY連銀総裁「ハリケーンが利上げ時期に影響する可能性もある。」というコメントが伝えられおり、また明日は北朝鮮の建国記念日であることから、さらなる挑発行動もありうるとして、日本や韓国が高度な警戒体制を維持するとしています。
その他の市場のニュース
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ワールドゴールドカウンシルが本日発表したレポートによると、金ETFへの資金への流入が先月2月以来の高水準となり、残高が35トン増となったとのこと。また、2017年に金価格がドル建てで15.6%、ポンド建てで9.1%、ユーロ建てで2.2%上昇しているにも関わらず金のETFに資金が流入しており、特に欧州からの資金が全体の79%程となっていると伝えられたこと。
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先週末発表のコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日北朝鮮が北海道上空を超えて弾道ミサイルを通過させた日に18%増と、7週連続の増加となっていました。これにより、重量では721トンと昨年9月27日以来の高さとなっていました。
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銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも同火曜日に20%増と、6週連続で20%を超える増加となっていました。
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金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアは、今週火曜日に8.9トン残高を増加させた後、3.3トン減少していたこと。
ブリオンボールトニュース
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ゴールドニュース「地政学リスクの高まりで投資家は利益確定を進める」
ブリオンボールトが毎月まとめている金投資家インデックスの8月の数値に関するプレスリリースが、日本語で金の情報を網羅するゴールドニュースサイトで取り上げられました。
ここでは、先月北朝鮮を巡る地政学リスクの高まりで上昇した金価格を、利益確定機会と見る顧客が多かったことから、8月の金投資家インデックスは、7月の高水準から下げていたことがご覧いただけます。そのため、今週ワールド・ゴールド・カウンシルがまとめたレポートで、金ETFへの資金の流入が先月は2月以来の高水準で35トン増となったことが伝えられていたものとは大きく異なるものでした。
なお、弊社において既存の顧客の金売却者数は増加していましたが、新規顧客数は今年1月以来の高い水準となっており、金投資への興味の高まりは十分にあることもこの数値が示していました。
こちらでもお知らせしていました、8月26日に行われていました弊社の日本における正規独占媒介代理店ブリオンジャパンが出展した「第6回世界の資産運用フェア」について、金融&IT業界の情報ポータルサイトのグッドウェイがレポートを配信しています。
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CNBCの「マネーコントロール」番組
ブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが、今週1年ぶりの高値を付けている金相場についてインタビューを受けました。
ここでエィドリアンは、北朝鮮関連の上げは長くは続かないとしながらも、数年来のダウントレンドは先月破られ、コメックスや金ETFへのファンドの資金が流入しており、年末前に1400ドルを付ける可能性は無いとは言えないとしています。
なお銀に関しては、金の上げ幅に比べその上げ幅が少なく、金銀レシオでは銀は安い水準なので、今後上げる可能性はあるとしながらも、その需要の主な割合が工業用であること、投機的取引が多いことから、金に比べ大きく相場が上下する可能性は常にあるともしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週の英国からのニュースは、先週に続き王室関連のニュースが見出しを飾っていましたのでお伝えしましょう。
まず、今週月曜日にはキャサリン妃が第3子を妊娠したことが伝えられていました。このニュースは、キャサリン妃がつわりが激しく、4日の公務をキャンセルしなければならなかったことから伝えられたとのことですが、特報としてとして主要メディアが配信していました。
そして、昨日はウィリアム王子とキャサリン妃の第一子ジョージ王子(4)が、ロンドンの小学校に初めて登校したことが伝えられていました。キャサリン妃はつわりのために、ウィリアム王子がジョージ王子を車で学校に連れて行った模様が、ニュースで伝えられていました。
ジョージ王子が通う学校は、ロンドン南西部にある私立の学校で、授業料は年間で1万8000ポンド(約267万円)と富裕層が行く学校であるようです。
ジョージ王子の祖父のチャールズ皇太子が、王位継承者はそれまでは家庭教師に教育を受けていた慣習を破り、初めて学校で教育を受けたとのこと。そして、ジョージ王子は、王位継承者としては初めて共学の小学校に通うことになったようです。
かつて上流階級の子供達は家庭教師に教育を受けるのが一般的であったのが、有名な男女別学の私立校へと変わり、最近は共学の私立校も増えてきたことから共学へ通わせることとなったのかもしれませんが、キャサリン妃は共学の著名私立学校のマルボロカレッジの出身であるなど、時代の変化を取り入れようと考える王室の態度もあるようです。
英国では今週から夏季休暇を終えた議会がBREXITの議論を始めています。EUとの話し合いは遅々として進まないことが伝えられる中、北朝鮮問題等暗い話題が多く、今週の王室のニュースは人々に希望を与えたようでした。