ニュースレター(2017年9月15日)1322.85ドル:北朝鮮のミサイル発射後も利上げ観測の広がりで金下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1322.85ドルと、前週同価格から1.7%下げています。
月曜日金相場は、北朝鮮への懸念の後退と米国を襲っていたハリケーン「イルマ」が勢力を弱めたことなどから、株価やドルインデックスが上昇する中、他の安全資産のスイスフランクや日本円ととも下落することとなりました。
火曜日金相場は、トロイオンスあたり1323ドル~1333ドルのレンジで推移することとなりました。
北朝鮮関連では、前夜遅くに国連安全保障理事会で追加制裁決議が採択され、北朝鮮への石油供給に初めて規制が入りましたが、当初の全面禁輸を盛り込んだ決議案からは米国が中国やロシアに譲歩する形となっていました。
この制裁に対し北朝鮮は「米に最大の苦痛与える」とコメントしたことが伝えられていましたが、同日市場は前日S&P総合500種が終値ベースで過去最高値を更新し、ダウ工業株30種は1日として2月以来の大幅な伸びを記録した基調を受け継ぎ上昇することとなりました。
なお、本日ポンド建て金相場は一月ぶりの低値のトロイオンスあたり1000ポンドを一時割っていました。これは、同日発表された英消費者物価指数が予想を上回ったことなどからポンドが強含んだことからでした。
水曜日金相場は、株式市場が前日の基調を受け継ぎ堅調に進む中、トロイオンスあたり1330ドルを割り下落することとなりました。
また、同日発表された米生産物価指数は前年比2.4%と予想の2.5%を下回ったものの、前回の1.9%を上回ったことから、FRBによる利上げ観測が広がりドルインデックスが上昇していることも金相場を押し下げていました。
木曜日金相場はロンドン時間に一時下げたもののその後上昇し、ロンドン時間午後11時前に北朝鮮が中距離弾道ミサイルを発射したことが伝えられ、上昇することとなりました。
同日はイングランド銀行のタカ派的コメントでポンドが一年ぶりの上昇をし、ポンド建て金相場が下げていましたが、ドル建てにおいては、北朝鮮でミサイル発射の兆候があり、大陸間弾道弾ミサイルの可能性と伝えられていたことなどから、ドルが弱含み上昇をしていました。
なお、同日市場注目の米消費者物価指数は前月比0.4%と予想の0.3%と前回の0.1%を上回り、先週2週間ぶりの高水準となっていた新規失業保険申請件数は、28.4万人と前回の29.8万人と予想の30万人を下回っていました。
本日金曜日は、昨夜の北朝鮮の中距離弾道ミサイルを発射のニュースとその反応がロンドン早朝伝えられる中、ロンドン市内の地下鉄内でのテロと見られる爆発事件も伝えられていましたが、ドルインデックスが下げる中、市場の安全資産への需要は高くなく、金相場も円と共に緩やかに下落することとなりました。
ドルインデックスが下げているのは、本日発表された米小売売上高が前月比 -0.2%と、予想 0.1%と前回 0.6%を下回ったことなどからですが、それにもかかわらず金相場が下げているのは、来週行われるFOMCでの利上げは無いという予想ですが、今年中に利上げありという予想が広がっているからのようです。
その他の市場のニュース
- LBMA銀価格(旧値決め価格)の運営会社が、CMEロイターから既にLBMA金価格の運営をしているIBAへと今月25日から移行することが本日LBMA(ロンドン貴金属市場協会)から発表されたこと。
- 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアは、今週は残高を昨日までに4.2トン増加させ、838トンとなっていたこと。
- 先週末に発表された、コメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に北朝鮮問題の緊張が高まる中、8週間連続で上昇し、10年間の平均の207%、評価額で330億ドルに達していたこと。なお、このようにネットロングポジションが8週間連続で増加を続けたのは、2016年初頭以来。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも、先週火曜日に7週続けて増加し、今年4月25日の水準へと積み増していたこと。このように長期間増加を続けたのは、銀においては昨年末から今年2月末の9週間以来。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
本日は、ロンドン時間午前8時過ぎに起きたロンドン市内の地下鉄内の爆発事件がトップニュースで伝えられています。テロ事件として捜査が行われていますが、22人が負傷したこと以外の詳細はまだ伝えられていないようです。
そこで、本日は金融危機時に破綻寸前となり国有化された英国北部に本拠地を持つ銀行ノーザンロックが、信用不安が広がった際に払い戻しを求める客が店頭に殺到した取り付け騒ぎが起きてから、昨日で10周年ということで、多くのメディアが伝えていましたのでご紹介しましょう。
ノーザンロックは2007年9月14日に、サブプライムローン問題で資金繰りが悪化しイングランド銀行に支援を要請したことがBBCで伝えられて信用不安が広がり、下記の写真でも見られるように取り付け騒ぎが起こったのでした。この風景は金融危機を象徴するものとして、今でもメディアで頻繁に取り上げられます。
この取り付け騒ぎで、数日中に預金残高の8%の20億ポンド近く(約3000億円)が引出され、英国政府が「預金の安全性に問題はない」と緊急声明を出したものの、2008年2月には国有化され、2011年11月にはヴァージンマネーに売却されました。これにより、英国政府は大規模な損失を被っています。
その後ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド、ロイズTSB、HBOSが一部国有化されましたが、ノーザンロックのように取り付け騒ぎは起こらなかったことからも、英国の金融危機の始まりを象徴するイメージは未だにノーザンロックの取り付け騒ぎとなっています。
今週は、ノーザンロックが国有化されたことで価値を失ったノーザンロックの株主がメイ政権に補償を求めたとも伝えられています。15万人の株主を代表する元ノーザンロックの従業員のGrainger氏は、国有化で株が価値を無くしたことで11万4000ポンド(約1715万円)を失ったとのこと。
このような信用不安から10年を超えて、英国では経済回復の兆しは見られるものの、金融危機以来の緊縮財政は終わりなく続けられてます。
ブリオンボールトでは10年前のこの日、金購入を求める問い合わせの電話が鳴り止むことはありませんでした。以来、金融危機が再び起こらないように、また起こっても十分に耐えうる金融システムが構築されているはずですが、英国の人々の記憶からノーザンロックの店頭に並ぶ人々のイメージが消えることはおそらくないのでしょう。