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WGC最新レポート:2017年前半期の金の需要下落

今年第2四半期と前半期の金の需要が、金の上場投資信託(ETF)需要の減少で減っていたことが、金業界のマーケティング団体であるワールド・ゴールド・カウンシルが、まとめた最新レポートで明らかとなった。

今年第2四半期の金需要は953.4トンと前年比10%減となり、前半期においては2003.8トンと14%減となっていた。この最大の要因は、2016年の記録的な金ETFへの資金の流入が、今年は見られていないことから。

中央銀行のネット購入量は176.1トンと、前年比3%減と多少減少したものの、金地金と金貨の投資需要、宝飾品の需要と工場需要は、それぞれ増加していた。

1. 需要

金のETF

金のETFへの投資は、2017年第2四半期は56トン増で、6月末にはその残高が2313トン(評価額924億ドル)と、昨年10月末以来の高い水準となった。前半期においては、167.9トン増であるものの、前年同四半期比おいては、昨年の記録的な高さの237.4トンからは76%減となっていた。

投資需要を動かした要因として下記の3点が上げられている。

  • FRBやECB等の中央銀行による金融引締め観測の広がりが需要を減少させた

  • 年初から8%上昇していた金価格が金の購入を慎重なものとした

  • テロ事件、北朝鮮と米国の緊張の高まり等の地政学リスクや米国トランプ政権の混乱からの政治リスクは需要を支えた

第2四半期の金ETFの欧州の需要は欧州と米国はそれぞれ35.2トンと30.9トンと同水準であったものの、前半期においては欧州の需要が128トンと全世界の需要の76%と大きな割合を占めることとなった。

この要因は、フランス大統領選への懸念と、ドイツ国債がマイナス金利であったことによる、欧州ベースのファンドよりの資金の流入から。

また、英国の総選挙が行われた6月末においても、ポンド安からも金ETF12.2トンの増加になるなど、政治リスクが要因と見られる需要が顕著であった。

このような理由から、欧州で上場されているETFが過去18ヶ月で増加し、2015年末の570.2トンから第2四半期の終わりには977.7トンと史上最高値を記録した。

金地金と金貨

第2四半期の需要は前年同四半期比13%増で、240.8トン。前半期は前年同半期比11%。しかし、過去3年の平均の263トンや5年の平均の306.1トンと比較すると低いものとなった。

中国の第2四半期の需要は62.6トンと前年同四半期比56%増となった。これは、ほぼ過去3年の平均の62.9トンと5年の平均の69.5トンと同水準。しかし、2016年第4四半期や2017年第1四半期の100トンを超える需要と比較するとスローダウンしている。これは、通貨安への懸念が後退し、不動産投資への規制も落ち着いたことから。

インドの第2四半期の需要は前年同四半期比26%増の40.7トン。これは、3四半期連続の増加。

欧州の需要は第2四半期にほぼ横ばいで40.3トン。前年同四半期は40.9トンだった。しかし、金投資へのセンチメントは、オランダの総選挙、フランスの大統領選、ドイツの地方選挙がそれぞれ親EUの政党や候補者が勝利し政治リスクが落ち着く中低くなった。

米国の需要は第2四半期に10.2トンと、2013年第3四半期以来の低い水準となった。また、前半期も21.5トンと前年同半期比減少で、その減少量は世界でも最大となった。

そのような中、顕著だったのはトルコの需要の高さ(下記のチャート参照)で、これは経済回復、二桁のインフレ、通貨が安定していたことが要因。

宝飾品

第2四半期の宝飾品の需要は480.8トンと、前年比同四半期比8%増となった。しかし、2016年の同四半期の需要が低かったことからでもあり、過去5年間の平均の586.2トンを下回った。

前半期の需要もまた、2016年の同半期から5%増の967.4トンとなったが、過去データが残る限りで1000トンを割ったのは4回のみと低い水準となった。

インドの第2四半期の需要は、126.7トンと前年同四半期から41%増と顕著な増加率となった。これは、7月1日から導入される物品・サービス税(GST)を前に在庫の積み増しで過去最高の104.6トンの輸入が記録されていたことからも予想されていた。そして、GST導入前の6月の需要は高いものであった。

また、金の購入が進むアクシャヤ・トゥリティーヤ(Akshaya Tritiya)が週末で、このタイミングで金価格も下げたことから、前年比この時期の需要は30%増となった。

中国の第2四半期の需要は、137.7トンと前年同四半期比5%減で、過去5年間でも最も低い四半期となった。しかし過去3年間の需要の減少率と比較すると、その比率は下げている。前半期の需要は昨年同半期比4%減であった。

中央銀行

中央銀行の第2四半期需要は94.5トンと前年同四半期比20%増となった。しかし、過去5年間の平均の135.2トンよりは低いものとなった。そして、前半期では176.7トンと、前年同半期3%減となった。

中央銀行の需要で顕著であったのは、ロシアが第2四半期に35.7トン、前半期では100.6トン金準備を積み増し、総量1715.8トンと全世界の金準備の17%となったこと。

また、カザフスタンもまた57ヶ月続けて金準備を積み増し、第2四半期11.3トン増加させていた。それにより、2012年10月から積み増され続けている金準備は、当時の167.5トンから279トンとなった。今後は国内の市場の流動性を高めるために、小規模な金地金を売却することを今年5月発表している。

工業用需要

電子機器を含む全ての工業用需要は第2四半期に162.6トンと、前年同四半期から1%増加。

2. 供給

金の産出量は、第2四半期に791.2トンと前年同四半期から3トンのみの減少とほぼ同水準となった。しかし、その量は2014年第2四半期以来の低水準。そして、前半期としても1557トンと前年同半期とほぼ同じ水準となった。

その要因の一つとして、2017年初頭に産出費用が前年比12%増加していることが上げられる。これは、主として産出国通貨が対米国ドル強含んだこと、そして金鉱運営費用や設備投資の費用の増加などから、下記のチャートでも見れるように設備投資が数年来最低の水準で推移していることから。

リサイクルからの供給分は、第2四半期に297.9トンと前年同四半期から18%減となった。

これは、中東地域においては、この地域における緊張から消費者が金を手放すことを避ける傾向が強まったことから。しかし、インドにおける第2四半期のリサイクル量は2014年以来の高い水準の29.6トンとなった。この理由は3つ考えられ、その第1の理由としては、作付けのための資金として金を売却したことから。そして第2の理由は、昨年の高額紙幣廃止前に購入した金を、通貨システムが安定したことから売却したため。第3の理由は、7月1日導入される物品・サービス税(GST)の届け出を避けるための売却などから。

また、英国のポンド安によるポンド建て金価格の上昇から、英国におけるリサイクル量は第2四半期に前年同四半期6%増となっていた。しかし英国の中長期の傾向としてはBREXIT後の2016年第3四半期にリサイクルが急増して以来、減少を続けている。

ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュ、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。

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