ニュースレター(2017年10月27日)1266.45ドル:米企業決算や米GDPが良好でドル高株高が金を押し下げ、次期FRB議長観測で反発
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1266.45ドルと前週同価格から1.1%下げています。
月曜日金相場は、アジア時間にドルが強含むことで金は押し下げられていましたが、ロンドン時間夕方にその下げを取り戻しトロイオンスあたり1280ドルを超えて上昇することとなりました。
ドルが強含んだのは、週末の日本の衆院選で与党が圧勝し、アベノミクスの継続から日経平均株価が15日続伸と過去最長となり、円が14週間ぶりの低さに下げたことで相対的にドルが強含み、またトランプ米政権が掲げる税制改革の審議が本格化するとの見方などからでした。
ロンドン夕方の上げはこれまで下げていた調整であったようです。
火曜日金相場は、ドルが15週間ぶりの高さ、米長期金利が5ヶ月ぶりの高さへと上昇する中、トロイオンスあたり1276ドルと前日の上げ幅を失い2週間ぶりの低さへと下げることとなりました。
ドルが強含んでいたのは、米主要企業キャタピラーやスリーエム(3M)などの決算結果が良かったことから株高となっていたことからです。また、同日トランプ大統領は上院共和党の昼食会で、次期FRB議長候補を巡り、上院議員に挙手投票を求め、多くの議員は挙手しなかったものの、挙手の数ではよりタカ派のテイラー教授が、イエレン現議長とパウエル理事を抑えて勝利したと述べる議員もいたとも伝えられ、さらなる利上げが進むという観測が広がったことも要因となりました。
水曜日金相場は株価が下げドルが下げる中、トロイオンスあたり1280ドル近くまで上昇することとなりました。
株価とドルの下げは同日発表された決算の結果が予想を下回ったこと、また前日共和党の上院議員二人ジェフ・フレーク氏とボブ・コーカー氏がトランプ大統領を批判したこともニュースになり、トランプ政権の税制改革への懸念が高まったことも要因であったようです。
木曜日は、ドルが15週間ぶりの水準へ強含み、株価が上げる中、金相場は前日の上げ幅を失い下落することとなりました。
ドルが強含んだのは、ロンドン午後に次期FRB議長の候補からイエレン現議長が外れたことを、ポリティコが関係者からとして伝えているとブルームバーグがレポートしたこと、そして欧州中央銀行の金融政策発表で、主要政策金利は0.00%(中銀預金金利-0.40%)で据え置かれましたが、月間資産購入額は、600億ユーロから300億ユーロへ2018年1月から減額すると市場予測同レベル、もしくは予想以下の金融引き締めであったこと、さらにはドラギ総裁の記者会見で、「資産買入れプログラムのオープンエンド(無期限)維持を支持」と述べるなど、かなりハト派的であったことからユーロが大きく下げドルが相対的に強含んだことからでした。
また、同日発表された主要米国企業のTwitterやフォードモーター社も予想を上回る決算で株を引き上げていました。
金曜日は、株高とドル高が進む中、金はトロイオンスあたり1270ドルを割り、さらに押し上げられることとなりました。
株高は同日発表されたアマゾンやアルファベットなどのテクノロジー関連会社の決算が良好であったことから、ナスダック100が昨年3月以来の上げ幅を見せ他の株価も押し上げたたことからでした。また、同日やはり発表された米国第3四半期GDPが予想を上回る3%と、2期連続で3%を超えたこともドル高を進めることとなりました。
そして、同日はカタルーニャ州議会が独立を宣言する議案を可決したことからユーロが大きく弱含み、ユーロ建て金相場は大きく上昇していました。そして、今後の混乱懸念からドイツ国債と米国債が買われ利回りが下がっていました。
その後トランプ大統領が、次期FRB議長として、イエレン現議長に政策的に近いパウエル理事の指名に傾いているというニュースが伝えられると、FRBの低金利政策が維持されるという期待から金需要が高まり上昇をすることとなりました。
その他の市場のニュース
- 先週末に発表された先週火曜日のコメックス金先物オプションの資産運用業者のネットロングポジションは、3%と少ないながらも減少し、5週連続の減少となり、10週間ぶりの低い水準となっていたこと。
- コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に13%増加し、4週間ぶりの高さとなっていたこと。
- 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアは、木曜日に2.4トン減少したものの、10月13日から9日間変化が全くなかったこと。
ブリオンボールトニュース
今週ブリオンボールトは、英国が発祥のがんの患者と家族をサポートする施設をがん拠点病院の敷地内で運営するマギーズへ寄付を行ったことから、マギーズのサイトでニュースとして取り上げられました。
このニュースレターでも私がこのマギーズというチャリティー団体を2014年からサポートしていることはお伝えしていましたが、ブリオンボールトは、毎年地元の子供や家族をサポートするチャリティー団体へ寄付を行ってきていることから、今年はマギーズへも寄付をすることが可能となりました。また、マギーズが毎年行っている「Maggie's Culture Crawl」というロンドン市内の美術館を巡る10マイル(約16キロ)のチャリティーウォークには、個人的に同僚の二人とも参加してきました。
なお、先週お伝えした、ブリオンボールトのグループ会社であるスコッチウイスキーの製造を行っているジェームズ・イーディーが「トレードマークX」という、19世紀に製造されていたオリジナルブレンドのレシピに忠実にブレンデット・スコッチウイスキーを再現し先週ローンチされたことが、著名ウイスキー雑誌「SchotchWhisky.com」で先週取り上げられていました。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2017年10月23日~27日)
- インフォグラフィックス:世界の中央銀行の金準備のインタラクティブマップ
ロンドン便り
今週も英国のニュースは英国のEU離脱交渉がトップニュースで伝えられており、火曜日には先週メイ首相がユンケル欧州委員長との夕食をしながらの会談時に、EU側に「助けてほしいと懇願した」とユンケル氏が関係者に述べたことをドイツの主要新聞がスクープしたと伝えていました。
遅々と進まない交渉とそれを日々細々と先のような裏話までまことしやかに伝えるメディアに、英国の人々はかなり嫌気がさしているようにも見受けられます。
そのような中、先週末に英国営放送のBBCの人気トーク番組に前大統領候補のヒラリー・クリントン氏が思いもよらず出演していたので、今日はそのことについてお伝えしましょう。
この番組は通常ハリウッドの映画スターや著名スポーツ選手などが出演し、コメディアンのグラハム・ノートンがそれぞれインタビューをするという番組ですが、政治界の大物ともいえるヒラリー・クリントン氏の出演は多くの英国主要メディアも驚きを隠せないようでした。
クリントン氏は、発売が開始されたばかりの著書「What Happened」を紹介するための渡英、そしてテレビ出演ではあったようですが、大統領選挙後の日々をどう過ごしたかを率直に答えていました。
それは、選挙結果後のスピーチを終えて人々に挨拶を済ませてビル・クリントン氏と車に乗ったとたんに疲れが溢れ、トランプ氏に敗れたことを自分の責任と思い自分自身を責めたこと。トランプ氏の大統領就任式には元ファーストレディーとして出席しなければならなかったものの、避けることができればと、ジョージ・ブッシュ氏やジジミー・カーター氏など他の元大統領で出席しない人がいれば断るつもりで、彼らに連絡をしたこと等でした。
そして、この大統領就任式でのトランプ大統領の就任挨拶を聞いた後のジョージ・ブッシュ氏のコメント「That was some weird shit.(これのスピーチはとんでもなく奇妙なものだった。)」を紹介して爆笑を浴びていました。後日談ですが、この「Shit」という言葉は日々使われることもありますが、正式の場では使われるべき言葉ではないので、トランプ大統領に寄りのFoxニュースなどが後で問題視していたようです。
鉄の女「サッチャー首相」を生み出した英国の人々はクリントン氏が大統領となることを疑っていませんでしたが、多くの若い女性にとってクリントン氏は目標とする女性であるようです。トランプ大統領は就任後も次々と大統領としての品格を疑うような行動をし、ニュースで取り上げられていますが、もしクリントン氏が大統領に就任していたら世界はどのように変わっていたのでしょうか。