ニュースレター(2017年10月13日)1299.60ドル:トランプ政権への懸念、ハト派的FOMC議事録、インフレデータ悪化で金上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1299.60ドルと、前週同価格から2.9%上昇しています。
週明け月曜日金相場は、中国が1週間の休暇を終え市場に戻ったものの、米国がコロンブス記念日で休場で薄商いの中、ドルインデックスがやや下げる中、アジア時間で上昇し、トロイオンスあたり1280ドルを超えて推移することとなりました。
同日は週末にボブ・コーカー上院議員(共和党)がインタビューで、トランプ大統領が米国を「第3次世界対戦への道」に導く危険を冒していると警告するなど現政権へ否定的であったことが伝えられ、トランプ政権の大幅税制改革への懸念が高まったとも分析されていました。
また、北朝鮮労働党の創立記念日が10日であることから、北朝鮮が数日中に挑発行動に出るのではないかという警戒感も金を押し上げていたようです。
なお、同日中国での金現物需要が高まったことでロンドン受け渡し価格との差のプレミアムが12ドルと6月以来の高さに上昇していたことも伝えられていました。
火曜日金相場は、ドルが弱含む中トロイオンスあたり1290ドル前後を推移することとなりました。
ドルが弱含んだのは、トランプ大統領とボブ・コーカー上院議員が公に互いを非難する言葉の応酬を繰り広げていることから大幅な税制改革期待を後退させていたことから、また同日市場注目のカタルーニャ自治州のプチデモン首相が「カタルーニャ住民投票結果の一時停止を提案」したことから、ユーロが強含んだことが要因と分析する筋もあったようです。
水曜日金相場は、先月のFOMCの議事録発表を待つ中、トロイオンスあたり1285ドルあたりを推移していましたが、FOMC議事録の発表後10ドルほど上昇することとなりました。
これは、FOMC議事録で、年内の利上げは正当化されると判断していることが明らかとなったものの、多くのメンバーが低インフレに懸念を示していたことがサプライズとなり、ハト派的という解釈でドルが弱含んだことからでした。
木曜日金相場は、前日のFOMC議事録の内容がハト派的であったことからトロイオンスあたり1297ドルまで上昇した後に緩やかに下げることとなりました。
しかし同日ロンドン時間午後に発表された生産者物価指数が、前年比予想と前回を上回り5か月ぶりの高い水準となったことでドルが強含み、金は多少押し下げられることとなりました。そこで、FRBが利上げの重要データと見ている翌日の米消費者物価指数へ市場の注目は移ってました。
なお、同日英国とEUの英国離脱の交渉が「行き詰まっている」とEUの交渉官が述べたことが伝えられて、英国ポンドが下落する中ポンド建て金相場が急騰していました。
本日金曜日は、市場注目の米国消費者物価指数が前年比2.2%と予想の2.3%を下回ったことから、発表直後にトロイオンスあたり1302ドルまで上昇し、その後1300ドルあたりを推移しています。
その他の市場のニュース
- 日経平均が今週21年ぶりの高値を付けたこと。
- 先週末発表されたコメックス金の先物とオプションの資金運用業者のネットロングポジションは先週火曜日に3週間連続で減少し、7週間ぶりの低さとなっていたこと。しかし、過去の平均と比較すると54%増であったこと。
- 銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも米雇用統計前の先週火曜日に3週間連続で減少し、5週間ぶりの低さとなっていたこと。しかし、過去の平均と比較すると130%増であったこと。
- 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高は今週は月曜日に4.4トン増加した後に昨日までは全く変動がなかったこと。
- トルコと米国がほぼすべてのビザ発給を互いに停止したことから、近年はドイツの世界第4位の金消費国の位置を失っているトルコの通貨リラが弱含み同国の金価格は4%程上昇していたこと。
- LBMAの年次総会が今週日曜日15日から17日までバルセロナで開催されること。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
英国では、今週行われているEUとの離脱交渉とそれに関わる政権内のメイ首相とハモンド財務相の意見の違いなどが伝えられていましたが、党大会の惨憺たる演説後求心力低下が懸念されたメイ首相が、今週は閣僚内の支持を取り戻しているようです。
ただ、このところは政治絡みのトピックが多かったので、今週は少し趣を変えて、本日伝えられている、ヴァージンアトランティック航空などを傘下とする英国ヴァージングループが、宇宙ロケットの開発製造を行うスペースX社の創業者イーロン・マスクが構想を打ち出した次世代交通システムのハイパーループを事業として行うハイパーループ・ワンに大規模な投資が行ったたニュースをご紹介しましょう。
ハイパーループ・ワンは、真空トンネル内を高速で移動するカプセルのネットワークを世界各地に張り巡らせることを目指しています。すでに、欧米や中東、インドなどで敷設計画があるとのこと。そして、最近米国ネバダ州で行われた実験では、時速200マイル(約321キロ)が記録されたとのこと。
このまるでサイエンスフィクションのようなコンセプトのテクノロジー企業に、これまでもレコード会社から始まり航空会社や鉄道会社、そして近年は宇宙旅行事業などの新分野へと果敢に挑戦を続けているヴァージングループの創設者リチャード・ブランソン氏がグループとして大規模な投資をし、その社名がヴァージン・ハイパーループ・ワンへと変更されたことが本日伝えられています。
ハイパーループがロンドンからエジンバラへ敷設された場合、現在最短で4時間22分かかる電車での所要時間が50分へと短縮されるとのこと。
すでにこのコンセプトはもう一社のハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジー社も開発を進めていて、スロバキア政府と合意書に調印し、カリフォルニア州で試行走行トラックを建設中とのことですが、イーロン・マスク氏はチューブを地下に埋め込む掘削会社も立ち上げ、今夏には米国の東西両海岸やテキサス州の主要都市を結ぶ高速地下交通の敷設計画を公表しています。
英国の鉄道システムは、長年のインフラへの投資不足からかなり疲弊しており、信号や車両の故障や、これからの時期は線路が落ち葉で覆われたことによる遅延は頻繁起こっていて、このような次世代交通システムが英国で現実となる日はかなりの想像力が必要ですが、これまでも数々の実績を残してきている二人の起業家たちを信じて、しばし心躍らさせたいと思います。