ニュースレター(2月3日)1215.20ドル FOMC、米雇用統計とイベントが続く中、トランプリスクの高まりで金は上昇
週間市場ウォッチ
先週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1215.20ドルと、前週同価格から2.5%上昇しています。
月曜日金相場は、欧米の株式市場が下げる中、トロイオンスあたり1200ドルを試す上昇を見せたものの越えられず、終値は1196ドルに留まることとなりました。
これは、トランプ大統領の米入国制限を巡る混乱を嫌気したことから株が下げ、ドルインデックスも多少弱含むこととなったことから金相場が上昇したのですが、今週は、水曜日のFOMCの金融政策発表、金曜日の米雇用統計など多くの重要指標も発表されることからも動きづらい市場となっていた模様です。
火曜日は、金相場を上回るペースで銀相場が年初から9%高い11週間ぶりの高値のトロイオンスあたり17.59ドルへと上昇することとなりました。
これは、トランプ大統領の難民・移民の入国を制限する大統領令、それに反発する司法長官代理の解任、さらに同日はトランプ政権の国家通商会議のトップのナバロ氏が、環大西洋貿易投資協定(TTIP)交渉を巡り「暗黙のドイツ通貨・マルク安が貿易交渉の障害になっている」とユーロ安相場を批判していることが伝えられなど、混乱が広がる中で株式市場が下げ、ドルインデックスも下げたことからでした。
そして、NY時間には製薬会社首脳との会合で、トランプ大統領が日本や中国が通貨安政策を取ってきたと批判したことも伝わり、ドルが更に弱含み、金相場もトロイオンスあたり1215ドルへと1週間ぶりの高さへと上昇することとなりました。
水曜日は、FOMCの金融政策発表前に発表された、米主要経済指標のADP全国雇用者数とISM製造剛景況指数が予想を上回るものであったこと等から、前夜トランプ大統領が日本と中国が為替操作をしていると非難し下げていたドルが強含み、金は下落することとなりました。
しかし、FOMCの声明が発表され、市場予想通りに追加利上げを見送り、声明の中の「(物価上昇率は)中期的に2%に達するだろう」という、前回の「2%に上昇することを期待する」よりも強い表現になったことに反応して金相場は上昇することとなりました。
木曜日金相場は、前日のFOMC後の上昇基調を受け継ぎトロイオンスあたり1225ドルへと11週間ぶりの高値に上昇した後、緩やかにその上げ幅を失うこととなりました。
上昇の要因は、前夜のFOMCの声明ですが、同日もトランプ大統領がオーストラリア首相との電話会談を打ち切ったことなどが伝えられ、懸念が高まったこともあったようです。
しかし、翌日に米雇用統計が発表されることからも利益確定の売りとともに、ポジション整理も起きて多少下落することとなりました。
本日は米雇用統計が発表されました。非農業部門雇用者数は22.7万人と、前回修正値の15.7万人、予想17.5万人を大幅に上回りました。しかし、失業率は4.8%と前回と予想の4.7%から悪化しています。また、先月その良好な数値で注目された平均時給は、前年比2.5%と前回の2.9%よりは減少し、前月比0.1%と予想と前回修正値の0.2%から下げています。
この失業率と平均時給の数値が注目されたようで、金相場は発表後上昇することとなりました。また、その後発表されたISM非製造業景況指数も予想と前回を下回り更に金を押し上げた模様です。
なお、ロンドン時間の終わりに、トランプ政権がイランへの追加制裁を行なったことが伝えられています。
その他の市場のニュース
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先週末に発表された、先週火曜日のコメックス金先物・オプションの資金運用業者は、ショートとロングのポジションを共に減少させ、ネットロングポジションは、前週の過去5週間で最も高い水準から少ないながら減少していていたこと。 -
それに対しコメックス銀先物・オプションの資金運用業者のショートとロングポジションは、先週火曜日に共に前週比増加し、ネットロングポジションは、米大統領選以来の高い水準となっていたこと。 -
金のETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が、水曜日に10トン、木曜日に1.5トン増加し811トンと再び800トンを越えたこと。ちなみに10トン増加は昨年10月7日以来の大きな増量で、2日連続の増加は昨年10月半ば以来。
ブリオンボールトニュース
先週ブルームバーグで配信いただいた、弊社のプラチナサービス開始の記事を産経新聞のオンラインサイトでも「プラチナ割安感、投資するなら今」と、先週末に取り上げていただきました。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週も、英国ではトランプ大統領とBREXIT関連ニュースが見出しを飾ることとなりました。
トランプ大統領関係とは、まず先週末にテリーザ・メイ首相がトランプ大統領と会談をしたこと。ここで、テリーザ・メイ首相は、トランプ大統領から「北大西洋条約機構(NATO)を今後とも重視していく」と、これまでの「NATOは時代遅れ」という発言とは異なる言葉を引き出すことに成功しました。
この訪問で、メイ首相はトランプ大統領を国賓として英国に招待をし、トランプ大統領も応じましたが、これが国内で問題となりました。
それは、先週末にトランプ大統領が難民と移民を規制する大統領令を出し、混乱を招いていることからも、国賓としての招待を取りやめるべきと声が上がったことからでした。そして、このトランプ大統領の招請阻止を求める請願には、英主要日刊紙のテレグラフによると、31日までに150万人以上が署名をしたとのこと。
英国では10万人以上の署名が集まれば議会で審議されることとなっているために、BBCによると2月20日にこの審議が行われるとのことです。
しかし、首相官邸は30日の声明で「首相は女王の代理として招請を喜んで伝達した。米国は英国の最も近い同盟国の一つであり、大統領を迎えるのを心待ちにしている」と表明したことが伝えられています。
首相官邸にしてみれば、事前に調整を行って国賓として招待し、それに応じたトランプ大統領に対して、よほどのことがない限りは招待取り消しはできないことでしょう。
また、今週は英国下院が、EU離脱を通知する権限を政府に与える法案を賛成多数で可決しており、英国のEU離脱の交渉が3月末までには開始されることからも、英国の最大の貿易国である米国とできるだけ早く貿易協定を取りまとめる重要さは言うまでもないことです。
しばらくは、メイ首相率いる英国政府にとって、トランプ政権の英国好きを利用しながらも、難民・移民規制の大統領令など正すことは正さなければならず、トランプ大統領との駆け引きには神経を使う事になりそうです。